キミの魔力で育ちたい!!~2度目の人生でも親ガチャに失敗した俺は、美少女達にバブみを求めてオギャります~

GIMI

第1話 2度目の親ガチャも失敗したようです

 ──2度目の人生でも、俺はどうやら親ガチャに失敗してしまったらしい。

 


 ぼんやりと見上げた空には黒雲が拡がり、ポツリポツリと数滴の雨粒が頬を濡らす。

 間もなく、大雨になるだろう。

 このどことも知れぬ場所で目を覚ましてから、早1時間ほど。

 すっかりと身体は冷え込み、四肢の感覚すら既に危うい。

 いや、それ以前に……。


「あ……あう……」


 やっぱり無理か。

 赤ん坊のこの身・・・・・・では、助けを呼ぶことすらも難しい。

 いっそ泣いてみるかとも思ったが、すでに泣く体力すらも無くなってしまったのか、はたまた無意識の自尊心からか、とても泣き叫ぶことなんてできやしない。

 せっかく新しく人生をやり直せるかと思ったのに、これはあんまりだろう。

 少し前まで、俺は王宮と見間違えるばかりの大豪邸で、豪奢なベビーベッドに寝かされていたのだ。

 それなのに、少しウトウトして、目を覚ましてみれば、こんなゴミ山にひとり。

 捨てられた、と考えるのが妥当だろう。

 今度の人生こそ、当たりを引いたのだとほくそ笑んでいたというのに、どうしてこうなった……。

 何かの間違いだと思いたいが、この幼子の身体の命のリミットは刻一刻と迫っている。

 詰んだな。

 もう諦めるか?

 正直、生きていたって、何もいい事なんて……。

 走馬灯のように蘇ってくる前世の記憶。

 だが、それを反芻しているうちに、湧いてきたのは来たる死への諦念ではなく、腹の奥から沸々と湧き上がる強い怒りだった。

 最悪の母親の元に生まれ、いらぬ苦労ばかりしてきた。

 良い思いをした記憶なんて、ほんの数えるほどしかない。

 ようやく成人して親元から離れられると思った矢先に、交通事故で死んだ。

 ははっ、笑っちゃうほどに運がない。

 その上、こうして第二の生も、早くも終わろうとしているのだ。

 まったくもって、神様と言うやつには怒りしか湧いてこない。


「ふ……」


 赤子らしからぬ笑みで、口元が歪む。

 いいだろう。

 運命がとことん俺を裏切るならば、俺はその運命さえも、ねじ伏せてやろう。

 今度の人生こそ、どんな形であれ、俺は幸せを掴んで見せる。

 そのためならば、泥水を啜ってだって、生き抜いてやる。

 雨はいつしか大降りとなり、小さな身体は今にも吹き飛ばされてしまいそうだ。

 だが、怒りがエネルギーとなり、俺はどうにか寝返りを打った。

 乗せられていた籠から転げ落ち、泥の地面のねちょりとした感触を感じたのとほぼ同時だった。


(……なんだ?)


 視界の端で、赤い何かが光った。

 滲む瞳を凝らしてみると、そこにあったのは、瓦礫の山の中で、半ば身体を横たえた人形だった。

 いや、ロボットと言った方が、現代人にはしっくり来るかもしれない。

 赤茶けた金属質なボディが球体のような関節で繋がれている。

 何年も雨ざらしにされていたのか、その身体は錆びつき、四肢はところどころ欠損している。

 だが、その無機質な球面の顔に浮かぶ、赤い眼光だけは、鋭く俺を見つめていた。


(お前も、ここに捨てられたのか?)


 眼でそう問いかけるも、もちろん答えはない。

 だが、俺には、どうもこの人形が頷いたように思えた。


(何かの縁だ。俺に力を貸してくれないか?)


 心の中で、そう呟く。

 すると、今度こそ、人形の赤い瞳が強く明滅した。

 そして──

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