第3話 お祭りとギャンブルは似ている。

 突然ですが買う前にめちゃくちゃ楽しめるモノはなんでしょうか? 


 ウインドウショッピング? そう思った人は心の清い生活をしていますね。ワシなら競馬、競艇、宝くじがパッと頭に浮かびますわな。当たった時を想像するとめちゃくちゃテンションが上がります。子供達にもそんな機会があったんですわ。それは世界でコロナが流行る前の、夏祭りの日でした。


「チミ達の軍資金は500円だ。存分に楽しみたまえ」「「わーい」」


 500円玉をあちゃ子とあちゃの助に渡した。目を輝かせながら子供達は屋台を一軒一軒見て回る。ワシとワイフはその後ろを歩いた。


 わた飴、焼きそば、たこ焼きと美味しそうな屋台がいっぱい並んでいる。焼いている音とか漂ってくる香ばしい匂いがお腹を誘う。


 だが、子供達はすぐに食べ物に飛びつこうとせず遊ぶ系の屋台もちゃんと視察していた。水の中を流れるスーパーボールすくい、風船を割るダーツ投げ、おもちゃを落とす射的があった。サメ釣りもあるじゃないか。輪投げも。


「わたし、これにする」


 あちゃ子が選んだのサメ釣りだった。ニコニコして見ている景品の中には、あちゃ子がめちゃくちゃ欲しがっている人気ゲームソフトがあった。 あぁそれはやめとけ、と思った大人の方は多い事でしょう。ワシもワイフもそう思ったもの。なにせ子供の頃、散々洗礼を受けた夏祭りの遊びですから。当然、ワイフが止めますわな。


「やめた方がいいんじゃない?」

「大丈夫! わたしなら当たるから!」


 その自信はどこから来るんだろうか? もう頭の中ではゲームで遊ぶ予定を立てている。ワイフは必死で説得しようとしているが、ワシは妻の肩に手をおいて首を振った。


「あちゃ子がやりたいのなら、やらせてあげよう」

「ありがとうパパ!」


 にっこにこでサメ釣りのおやっさんに500円を渡すあちゃ子。30秒後に戻ってきた時には肩を落として帰ってきた。


 手に持っているのは棒についたピンクのソフトクリーム、と言えば聞こえがいいだろうか。本心で言うと棒についたウンコである。棒の先にピンクのウンコに糸がついていて、ボタンを押すとびよーんと発射できる。まさにピストルウンコ。アラレちゃんがいたなら真っ先に欲しがる一品であったであろう。


「なにも言わないで。言わないでよ」


 馬券を外したおっさんのように、あちゃ子は視線を落とした。対するあちゃの助はスーパーボールすくいをやった。1個もすくえなかったが、オマケでもらったボールでニコニコ遊んだ。しかもおつりの200円はしっかりサイフに残している。姉弟ではっきりと明暗が分かれていた。落ち込むあちゃ子に声をかける。


「いいじゃないか。買うまでは楽しかったんだから。それにこのウンコも中々楽しいぞ」

「ウンコって言うなあああ!」


 ワシはピストルウンコで遊んで見せた。あちゃ子もしばらくするとピストルウンコで遊び始めた。


 当たっても外れても、楽しい時はあったのだ。だから後悔しなくていい。楽しめたらそれでいいのだ。と、いうわけで今度ワシも競馬やっていいかワイフに聞いてみよう。当たったらステーキ食べに行こうとか言ってね。うひひ。

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