恨み晴らす課
毛根死滅丸
第1話 どーぞ…逝ってらっしゃい…
はーい!どーもどーも本日も始まりましたー!廃墟探索のお時間でーす!
今日ぼくたちが来ている廃墟は…ジャジャジャジャーン!
家族が全員殺された一軒家でーす!
みーたん~今日も廃きょろう!
こーたん~廃きょろう!
今日もみんなでライブを楽しんで…廃きょろう!
ぼくたちの廃きょろう!チャンネルのチャンネル登録よろしくねぇ~
笑顔の男女がずかずかと廃墟の一軒家に侵入して行ったのだ。
モニター画面には、無数のコメントが溢れていた。
「はぁ~」
モニター画面に映し出されている二人組の男女を見て、深いため息をつく男性。
男性の目の前には、老婆が椅子に座って号泣していたのだ。
男性はボードに挟まっている紙に次々にチェックを入れていく。
「むずごがねぇ…一生懸命働いてね…だてたぁ家なんです…」
老婆が嗚咽を吐きながら、懸命に男性に説明をする。
「ウンウン。お婆ちゃん、落ち着いてな…」
モニター画面を見ながら、お婆ちゃんに優しく声をかける男性。
「不法侵入に故人の遺影に唾を吐く…それと、しょんべん…」
(全く…最近の配信?世代は恐ろしいな…)
その後もライブ映像が終わるまで配信を観ている男性。
「お婆ちゃん、かなりのポイントだよ…」
男は自身がチェックを入れた紙をお婆ちゃんの前に置く。
老婆は食い入るように紙を凝視した。
「そんなぁー!酷いじゃないのー!」
老婆は男性を睨みつけていた。
興奮する老婆に男性は…
「分かるよ…お婆ちゃん。悲しい辛い苦しい気持ち分かるよ。先ずは椅子に座って深呼吸をして…少し落ち着こうね…」
老婆に優しく声をかける男性。
老婆は無言で男性を見つめる。
「僕、故人としてはね…あのふたりは地獄行きでいいと思うんだけどね…お婆ちゃん、ここはね現世の役所と同じなのよ…だから即お迎えには逝けないのね…だから、出来る限りのプランは用意するからね…」
しばらくの間、男性を睨んでいた老婆は…
「よろしくお願いいたします」
深く深く頭を下げている老婆。
「ウンウン。お婆ちゃん…これだけの恨みポイントが有るからね…長期で化けて出て呪うコースに事故に合わせて半身不随コースにね…周囲の身内や友人が不幸になるコースを用意できるからね…」
お婆ちゃんに一つ一つのプランを分かりやすく説明する恨み晴らす課の男性職員。
「おばあちゃん…プランは決まったかな?」
「はい」
老婆は頷き一つのプランに指をさした。
「おばあちゃん。このプランでいいの?変更はできないよ?」
お婆ちゃんを優しく見つめる男性職員。
「はい」
力強く男性職員を見つめる老婆。
「分かりました」
男性職員は、一枚の紙にすらすらと何かを書いていき、最後にデカいハンコをポンッと押したのだ。
そして…
「野間ちぁーん!野間ちぁーん!!野間ちぁーん!」
大声で誰かの名前を何度も呼んだのだ
「もお、先輩聞こえてますよ…うるさいです!」
「相変わらず、いい乳してるね~」
「先輩それ下界ではセクハラですよ!」
「ごめんごめん」
「まぁ、いいですけどね…ご用件をお知らせください」
「あ、うん。こちらのお婆ちゃんを死神課に、ご案内してください」
「はい、分かりました。お婆ちゃん。私について来てください」
「野間ちゃん、頼んだよ」
「はい、お任せください」
死神課に向かう老婆を優しく見送る男性職員。
「どーぞ…逝ってらっしゃい…」
男性職員は、老婆の姿が見えなくなるまで見送ったのだった。
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