第7話 君のスカートの短さを知りたくて

 俺の家の近所にある公園内で、安達さんは俺に向けてスカートを一瞬まくり上げた。…とても魅力的で黒いパンツが晒される。


木土君は「安達さんらしくないエロいパンツを穿いている」と言ってたけど、俺にはよくわからないぞ。


だって、デザインや露出度に関係なくパンツはエロいんだから。“らしくない”という表現はピンとこないというか、型にはまらないというか…。



 「…どうだった?」

安達さんは顔を少し赤くして訊いてきた。


「凄く良かった!」

こんな状況だし、本音で問題ないはずだ。


「そっか…」

彼女は安堵したように見える。


「なぁ、安達さんはどうしてそこまでスカートを短くするんだ? 学校で安達さんのパンツを見た男子はそこそこいるみたいだよ?」


知ってるかもしれないが、一応伝えておく。


「知ってる。見られて良いと思ってるから、あの短さにしてるの」


「そうなんだ…」


パンツは見られて減るものじゃないが増えるものでもない。安達さんに何かしらの得がなければ短くする理由はないのに…。



 「あのね、私前々から彼氏が欲しいと思ってたの」


安達さんが突然告白してきた。


「へぇ~」

俺も彼女に興味あるからお互い様だな。


「けど男子に声をかける勇気がなくて…。どうにかしてきっかけを作りたかったんだ」


「そのきっかけが、スカートを短くすること?」


「うん。スカートの短さに興味を持った男子が話しかけてくれると思ったんだけど、後ろからジロジロ見てくるだけで声をかけてくれる男子はいなかったね」


スカートの短さを話題にするなんて、それこれ彼氏にしかできないだろ。


「やっぱり諦めようかな~と思った時に、現代文のあの宿題が出たの」


ペアになった人の周りにいる大人にインタビューして、仕事の内容ややりがいを訊く件だ。


「松田君とは宿題の話を何度もしたし、他の男子より仲良いと思ってる。だから今日、もっと距離を縮めるために頑張ったんだよ」


今日のスカートの短さは、学校の時以上だ。そういう理由だったのか。


「この短さにしても、松田君も他の男子と同じように後ろから覗くだけ…。このまま受け身じゃダメだと思って、勇気を出して切り出したの」


あの時の「私がこの家に上がってリビングに向かう途中、パンツ見ようとしたでしょ?」は、安達さんなりに努力した結果なのか…。



 「…これで言いたい事は全部言った。気になる事ある?」

安達さんが俺に訊いてくる。


「いや、今は思い付かない」


「そう…」


俺達の間に沈黙が流れる。安達さんの気持ちを知って、俺はどう答えるべきか?


「…今日は帰るね。お姉ちゃんの予定がわかったら、学校で話すから」


「わかった…」


俺は公園を出る安達さんを見送った。……このまま公園内で立ち尽くすと不自然だし、家に帰るとしよう。



 家に向かう道中、俺は安達さんの事を考え続けている。安達さんのパンツを見た男子はそこそこいても、スカートをまくり上げた形で見たのは俺だけだ。


この優越感というか独り占めした感じ、これをなくすのは惜しい。俺がオンリーワンであり続けるには、安達さんの彼氏になるのがベストか?


彼女は俺の「パンツ見せてくれ」に応じてくれたし、可能性はあるはずだ。でも告白する勇気が…。


なんて考える時に家の前に着く。玄関で父さんか母さんに会うかもしれないから、安達さんの件は保留だ。そう決めてから、俺は玄関の戸を開ける。

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