第一話「ミステリーワンダーランド」
突然現れて歓迎の言葉を述べてきた妖精の女の子。彼女は驚くあたし達を無視して説明を始める。
「ここ、ミステリーワンダーランドは選ばれた人しかやって来れない特別な国。謎と不思議にあふれた――」
「勝手に説明始めないでよ」
「謎だって!?」
とりあえず彼女の話を止めるべく口を開くと、今まで黙っていたセサミが突然反応した。
「ゴ――セサミ?」
思わずゴマと呼びそうになって、すぐに呼び直す。セサミは興奮した様子で続けた。
「実はボクね、謎解き大好きなんだ」
「だろうね。その探偵みたいな格好で察した」
茶色い鹿撃ち帽とケープ、裾の広がった半ズボンにブーツ。セサミの格好は探偵キャラのコスプレにありがちなものだ。もしこれで謎解きが嫌いだったらおかしいと思う。
「あの~」
不意に妖精の女の子が話しかけてきた。
「何?妖精さん」
あたしは尋ねる。名前がわからないのでこう呼ぶことにした。
「私の話聞いてます?」
「最初の方だけ聞いてたかな」
正直に答える。
「そうですか。では最初から――」
「細かい説明はいいから」
彼女が再び説明を始めようとしたので止めた。そして気になったことがあったので聞いてみる。
「選ばれた人ってあたしのこと?」
「他に誰がいますか、アリス」
「アリスぅ?あたしの名前は美遥なんだけど」
断じてアリスではない。訂正すると彼女は目を丸くした。
「え……?」
「どうかした?」
「いえ、なんでもありません」
セサミが尋ねると、彼女ははぐらかした。怪しい。
「では私はこれで」
「え、ちょっとどこ行くの?あたし達どうしたらいいのかさっぱりなんだけど」
突如どこかへ行こうとしたので慌てて阻止する。人間になったゴマに起こされて目が覚めたら突然見知らぬ世界にいたのだ。この先どこへ行ったらいいかもわからないし、帰り方もわからない。そんな状況で放置される訳にはいかない。
「そうですね。でしたらこの問題を解いてくださいませ」
妖精さんが言うと、どこからか一枚の紙が現れた。
「問題!?」
それを手にしたセサミが目を輝かせる。相当謎解きが好きなようだ。思わずこう言ってしまう。
「テンション上がりすぎじゃない?」
「それでは~」
彼女は苦笑しながら慌ただしく飛び去って行った。
「行っちゃった。セサミ、問題ってどんなの?」
「これだよ」
セサミから紙を受け取る。そこには『たきたいたろいたみたちをたすすためた』と書かれていた。それから右下にはたぬきの絵がある。
「へぇ……」
なかなか面白い。あたしはすぐに答えがわかった。その横でセサミが困ったように呟く。
「こ、これは難問かもしれない……」
「何言ってるの。結構簡単じゃない」
「えっ?」
あたしが言うと、セサミは驚いた様子で顔を上げた。本当にわかっていないらしい。仕方がないので解き方を教えてあげることにした。
「この絵たぬきでしょ?つまりこの文字列から『た』を抜けばいいのよ」
「なるほど。じゃあ答えは――『きいろいみちをすすめ』、『黄色い道を進め』だっ!」
セサミが叫ぶ。あたしは周りを見渡した。
「とりあえずこの森を出ないとね」
きっと森の外に黄色い道があるのだろう。それを見つけるにはまず出口を探さなきゃ。するとセサミが思い出したように言った。
「そういえば主が寝てる間に少し森の中を散策したんだ。その時黄色い道を見たよ」
「ナイスセサミ!」
思わず叫ぶ。これで森の出口を探す手間が省けた。
「それじゃあ行ってみよう!」
あたしはセサミの後ろに続いて歩き出した。
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