初詣のおみくじで大吉を引いた僕ら。未来に良縁有りという記述を信じてみたらバクモテした件

ALC

第1話恋みくじで有名な神社で大吉…今後凄い結果が待っていることを僕らはまだ知らない

初詣でおみくじを引くのは定番な行動だと思う。

今年の運勢を知りたくて謂わば未来のことを不安に思っていて、それをどうにか知りたくておみくじを引いていた。

僕がおみくじを引く理由はその様なものだった。

現在は元旦当日の早朝だった。

初日の出を見た帰りに近所で有名な神社に訪れていた。

そこは恋みくじが有名でかなり当たると言われていた。

試しにお金を納めると僕はおみくじを引くのであった。


「大吉」

「今後の人生絶好調」

「未来に良縁あり。信じられないほどのモテ期がやってくるでしょう。覚悟を持って備えておきなさい」


恋愛の項目を目にして僕は目を疑う。

それ以前にこの神社のおみくじは大吉の数がかなり少ないらしい。

大概の人が末吉や凶を引いては現在の恋を諦めたり、新たな恋に進む指標としているぐらいだ。

そんなおみくじの信頼度が高い神社で僕は大吉を引いてしまう。

その内容を信じることを決めるとおみくじを財布にしまって帰路に就くのであった。



成人式の翌日から三学期は始まり僕は登校することになる。

冬休みは友人と数回遊んだくらいで女子と何らかの関係が進んだことは一切ない。

イヤホンを付けたまま登校すると教室の自席に腰掛けた。

眠いわけでは無いのだが机に身体を任せて少し目を瞑っていた。

耳には流行りの音楽が流れてきて少しだけ足でビートを刻む。

学校中にチャイムが鳴り響いたところでイヤホンを外して身体を起こす。

担任教師が教室に入ってくると三学期初めての挨拶を交わして長くも短くもない注意事項のようなものを聞いていた。

「冬休みで身体が鈍っている人も居るでしょう。休み明けは集中力にも欠けると思います。何より冬で寒いですね。暖房が効いた教室は居心地が良く眠くなるかもしれません。ですが自分を律して三学期も集中して勉学や部活動に励んでください」

担任教師の話を聞きながら何気なしに廊下の方へと目を向けた。

出入り口の窓ガラスの奥に見知らぬ美少女が立っており僕の胸はドキリと高鳴る。

まるで稲妻にでも打たれた様な錯覚を覚えてまじまじと彼女を見つめていた。

彼女は教室の様子を眺めていたのだが僕の視線に気付いたのかこちらに目を向ける。

視線が交わった僕らはそこから何秒間だっただろうか長く感じるほど見つめ合ってしまう。

その均衡が破れたのは彼女が僕に対して美しい微笑みを向けてきたからだ。

ハッとして夢の中から覚めた時のようにビクッとすると視線を逸らして黒板の方へと視線を移した。

「はい。では転校生を紹介します。入ってきてください」

ガラガラと教室の出入り口の引き戸が開くと先程の美少女は中に入ってくる。

真田凛桜さなだりおうと申します。一年生の三学期に急な転校生で戸惑う方もいるかもしれません。私も少しだけ戸惑っています。ですがどうか仲良くして頂けると助かります。早く皆さんの輪の中に入れるようになりたいです。これからの学校生活で関わるであろう同学年の皆さんと仲良くなれたら嬉しいです。よろしくお願いします」

彼女は流暢に挨拶をすると深く頭を下げた。

「よし。じゃあ真田は倉敷くらしきの隣の席に行ってくれ。倉敷。手を上げて」

倉敷悟くらしきさとるというのが僕の名前である。

担任教師に言われた通りに手を上げて応えると彼女は再び美しい微笑みを僕に向けてこちらに歩いてくる。

隣の席に腰掛けた彼女は僕に向けて口を開いた。

「倉敷くん。これからよろしくね?」

「はい。こちらこそ」

軽い挨拶を交わしてHRが終りを迎えると彼女のもとには沢山の生徒が集まってくる。

それもそのはずだ。

美少女で話も達者な彼女はすぐにでも人気者になると予想がつく。

僕は一度席を離れると友人のもとに向かう。

「倉敷…お前…ずるいぞ」

友人の中の一人がコソコソと声を潜めて僕に口を開くと軽く肩を叩いた。

「ずるいって…仕方ないだろ。僕の隣がたまたま空いていたんだから」

クラスメートの数は真田凛桜が来るまで奇数だった。

その為、僕の隣はずっと誰も存在しておらず一人きりだったのだ。

「どれだけ豪運なんだよ…代わってほしいぐらいだわ…」

「そんな事言うなよ。加藤の隣だって…永瀬さんじゃん。今年の文化祭ミスコン優勝者でしょ?何も文句ないだろ?」

「いやいや。俺なんて相手にもされないわ。隣になって一度も話したこと無いから…」

「それは…残念だな」

「高嶺の花すぎるって分かっているから」

「真田さんも相当高嶺の花だと思うけど?」

「だよな〜…このクラスの女子ってかなり…俺達じゃあ釣り合わないよな…」

加藤はかなり憔悴しているようでガクッと項垂れていた。

「まぁ元気出せよ。勇気を出して話しかけてみたらどうだ?」

「無理。キモいとか言われたら…不登校になる」

「そうか…じゃあノーチャレンジの方が良いな…」

そんな友人たちとの他愛のない会話を繰り広げていると予鈴が鳴って僕らは席に着いた。

「倉敷くん。見てください。引っ越してきた先に恋みくじで有名な神社があるんですよ。中々大吉が出ないで有名らしくて…でも見てください!私。大吉だったんですよ」

彼女は僕と同じ神社で恋みくじを引いて大吉を出したらしい。

偶然なのか何か仕組まれた策略なのか…。

僕はその恋みくじの内容を目にして言葉を失った。


「大吉」

「越した先で良縁あり」

「同じく大吉を引いた者と引き寄せ合うだろう。直ぐ側に居るはずだ。今まさに隣に居るだろう」


それを目にした僕は財布を鞄から取り出して彼女に大吉のおみくじを見せてしまう。

少ししてから僕も気付くのだが…。

これでは、

「あなたと特別仲良くなりたいです」

と言っているようなものだ。

しかしながら彼女は表情をぱっと明るくさせて僕の手を掴む。

「やっぱり!さっき目が合った時にそうだと思ったんです!直感的に!まるで稲妻に打たれたみたいにビビッときたんです!」

彼女は明らかにテンションが上っており僕の瞳をキラキラとした目で見つめている。

僕の高揚感が限界まで達しようとしていたところで一限目の教師が教室に入ってくる。

「話はまた後でね」

彼女は僕に美しく微笑むと黒板の方へと視線を向けるのであった。



恋みくじで有名な神社で初詣のおみくじの結果が大吉だった僕らの恋物語はここから始まろうとしていた。

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