読まれることのない手紙 五通目

地獄だった

果てしない葛藤と困惑にさいなまれる日々だった

涙は枯れ、自己嫌悪と後悔は苦痛を通り越し

僕の心は抜け殻になっていった


「・・・走らなきゃ」

最初に思い出したのは君との約束だった

土砂降りの雨の中、雪と泥でぬかるんだ河原のコースを朝から晩まで走り続けた

寒さも痛みも感じなかった

体が悲鳴を上げても、心の悲鳴より痛くはなかった

体の疲れは眠りを誘ってくれる

眠っている間は何も考えずにすむ

くる日もくる日もへとへとになるまで走り

そして眠った・・・


春、シーズンを迎えた最初のレース

自分が別人のような速度で翔けていることに気づいた


to H from S

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