読まれることのない手紙 二十一通目

君の存在は僕にとって最後の隠れ家だった

何も知らない頃、僕はバイクを速く走らせることに自信を持っていた

しかしサーキットを訪れたとき、そんな自信は吹き飛んだ

そこには僕の踏み込めない領域まで、平気で踏み込んでいく男たちがいた

僕には彼らは命が惜しくないようにすら見えた


勝ち気な僕は、懸命に練習し技をみがいた

そして彼らに挑んだ

しかし技を磨けば磨くほど、彼らと僕の間に在る壁がはっきりと見え始めた


・・・彼らは、自身のすべてをかけて走っているのだ

過去も、未来も、何もかもをかえりみず

ただ純粋なまでに今という瞬間を生きていた


僕は強さがほしかった

自分の限界と対峙したときに見える恐怖を、失われる未来の予見を

振り払う勇気がほしかった

あのときの僕には見えない、その壁の先がどうしても見たかった


そして僕の最後の安息の地、君と別れることを決断した


to Haruka from S

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