雷翼のアルバトロス~空と海と浮島だらけの世界に転生したのでMy飛空船で船旅スローライフを目指していく~

@guritto

プロローグ

「はー……とうとう出たぜ買ったぜ『スカイトラベラーズ6シックス イモータルネスト』!」


 夕暮れの住宅街を足取り軽く進むのはバイト帰りのオレ、源之瀧彦げんのたきひこ26歳。独身。


 今日は子供の時から遊んでいる大作RPG「スカイトラベラーズ」(略してスカラベ)シリーズの最新作「イモータルネスト」の発売日!


 予約開始日に最速で注文した豪華特典付きゴージャスパックを店で受け取り。休みの間は家から出なくても良いように買い物をしてきた。


 これから三日は家から出ねぇ……。クリアするまで遊びまくるのだ。


 


「早速サブタイトル考察勢が荒ぶってんな……。まあ、今まで散々待たされたんだ。多少はしゃいでもしょうがないか」


 先行組のネタバレを踏まない様、用心しながらネットを流し見ると。待望の新作に飢えていたファンたちの喜びの声が散見できる。文面からにじみ出る喜びは、オレも同じ気持ちなのでとても共感できた。


 スカイトラベラーズシリーズは「空と海の世界で繰り広げられる冒険の物語」をキャッチコピーにしたゲームで。ジャンルはいわゆるアクションRPGだ。


 主人公は飛空船で大空を自由に旅する冒険者となり。古代遺跡や未知の島々を冒険したり。空賊や凶暴な魔物、襲い来る蛮族との戦いを繰り広げる。


 そこから世界に隠された秘密や、封印された伝説の災厄などと戦い。世界の危機を救うのがお約束となっている。


 当時小学生だった俺は。アクションを売りにしたゲームによくある派手なエフェクトの必殺技や、かっこいい詠唱の魔法に惹かれて始めた。

 そのあとスチームパンクめいた魔法工学の描写と、幾つもの特徴的な飛空船のデザインも好きになり。おこづかいやお年玉は設定資料集や攻略本につぎ込んでいた。


 大学入試で一度ゲーム自体から離れたが。少し前に仕事をクビになり。時間に余裕が出来た時、ネットで過去作のリマスター版が全作同時発売との情報を目にした。


 半ば現実逃避のつもりで買ったのだが。案の定ドはまり!

 今ではすっかりシリーズのファンに出戻って。再び働くモチベーションになっている。


 今のオレは作品を遊びたい欲がワクワクがあふれ出している。意識して抑えなければ、無意識の内に小粋なステップで疾走してしまう程に。


 今回は最新ハードでの発売とあって、あらかじめ雑誌や公式サイトの情報も漁るタイプのオレとしても、発表からここ数年はお預け状態だった。


 その間に別途、スピンオフシリーズを出してくれていなかったら。待ち遠しくてどうにかなっていたかもしれない。(勿論、スピンオフシリーズも全クリトロコン済みだ)


「いやまてよ。そのリソースを新作開発に回せばもっと早くユーザーに提供できたのではないか?」

「しかし、あれらもメッチャクチャ楽しかったからトントンか……」


 思わずこぼれた独り言。手にぶら下げたソフトの重みを楽しみながらドンドン家路を進む。早歩きを通り越して競歩のような速度になって、いつも通りの街角を行く。


 ドチュッ!!


 覚えているのはここまでだ。オレは急に意識を失ってしまった。




『次のニュースです。●✖県△△町の路上で倒れている人が居るとの通報があり、救急隊が駆け付けたところ。△△町に住む源之瀧彦げんのたきひこさん26歳が頭部を損傷して倒れている姿が発見され、その場で死亡が確認されました。警察によると周辺のアスファルト舗装に隕石の様な物が落下しており、事件と事故両方の可能性を視野に捜査をしているという事です。続いて……―――――』

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