第42話 罰ゲーム

☆☆☆柴橋への『お願い』


柴橋が負けることなんて考えてなかったので辻褄を合わせる必要がある。


「そのさ、優勝出来たら何でも言うこと聞くって言ったからさ、優勝できなかった場合。俺の言うことを聞いてほしいんだ。うん」


「……ぴゃ……ええええぇえぇ!?」


「そ、それに、ほら、柴橋も俺との約束を守れなかったこと後悔しているんだよね、うん。その……だから、表面上は罰ゲームとしてその『お願い』を聞いてほしいんだ……うん」


「は……わわわわわわわわわわわわ……!」


柴橋が……取り乱している。いったいどうしたというんだ……それともドン引きされているか?


分かっているさ今やってるのは、かなり強引な手段だ。荒療治。


「えっと、ダメかな。あと出しじゃんけんみたいでずるいかもしれないけど……俺の言うこと……聞いてほしい」


「……そ、そんなこと……ば、罰ゲームでも何でもない……です。せ、先輩が私を求めてくれるなんて……ご、ご褒美以外の何物でもなくて……!」


「結構過酷な罰ゲームだぞ? 後戻りはできないけどいいのか? 途中で拒否するとかなしだぞ?」


なんか、本当に大丈夫だろうか……


「は、はい……先輩がしてくれることなら、例え殺されろと言われても受けいれちゃう気がします……」


「いやいや、流石に殺したりは死んでもしないよ」


だけど……これならいけるだろう。俺はリュックに居れていたモンキで買ったものを取り出す。


「……じゃ、これ着けて……欲しいんだ……柴橋に」


取り出したものはネコミミと鈴の首輪。つまり……猫の真似だ。


「……はい!!!!!? え、ネコミミに……首輪ですか!? え、これってつまり、その……えっと私に……着けたいってことですよね……えっと、えっと……あええぇぇぇぇえ!」


「わ、悪い! ダメならいいんだ……その……気持ち悪いよな……彼女にそんな提案するの……」


「全然構わないんです……先輩がその、見たいなら、その、全部嬉しいですから……で、でも……先輩……恥ずかしくて……」


よし……受け入れてくれた。だったら……


「恥ずかしい思いするのが罰ゲームの本懐だ。だ、だから柴橋は猫ってことで……鳴き声以外喋っちゃだめだから……」


「……ぴゃ!!!! それって……プールの時飼いたい……って……」


柴橋も覚えてくれていたようだ。そう、あの時の猫の鳴き声がとてつもなく可愛かったのだ。


「お、俺は飼い主だから、罰ゲーム終わるまで柴橋は猫ちゃんってことでお願い……する」


「は、はい……先輩。いっぱい可愛がってください……せんぱぁい……」


納得してくれた柴橋はネコミミと首輪をつけてくれた……なんだ……この可愛らしい姿は……!


恥ずかしいのか、頬も真っ赤になっているし……何より猫っぽい。黒髪のせいか黒猫っぽさがある。


☆☆☆猫


二人でソファーに座る。柴橋は俺に足を枕にして抱き着いてくる。


「にゃ、にゃあ……にゃあ……にゃあ~~~」


……可愛い。なんだこの生き物は……


「にゃぁ///……にゃんにゃん///……にゃん……にゃぁ……///」


柴橋は恥ずかしくて死にそうになっているが、その顔を赤くした姿も可愛すぎる。


今の柴橋は猫だ。呼ぶときに『柴橋』というのもどうかと思うので……


「『マコ』……おいで、こっちだよ」


「にゃ、にゃぁ!? せ、せん……にゃ~~!」


そのまま柴橋は俺の胸元に飛び込んできてる。


「マコはかわいいなぁ……よしよし……もっと可愛く鳴いてごらん。にゃあにゃあって……」


そして俺の理性はぶっ飛んでいる。正直柴橋を死ぬほど甘やかしたい。


「にゃああ! にゃんにゃん!」


顎を撫でると鈴の音が鳴った。


「マコ……可愛いよ。可愛い。もっと甘えて、マコ……マコ……」


「にゃん……にゃん……がぶ! にゃん……にゃんにゃん……がぶ!」


「え、マコ!? 本当にかわいいな……」


すると、柴橋は俺の指を甘噛みしてきた。なんだこの甘えんぼっぷり……


そのまま柴橋の頭を撫で続ける。


「にゃ~ん……にゃんにゃん……にゃ~ん……」


頬をつついたり、首筋を撫でたり、今まで以上にイチャイチャがエスカレートした。


そのまま柴橋は俺のシャツの中に顔を入れて嗅いでくる。


「にゃん~~~す~~~は~~~にゃん……にゃんにゃん!」


柴橋の甘えも限界突破しているだろう。だから理性だって吹っ飛んでるはずだ。


……もう、考えとかなしで柴橋に言う。


「よ~しよし……マコ……今日はいっぱい頑張ったね。結果がどうであれ、マコは頑張ったんだ。マコ……俺の可愛いマコ……凄く頑張った。マコ……頑張っただけでいいじゃん……今はかわいいかわいい猫ちゃんなんだからさ」


俺も少し力を強くして抱き締める。


「にゃ……」


「俺の推しでもあるけど、それ以上に恋人だから……もし、今日みたいに辛いことがあったら言ってほしいんだ。もっと抱き締めたいから。真子が少しでも元気になるように……もっと真子を愛したい……愛おしすぎるんだ。真子……大好きだ」


柴橋は顔を出すと上目で見てくる。反則……


「……せんぱぁい……あ、にゃん……! にゃん……にゃん!」


「もういいよ喋っても、罰ゲームは終わりだ……最高に可愛かったよ」


じゃないと俺も大変なことになる。猫の力強すぎる……


☆☆☆最高の罰ゲーム


「いいんですか……あ、あぁ……あんなに甘えて……恥ずかしいです」


「良いんだ。今は二人きりなんだから……正直。もう柴橋と離れたくないくらい好きだから……柴橋……」


「せ、せんぱい……そ、その……名前で呼んでほしいです……『真子』って……その、凄く嬉しすぎて……せんぱい……私もう我慢できないです……」


抱き着いているので顔がものすごく近い。……いや、これは……


「真子……真子……可愛すぎる……大好きだ!」


「せんぱい……せんぱい……かっこいい……大好きです……」


俺は真子と距離を近づける。そうすれば自然に顔と顔が……あとは真子が顔を近づけてくれれば……


「せんぱぁい……」


そして、真子も顔を近づけてくれた。よかった……同じ気持ちだったんだ。


そのまま俺達は唇を重ねた。最高の瞬間だ。


「……ぴゃぁぁぁあぁぁ……やっちゃった……せ、せんぱいとキスしちゃった……せんぱい……せんぱ……!」


我慢できずにもう一回した。結構強引だったが受け入れてくれる。


「真子……ごめん……可愛すぎるから……!」


「もっと、せんぱいとキスしたいです……せんぱい……大好きもっと……もっとください……せん……ぱい……」


この後。何十回。いや、何百回もキスをした。


こうして人生でのファーストキスは成功に終わったと言ってもいいだろう。


今日はいろいろなことがあったな。クロスローズの正体。真子がプロゲーマーであったこと。


そして、距離もかなり縮まったと思う。俺の理性保ってよかった。


というのも愛おしすぎるんだ真子が……そもそも、真子にプロポーズしてたんだよな、俺……クロスローズにだけど、あながち冗談じゃなくなってきている。


いずれは本当のプロポーズをしようと決心した。


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