追放後の人生はAIゴーレムでハーレムだ

イコ

第1話 追放

「ヒース。今日限りでお前を追放する」


 リーダーである勇者エルシェンから出た追放の言葉は六つある門の三つ目を超えた時だった。


 俺たちはこれまで多くの苦難を乗り越えてきた。

 エルシェンと出会ったのは始まりの町アースだ。

 

 第一の世界、《王国》にある最初の街アースは田舎街で、俺たちは新人冒険者として互いに切磋琢磨する中だった。

 エルシェンにとって俺は最初のパーティーメンバーであり、一番の古株として貢献してきたつもりだ。


 それなのにいきなりの追放は納得できない。 


「おいおい、ちょっと待てよ。俺がいなくなったら誰が荷物持ちをするんだ? 俺のゴーレムがいたからこそ、ここまでお前らは楽ができたんだろ?」


 俺は戦闘もできるポーターとして同行してきた。

 職業は《ゴーレム使い》。

 サポーターではあるが、パーティーに貢献してきた。


 野営をするときはゴーレムを見張り立たせ、馬車を引くときは、ゴーレムが馬車を引いていた。

 荷物だって、荷馬車を用意して、俺のゴーレムが運搬を担当していたんだ。


 俺自身だって、ポーターとして買い出しや宿取りをして、パーティーに貢献していた。雑用係だと笑う他の冒険者もいたが、そんなことはどうでも良かった。


 仲間に貢献していると俺自身が思っていたからだ。


「ふん、そんなことはない。後三つの門を越えれば、僕たちは全てのスキルを手に入れられる。そうなればゴーレムなんてブサイクな奴を連れて旅をしなくて良くなるからな」

「なっ!」


 俺は愛すべきゴーレムがバカにされて頭に血が上る。


「お前! それ本気で言ってんのかよ! 俺のゴーレムがブサイクだって!」

「当たり前だろ。そんな土と岩で出来た木偶人形。そんな物を可愛がるお前がキモすぎなんだよ!」


 エルシェンと二人だった頃から、俺のゴーレムは活躍していた。

 それなのにエルシェンにそんな風に思われていたことが一番ショックだ。


「それにな、お前の代わりになるパーティーメンバーはもう勧誘したんだ」


 そう言って小柄ながらも可愛い小人族ホビットの少女が姿を見せる。


「どうも、ホビットのルールーです。ポーターでアイテムボックスの魔法が使えます」


 アイテムボックスの魔法は異空間に物を収納できて、時間が停止するため、温かい物は温かく。冷たい物は冷たいまま保存ができる。

 しかも、普段は手ぶらに思えるほど荷物を軽くできるという優れた魔法だ。


 ホビット族が持つ固有魔法で、他の種族では習得することすらできない。

 彼女はホビット族だから、アイテムボックス持ちなんだろう。

 確かにポーターとしての性能は俺よりも上ということになる。


「それなら見張りや宿取りは誰がするんだ?」

「そんなの誰でもできるだろ? なぁ〜みんな」

 

 エルシェンがパーティーメンバーに視線を向ける。

 女好きのエルシェンが集めたパーティーメンバーは俺を除けば女性ばかりだ。


 残念ながら、聖女や賢者といった最高ジョブの者はいない。

 それでも高ランクの女性冒険者に声をかけてエルシェンが集めたメンバーだ。


 エルシェンの顔と、勇者としての才能を見込んで集まった女たちは、みんなエルシェンの味方をする。


「そうね。あのブサイクなゴーレムは必要ないんじゃない?」

「ずっと嫌だった。土臭い」

「興味ない」


 三人とも、俺を見ようとしない。


 ここまでエルシェンと仲間たちのために頑張ってきたはずなのに、俺の気持ちはなんだったんだろうな。


「わかったよ。出て行ってやる」

「そうそう、パーティーから追放するんだ。荷物は全部置いて行ってくれよな。僕は慈悲深いからお前の服と命は取らないでいてやるよ」


 勇者であるエルシェンは戦えば俺よりも強い。

 今更、逆らったところで怪我をしていいこともない。


「わかった」


 俺はゴーレムに持たせていた女たちの荷物を地面に置く。

 他にも財布や装備まで全てを投げ捨てる。


「これでいいんだろ。他には何もねぇぞ」

「ああ、十分だ。引き返すのも苦労するだろうが、せいぜい頑張れよ」


 エルシェン以外の女たちは、去っていく俺に一瞥もくれることはなかった。


 ふん。お前たちなんて知るかよ。

 

 俺は酒場を出て全てのゴーレムを解除する。


 馬車を引いていたゴーレム。

 荷物を運んでいたゴーレム。

 見張りをしてくれたゴーレム。

 荷馬車を引いていたゴーレム。


 四体のゴーレムを解除すると、常に消費していた魔力消費が止まる。


 この一年間、二十四時間常時発動していたため、完全に自立型だと思われていたが、俺のプログラミングによって魔力を供給して召喚していた。


 もうそれも今日で終わるんだ。


 俺にはエルシェンにも言っていない秘密がある。


 それは俺が転生前の記憶を持っているということだ。


 別にこの世界がゲームだとか、異世界転生でチートゲットしてとか、都合のいい話はない。ただ、俺は他のゴーレム使いよりは優秀だと自負している。


 かつての俺は日本という国でプログラマーの仕事をしていた。

 さらにデザイナーの仕事を両立して社畜生活を送っていた。

 その過労が祟って死んでしまったわけだ。


 この世界に転生した直後に、ゴーレム使いという職業を女神様から授かって、冒険者としての活動を始めた。


 この世界リングシアは、七つの世界を超えることで、職業に応じたスキルをマスターすることができる。


 しかも、全ての世界を渡った者は、住む世界を選べる権利までもらえるのだ。


 俺たちはこれまで三つの門を超えて四つ目の世界にたどり着いていた。


 エルシェンは、一つ目の世界である王国で勇者の職業を授かり、七つの世界を超えることで最初の王国に戻ってキングを目指していると夢を語っていた。


 顔も良ければ、剣や魔法の腕も立つ。

 頭もずる賢いという意味で悪くもない。

 だが、性格が最悪な奴だった。


 出会った頃はお調子者で、俺の使い勝手がいいからと強引に仲間に引き入れられた。

 だけど、不遇だと言われるゴーレム使いを仲間にしてくれて、女が絡まなければ気の良い奴だと思っていたから、俺はそれでも頑張れていたんだ。


 それに勇者の仲間となることは王命だったから、俺は仕方ないって思っていた。

 だけど、王国で一人、次の世界で一人、また次の世界で一人と女の仲間を増やしていくエルシェンを見て、どんどんエルシェンがおかしくなっていたことは気づいていた。


 とうとう俺を排除して全員女のハーレムパーティーを作り上げたというわけだ。

 それについてはいつかはそうなるだろうと思っていたからどうでもいい。


 だけど……。


「俺の愛すべきゴーレムちゃんたちをバカにしたことは絶対に許さなねぇからな。泣いて仲間に戻ってきてくれって言っても絶対戻らないぞ」


 俺はゴーレム使いとして自分のゴーレムたちを愛してるんだ。

 転生前の俺は、趣味でフィギュア作りをしていた。

 お人形遊びとバカにする奴もいたが、人の好きを笑う奴の言うことなんて聞いてられるかよ。


 俺は自分の好きを貫き通す。

 そんな俺に女神様がゴーレム使いを授けてくれたんだ。

 最高の転生だって思ったね。


「だから、俺は最後まで世界を超えて、スキルをマスターする」


 四つ目の門に近くまで来ている。

 あいつらがいなくても、俺は一人でも進んでいく。

 一文無しの俺は宿を取ることなく、次の門を目指した。


 四つ目の世界である小人族と森の世界は、ゴーレム二体を護衛につければ問題なく突破することができた。


 門を超えるごとに能力が授かる七つの世界で、俺は五つ目の世界へとたどり着いた。


 そこは……。


「溶岩と石ばっかりだな」


 ゴーレム使いとして、ゴーレムに関するスキルばかりをここまで習得してきた。


 そして、今回の俺は……。


「AIゴーレム?」


 俺が新たに手に入れたスキルはAIゴーレムという意味がわからないスキルだった。

  

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 初めて書く追放ザマァ系?です。


 ザマァもそれほどキツめにしないで、主人公がのんびりゴーレム作って、AI美少女を作る話にしたいです。


 カクヨムコンテスト9には間に合わないと思いますが、10万字を書いて別のコンテストに出すのもありかと思っているので、のんびりと執筆していく予定です。


 面白いと思っていただければ良いなぁ〜。

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