貴方を愛して
白亜タタラ
第1話 かさ
ぽたりぽたりと髪から水滴が落ちる。
どんより憂鬱な気持ちは窓外の曇空と同調しているかのようだ。
早く帰りたい。
もう、授業なんて碌に聞いてもいない。
今後の人生なんかどうなったって構わない。
私が学校に来ているのは偏に帰るため。
ビリビリに破かれた教科書を捨てたのはいつの事だったか。
運動着が無くなって授業を受けられなくなってどれだけ経ったか。
覚えていない。
どうでも良い。
私は彼に見初めて貰ったあの時に産まれたのだから。
周りの些事なんてどうでも良い。
ガラガラと教室の扉が開いて、私の王子様が迎えにきた。
学校一の美男子の隣を独占する私にクラスの女子から羨望と嫉妬の視線が集まるが、そんな事をいちいち気に留める私ではない。
昨日も今日も明日も明後日も、私が世界に生きているのは彼のおかげ。
世界で唯一私を見てくれる彼さえいれば、もう他はどうだって良い。
私と彼の
誰にだって邪魔なんてさせない。
貴方を愛して 白亜タタラ @hakuatatara
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