第二章 賑やかなツリーハウス
第一話
結局、烏丸の強い押しにより一緒に本家へ戻ることとなってしまった。
縁曰く、「本家まで来ても門前払いされるから大丈夫だろう」とのこと。
少し不安ではあるが、後はなるようにしかならないと割り切ることにする。
「ところで、華様。もうだいぶ暗いですが、本日はどこか泊まる場所は決まっておいでですか?」
「あ、えっと……野宿する予定で」
「え?」
「あたし達、離島でサバイバルに近い生活してたから、野宿なんて慣れっこでさ」
姫口調も忘れて、つい素で話していると縁がわざとらしく咳払いする。
慌てて、口調を戻す。
「ご、ごほんっ……。だから心配無用だ」
「そうですか。ですが、今宵は僕の家に是非お泊まりください」
「へ?」
「やったぁ! 本音言うと、野宿なんて嫌だったのよねぇ。舜様、ありがとうございますぅ」
菜々桜があたしを押しのけて、烏丸の提案に飛びつき、身体をしならせる。
縁も泊まることには賛成のようで、しきりに頷いている。その横で、冬夜はどうでもよさそうに欠伸をした。
「姫様。お言葉に甘えさせていただきましょう」
「いや、でも」
「華様、僕があなた様の疲れを癒やして差し上げましょう」
烏丸があたしの手を取り、さりげなく甲に口づけようとした。
だが、すぐさま縁が犬耳を後ろに寝かせ威嚇しながら、間に入ってきて阻止する。
だいぶ烏丸は怪しい言動をしているが、本当に泊まって大丈夫なのだろうか。
不安を覚えつつ、護衛たちの意見に従い、彼の家へ向かうことにする。心なしか、烏丸の足取りが軽やかに見えた。
森の奥まった方へさらに進んでいくと、大きな大樹がそびえ立つ場所へ出る。
「ここが我が家になります」
彼が指差したのは、大樹の上の方だ。見上げれば、全部が木材で出来た秘密基地のようなかなり大きいツリーハウスがあった。
「わぁ、素敵なお家ー!!」
菜々桜が一番に声をあげる。縁と冬夜も目を瞠っていた。
「では、華様。少し失礼します」
「え、わっ!?」
ツリーハウスに目を奪われている隙に、抱き上げられる。突然のことに驚き、掴むところがなくて咄嗟に烏丸の首にしがみついてしまう。
これって、俗に言う”お姫様抱っこ”というやつでは……?
内心慌てふためいているのを余所に、烏丸は羽根を広げてひとっ飛びでツリーハウスの入口まで来てしまう。
「姫様!」
「鬼姫っ!!」
我に返った縁と冬夜が、焦ったように木の枝に飛び移りながら、後を追いかけてくる。
余裕で登ってくる彼らの脚力も凄まじい。
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