圧倒的不満
千世 護民
第1話 頑張れ新人ちゃん
今年。専門学校を卒業し無事に就職。新社会人として歩きはじめました。始めは正職員としてではなく、アルバイトで必要最低限の仕事を学びました。ある程度は1人でこなすことができるようになって、いよいよ正職員一日目。
「今日からよろしくお願いします」
事務所に入り、先輩達に元気よく挨拶。
「おはよう。今日から正社員の仕事も頑張ってね」
別クラスの担任である先輩からのエール。
「今日から一緒のクラスだからよろしくね。わからない事は何でも聞いてね。」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
今日から新人保育士になったのだ。
今日は早番のためエプロンに着替え、早速朝の仕事を終わらせる。電車の始発で来て二人の保育士で全ての仕事を終わらせなければ園児が来た後仕事が渋滞するため急いで終わらせる。さらに今日は入園式があるためなおさら貯めておくわけにはいかなかった。時間ギリギリで終えていよいよ園児が登園する。パートの方もこの時間に来るため式の準備をしに余裕のあるうちに引き継ぐ。
「今日から新任さんね。よろしく。」
「はい!よろしくお願いします」
パートの方は保育士の他にも給食を作ってくださる方もいるのでまだ全員に会えた事はなかった。早く皆さんに挨拶したいところなのだが、時間がなかなか合わず顔を見たことがない方もたくさんいた。
“……担当の紹介です。自己紹介お願いします!”
司会の主任が私のクラスの先輩にマイクを渡す。次は私だ。
「初めまして。Kと申します。私は保育士一年目なので保護者の皆さん、お子さんと一緒に成長していけたらと思います。これからよろしくお願いします!」
緊張で言ったことをあまり覚えていないが、きっとこんなことを言った気がする。安心も束の間、すぐに保育の業務に戻る。と言っても担当クラスは0歳児のため、引き継ぎで0歳児クラスになった1人を除いて全員初めましてである。これから式が終わるとクラスの説明を聞きに保護者が来るため必要な書類をまとめておく。
「K先生は私と一緒に来て。保護者のお話し聞いて回るから。」
「はい、分かりました。」
この人、先輩の中でもベテランなようで聞いたことが的確に分かりやすく返って来るのでかなりありがたいと思っているが、のちに私が色々迷惑をかけてしまう人である。
色々説明を受けていると早速入学式が終わったとの連絡が。いよいよ一対一でのお話しができる。
「おはようございます!」
飛び出し防止用の柵を開いて案内役に回る。部屋は一番奥で大きい窓がありとても眺めがいいところであった。
「それではよろしくお願いします。」
先輩が一通り注意事項や保育園のルール、毎朝やってもらいたいものなど伝え終えるといよいよ“慣らし保育”の始まりである。これは0歳児が親元から離れ保育園の環境に慣れてもらうために行なってもらうイベントなのだが、いきなり親から離れてしまうため、1時間ほど泣き止まないと言うのは当たり前である。保育士の力量が試される瞬間でもある。誕生日もバラバラなこともあり慣れるまでに掛かる時間は個人差がある。実際半月経っても床に座ったことのない子もいた。
1時間もしないうちに説明を終えて「明日からよろしくお願いします」と保護者は帰っていった。入園する前に面接があり、ある程度顔を覚えていったが実際に会うと混乱してしまった。顔を見て一人一人苗字を呼んでいた先輩達は本当にすごいと思った。
「お疲れさま。今日は別のクラスで保育してもらうけど、その前にいくつか伝えたいことがあるから聞いてね。」
「はい。分かりました。メモしたいのでちょっと待ってください。」
「うん。」
メモを持って戻ると先輩と主任は何やら話していた。
「ちょっとモンスターだね。」
「いやーそうですよね。」
…そういうとこか。と悟った。何があっても子どもと保護者の前では絶対に笑顔でいよう。そう決心した。すでに入園式で表情筋がつりそうになっていた。あはは。
「ああ、ごめんね。ちょっと話してて気づかなかった。じゃあ行くよ。」
内容はこうだ。
・Aちゃんは皮膚が弱いからおむつについて何か言われるかも
・B君はお家では一畳分の柵の中でしか遊ばせてないらしい(ケガがこわいから)
・Cちゃんは可愛い服で登園させたいらしい
・Dちゃんはお兄ちゃんがいて卒園児だから気にかけて
・E君は甘えん坊だからいっぱい抱っこしてあげて
まだ一年目で“普通”を知らないからなんとも言えないが、世間体でこれは普通なのか。甚だ疑問である。というか読んでいる諸君に聞きたい。これは普通か?まじで教えてくれ。
ゴホン。取り乱して申し訳ないです。さて、先輩の連絡を鵜呑みにした後他の業務をこなし今日は終了。
さて、いよいよ新0歳児一日目。いつも30分前には着いて準備するのだが、今日は1時間前に着いてしまった。無意識に緊張しているようだった。登園予定は10時ごろ。ご家族に登園時間を選択してもらった。まずは一時間。どうなるのか予想がまったくつかないため、さらに緊張してくる。
「おはよう。今日早いね。」
もう1人の先輩である。何年かいるようだが0歳は初めてらしい。
「はい、ちょっと緊張してて。」
「だよね。一緒に頑張ろ!」
「はい!頑張ります!」
この先輩はめっちゃ可愛い。自分より背が低いからなのかわからないが私のことをとても応援してくれていて、顔も性格もいい。かわいい。今日も元気をもらえた!!
10時。引き継ぎで0歳児クラスにいる子は今日から先輩となる。一人でボールを転がして遊んでいるが、今日は頼りにしてるよ!とひと声かけた。
「おはようございます。」
先輩が保護者に気づきいち早く挨拶をした。私も続けて挨拶をした。
「よろしくお願いします!じゃあねA。」
「はい!いってらっしゃいお母さん!」
サッとお母さんは視界から消えた。残されたAちゃんは…
「最初はこうだから大丈夫。」
えーーーーん
ギャン泣きです。まあ、お母さんいなくなって知らない人しかいなかったら私でもびっくりするわ。
「まだまだ来るからね。」
今日は一時間後にお迎えに来てもらうが、泣かずに遊べる子はいるのだろうか。
30分後。子ども全員が集合した。
「すごいねー、みんな元気だわ。」
文字に出来ないほど泣き声の嵐。1メートルも離れていれば先輩の声が聞こえないほどである。気になって園長先生も様子見に来た。
「すごいね。この時期の恒例だからね。」
例えようのない泣き声の嵐は止む事はなく一時間続いた。しかし、最後にはちょっぴり慣れてハイハイで部屋を歩きまわる猛者も現れてひと安心。予定通り一時間後には安心した様子でお母さんお父さんの胸に飛び込んで行った。お母さんお父さんが見えると、子どもはピタッと泣き止んでしまう様子が見ていて面白かった。同時に親は偉大だなあと心底思った瞬間である。
一週間後。登園直後は泣いていてもすぐに気持ちを切り替えて部屋を歩き回る猛者が一週間後には半分以上となった。いよいよ時間が延びていくが保護者と要相談である。相変わらず0歳児クラスの先輩(子ども)にはお世話になっている。効率のいいおむつ交換やおもちゃの使い方などは先輩から学んだ。最近先輩はハイハイの速度が上がりマットの坂道に挑戦中である。
それに対して私はパソコンに苦戦中であった。書類の内容もそもそもちゃんと出来ないのにパソコンはまだ早かった。仕方なく内容を紙に書いて先輩に確認をとってもらうことにした。さらに苦戦ポイントはそこだけではない。週ごとにクラスの担任の中でリーダーを決め、午前中の動きを決める。だが、人員配置がとんでもなく苦手だった。まず人の名前がわからない。さらに専門用語を使って説明する先輩もいたので全く身につかない。おかげで朝の仕事にも関わらず、仕事が終わってから考えて帰るなんて事はしょっちゅうあった。そもそも人に指示を出す行動が苦手だった。まだある。それは散歩の時である。実習ではおててをつないだことしかなかったので“散歩車”を一度も扱ったことがなかった。幸い0歳児はまだ散歩には行かないのでゆっくり時間がある時に一つ上のクラスで練習することとなった。扱いがすごく難しい。ベビーカーのようにスムーズには動かないので、狭い歩道が苦痛でしかなかった。0歳児はまだ使う機会がなくて助かった。
今日は遅番。一番最後に鍵を閉める役である。点検作業が覚えられず苦手だったが今日は人が足りず忙しいため一人で見て周らないといけなかった。
30分後。先輩はもっと早い時間に終わるが自分はまだまだ素人だと痛感した。しかし、
「一人でできたの?すごいじゃん。今、パッと確認してくるね。」
褒められたのでノーカン。後で聞こえたが完璧に出来ていたらしい。
早番。やっぱりやることが多くて時間内に終わらない。特に週明けの業務がキツい。ぶっちゃけ言ってしまうと業務時間上より一時間ほど早く出勤して業務をしているのでその分の給料モゴモゴ……。超勤付くのかなあ。
さて、そんな感じで一ヶ月。出来ることもだんだん増えてきて先輩からの指示も増えてきた。
とある日。その日は早番だった。B君が登園してきた。その時にはまだ何もなかった。そこから一時間後くらいだろうか。私が一番最初に気づいた。
「ん?すいません。B君、登園してきたときここにミミズ腫れありましたっけ?」
「え?なかったはずだけど。とりあえず消毒するの持ってくるね。ここ、お願いします。」
その場は消毒し、保育士間の連絡帳に詳細を記入し終わった。ちょくちょく様子を見ていたが10分も経たず腫れは引いた。
「おはよう。」
「あ、おはようございます。先生、ちょっと伝えたいことがあるんですけど。」
「ああ、連絡帳見た。あれ何。」
「朝、登園一時間後くらいに…」
私はその流れを事細かに説明し、ミミズ腫れの理由がわからないことも説明した。
「え、待って。なんでさ、誰も見てないの。」
「アタシも見てたけどB君の近くに子どもほとんどいなかったのさ。」
近くにいてあの時相談したパートの方が答えてくれた。
「消毒は?」
「いや、してないです。」
「え、なんで。はあー。そっか。あのね。ケガとかはすぐ消毒して。傷口からばい菌入るから。」
「アタシしたから大丈夫。K先生も見てくれてたよ。」
「あ、そう。とりあえず。午睡(お昼寝)の時話そ。」
「はい。分かりました。」
いよいよ犯人探しが始まる。なぜここまでするのかというとB君のうちは私たち目線ではいわゆる過保護なのである。ケガもそうだが理由がわからないとなると大問題だ。
「ねえ、今日一緒に早番した先生に話聞いてきて。」
「はい。」
私は恐怖心から急いでその先生に事情を説明し、情報を聞く。
「いや、知らない。あー、あの連絡帳に書いてあったミミズ腫れね。分からんわ。」
「そ、そうですよね。あはは。」
そのときの私は保護者の顔や先輩の焦った声・表情や冷や汗やらで半泣きの状態だった。
「ちょっと言ってくるわ。言ってきてやるから。」
前から他の先輩のことを教えてくれたり書類を手伝ってくれる先輩だったのでそのときの言葉がどれほど頼りになったか測り知れない。
現場に戻ると他の先輩を巻き添えに話し合っているようだった。
「うん。とりあえず見てないんだわ。」
「そっか。よりによってその家庭ね。」
「え、ちょっと待って。主任に相談するわ。」
ここまで大事になるとは思っても見なかった。私も主任のところへついていった。
「えー?そうなの。そこね。モンペっぽいからね。」
「そうなんです。もう、誰かがやった事にして謝りますね。私。」
「うーん。それもいいけど本当に理由分からないの?」
「なんかー、B君の爪は確かにちょっと伸びてたんですけど。明らかにそれより太いミミズ腫れだったらしいんですよ。」
「あ、あなた見てないの?」
「はい。でも、なんとなく残ってた跡は見ました。」
「あれ、どこだっけ。」
「右腕のちょうどTシャツに隠れるところですね。」
「え。K先生は見たの?」
「はい。一応一番最初に見ました。」
「アタシもK先生に報告受けて一緒に見たよ。でもねアタシたちの小指の爪よりも小さいミミズ腫れだったんだよね。B君の近くアタシ見てたけど誰も行かなかったし。」
「ほんと?K先生。」
「はい。あの、テーブルで仕切ってる部分のところでずっと遊んでて角だったのでほぼ誰も近くに行ってません。」
「一応先生たちの爪見せてもらえる?」
「そうね。保育士として最低限のマナーなんだけどね。」
私は2日前に爪を深爪レベルで切ったばかりでまだ生えていない。パートの方も大丈夫らしい。
「いーや。違うわ。引っ掛けるほどの爪もないわ。」
「そっか。ちょっと相談しよ。ほら、彼女たちはもう仕事は関係ないからさ。K先生早番でしょ?」
「はい。そうです。すいません。」
「はい。」
とりあえず非常に申し訳ない気持ちで帰る準備をする事にした。
「失礼します。」
職員ロッカーは入り口に鍵がついていてすでに開いていた。
「はーい。あら、さっきぶり!」
このパートさんは給食を作ってくれる方。が、しかし朝私が給食の人数表の人数を間違えてしまったために朝からとんでもなく迷惑をかけてしまったうちの一人である。
「あ、朝はすいませんでした。確認もせず渡してしまって。」
「いいの。誰でもあるからそういうの。次はもうしないでしょ!」
「はい。すいませんでした。」
「もう謝らないで。別に怒ってもないし、むしろわざわざ間違いを伝えにきてくれて嬉しかったよ!ほら、そんなことくらいで泣かないの!」
気がつけば目から大量の涙が流れていた。
「実はね。他にも失敗しちゃったの。ちょっとつらいね今日は。」
「あら大変。そうだったの。まあ、誰にでもあるって。大丈夫よ。」
「…すいません。」
「さて、帰るんでしょ。もう一時間も過ぎてるでしょ。ね?もう終わりね。ほら、ティッシュあげるから。」
「ありがどうございまず…。本当に今日はすいませんでした。」
「もう気にしてないからね!さ!帰りましょ!」
「そうよ。いつまでもここにいられないんだからね。はいチョコあげる!」
「うぅ…ありがとうございます。すいません。」
「ほい上着て!いくよ!」
「あい…」
なんで私が泣いてるんだろう。きっと泣きたいのは先輩の方なのに。だからこれだけは言わなきゃいけない。
「失礼します。先生、ごめんなさい。本来なら私が保護者の方に説明しなきゃいけないのに無関係の先生が責任を負うような形になってしまい申し訳ありません。」
チラリと頭を下げる前に先輩の顔を見ると半分呆れ顔である。
「もういいよ。次からはちゃんと子どものこと見ててね。」
「はい、すいません。失礼しました。」
「私もちゃんと見ていなくて。すいませんでした。」
パートさんと一緒に扉を閉め一目散に靴箱に向かう。
「えらいね。ちゃんと謝れて。私は出来ないなー。凄いよ!」
「いえ、一番辛いのは私じゃないので。せめて謝らないと。」
「私も申し訳ないよ。ちゃんと見てなかったんだから。」
「引きずるから終わりにしましょ。いやーにしても今年は大した人が入ったね」
「いや、そんな。でも、あらためて今日は勉強になりました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「もういいのよ!さて、かえるよ!いつも電車?」
こうしてとりあえず今日を終えることができた。
だんだん自分に対してと保育園そのものに対しての不満がくっきりわかってきた。
まずは一つ出来るようになると、また一つ課題が出てくる。そのときはどうにも対処できなくて先輩に頼ってばかりで、情けない。悔しい。もっと力になりたい。
それから毎日給食を食べ終える時間になると来てくださる給食員の方。食べ終えて食器を下げてもらおうと給食の方に来てもらった。柵を挟んでいたので手渡してお皿を渡そうとしたら、先輩に
「いいから保育して。皿は下げてもらえるから。」
と、怒られてしまった。確かに私は保育士だし本来子どもを見ていなければいけない。だが、わざわざ下げてくれようとしているにも関わらず伸ばしてくれた手を無駄にしてしまったことを今でも後悔している。その場は思わず小声で「ごめんなさい」と言って、下げてもらって当たり前だと思っている先輩に少しイラッとしてしまった。
保育園にはそんな先輩の前の話を聞いた。一気に不信感を抱いてしまった。あのミミズ腫れ事件のとき一緒に早番だった先輩からである。
「あの先生のせいで辞めた先生前にいるんだけどK先生大丈夫?」
おいおいマジかー。同じクラスにモンスターおったー。とは言えなかった。その場は「ヘーソウナンデスネ。タノシイデスヨ。」とは答えたが、もう技術面以外で同じクラスの先輩から学ぶものはない、とシャットアウトした。シフトの都合上一緒にいる時間は一番長いのが苦痛で仕方なかった。ちなみに「辛いです」と主任にチクったが改善は見受けられなかった。ここでようやく甘い汁を啜って生きてきたバチが当たるんかーと諦めた。その5日後に「もう辞めたいです」と言ったらクラス担任の先生たちだけで会議をさせられ、なんやかんやで「これからも頑張りましょう!」と落ち着いた。社会の厳しさを学んだ。
正職員になってから二ヶ月が経った。今日は会議。先月の反省をしそれを引き継ぐ。それが一番大切だとこの二ヶ月間全身で感じた。そして、会議の後は新人歓迎会。今年は3名。私の他にもう一人短大からと他の保育所から一人。10年保育士として働くベテランだ。短大卒の子は面識がなくラインすら知らないがこれを機にライン交換をする事にした。さらにクラス担任プラス主任のライングループもできた。正直迷惑だったがまさかこれを始めに使うのが私だとは想像もつかなかった。
『今日は遅番でリーダーの週なのにおやすみいただいてしまい、申し訳ありません。』情けない。どうしよな。病院も予約できないしめっちゃのどボツボツ出来てるし。夏風邪だろうけど診断書欲しいんよなー。
夏風邪で38℃まで熱が上がり、体はだるいわ声は出ないわで大変な事になった。かろうじて数日後に復帰できたが再び熱が上がってきた。
「もう少しで夏祭りあるしさすがにこれ以上は休んだら迷惑だな。薬飲も。」
こうして熱をドーピングで下げて喉にできたボツボツに抗って普通の声を装い自分で言うのもアレだが社畜の出来上がりである。
計画は前からしてあり、準備するものは決まっていた。後は当日を待つばかり。ちょっと楽しみだ。
当日。在園児だけでなく卒園児、それから児童館の小学生も多少来てくれた。私は輪投げの店員をやっていたが景品が計算と合わず前半で半分を切っていた。なので後半では無料で配っていた誰かからもらったまま事務所に眠っていた飴を混ぜて配る事にした。(賞味期限は大丈夫。)
大盛況でみんな笑顔になってくれてとても嬉しかった。輪投げが全部入った子は周りに並んでいたお客さんからも拍手をもらい得意げに帰っていった。唯一キツかったことはのどが痛いのにおやつの試食用にもらったクッキーを食べなければいけなかったことだ。
「美味しいですね、これ!」
マスクのおかげで目だけ笑顔にできる特技が役に立った。
次の週から。いよいよ風邪がぶり返しドーピングではどうしようもなくなった。もう半月過ぎたのにまだ半分も出勤できていない。給料が。まずい。
月末。ついに減給手続きをすることとなった。五万も引かれた。手元に残った方が少ないくらいだった。夏風邪め。一ヶ月経ってもまだ治らなかった。
そして現在。想像より社会は厳しい。以上。
夏風邪(ヘルパンギーナ)には注意しましょう。
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