第40話 ゴッドデッドオンライン
〇〇〇メッセージ
先輩は自分が持っていたチケットの席へ戻った。正直。先輩にクロスローズだとバレた時は終わったと思った。
だけど、先輩はクロスローズのファンであり、意外な一面を見られた。先輩の推しが私……ふふふ……最高。
それに推しの前で萎縮している先輩も凄く可愛かった。敬語も良かったけど、いつもの口調のがかっこいい。あぁ、でも委縮した姿を撮影して毎晩見たい……先輩。好き好き……
今は控室で野田さんと二人きり、先輩が会話に入ったおかげで、少しだけ打ち解けた気がした。今ならどもっても話せる気がする。
「でも、驚きました。柴橋さんに彼氏がいたなんて! とにかくその色々な出来事ありましたけど、ゲームに集中できそうですか?」
野田さんはメンタルケアもしてくれている。クロスローズだから些細なことでゲームに支障がないけど……先輩の前であのクロスローズを演じるのは少し躊躇われる。
「えっと……その、先輩の前では少し気まずいです……あのモードは」
「武野さんはクロスローズのファンですから、今まで通り、いやそれ以上の過激な発言を期待していると思うんですよね。私もファンの一人ですから分かりますが!」
いくら、口ではファンと言っていても、あのモードに入って引かれないか心配になってしまう。初めての彼氏だし……
「分かってはいるんです……先輩はそんなことじゃ嫌いにならないというのは……でもでも……あ、先輩からメッセージが……」
すると、先輩からのLEMONが入った。
『大会頑張って! 俺はクロスローズがゲームしている姿を見に来ているから普段通り、それ以上でやってほしいな。もし俺が原因で緊張してたらごめん』
先輩エスパーだったりするのかな……
『先輩がそう言ってくれるなら……私頑張ります。最強で無敵のクロスローズに期待していてください!』
言葉ではそう言っているけど……やっぱり恥ずかしい……先輩の前であんな姿……
『この大会優勝出来たら『お願い』言って、ご褒美って言うのは大袈裟かな……なんでも言うこと聞くから』
『お願い』……え、恋人関係でお願いしていいってこと……?
「な、ななななななななな!!!!」
「どうしました柴橋さん!? メンタルに不調が……今すぐどうにかしますから相談を!」
あんなことや……こんなことも……先輩にしていいの……え、大会に優勝するだけで……
先輩ともっとイチャイチャしたい。抱き着きたい。匂い嗅ぎたい……もっと、もっと恋人同士でするようなことしたい。
キスをしたい。キスしたい……先輩とキスしたい……
先輩……先輩……先輩先輩先輩先輩先輩……!
気持ちが一気に集中した。確かにあの姿を見られるのは怖い。だけど……
先輩とイチャイチャできるなら……もう……私は……
「ふふふ……ははは……あっはっはっは! 今日の大会も圧勝ですね……皆さん全員を倒しますから! はっはっはーーーー!」
「いつものクロスローズさんが戻ってきましたぁぁ!」
☆☆☆大会が始まり
チケットで自分の席に座り大会が始まるのを待機していた。
俺がいて遠慮されるのは嫌だった。一ファンとして普段通りのクロスローズでゲームに集中させたい。だから柴橋のモチベーション向上させるため『お願い』を聞くことにした。
『はい! 絶対に優勝しますね!』
多分。大丈夫だろう……クロスローズの実力ならかなりいいところまで行く。もしかしたら本当に優勝してしまう可能性だってあるんだ。
そのままGDO大会が始まる。クロスローズの出番は後半ブロックだ。今回のルールは個人戦であり、フィールドにいるプレイヤーのキル数を稼いでいくFPSとなっている。
キル数がポイントとなる。ポイントの高い上位選手が決勝ブロックに進んでいく方式だ。それを各ブロックで繰り返していく。
会場では無数の戦いが繰り広げられていった。俺のエイムがカスに見えるくらいみんな上手い。
素人の感想でしかないけど、なんであんな長距離の射撃が当てられるのかさっぱり分からない。
『すげー』しか言えないもん。GDOの試合をずっと見ていた。
やがて柴橋ことクロスローズの出番がやってくる。フードを被ったクロスローズが出てくると。
「「「「クロスローズ! クロスローズ!」」」」
同士のファンがクロスローズコールが鳴る。俺はコールをせず腕を組んでいた。
……っは!? これが本当の後方彼氏面というやつではないだろうか!?
『あれ、俺の彼女なんです』って隣の人に言いたいし! 言わないけど!
「……うっせー! ゲームに集中できないでしょうが! これだから愚民は!」
そしてそのコールをバッサリと叩き切る。これでこそクロスローズだ。
……本当に柴橋なんだよな? 声は一緒なためどうしても気になってしまう。
クロスローズの試合は圧倒的だった。当然予選は勝ち上がりダントツのキル数でポイントは全ブロックぶっちぎって一位になっている。
スーパープレイの連発で会場が沸き上がる。本当にクロスローズの実力は凄い。どんな暴言すら実力でねじ伏せているのだ。
「あはは……だから、私に弱い者いじめをさせないでくださいよ……実力が違いすぎるじゃないですか……はぁ……」
圧倒的ラスボス感が会場に溢れ出ている……会場はクロスローズの実力に圧倒された。
「誰もクロスローズに勝てる奴は存在しないだろ。正直一人だけレベルが違いすぎる……後ろに目が付いてるんじゃないのか?」
「怪物だ……怪物が誕生した瞬間に立ち会えた……」
「未来でも見えてるんじゃないかぐらいの反応速度だよ。なんで相手の回避先にエイムおいてるんだよ……?」
それ、俺の彼女なんです。って言いてぇ……
全ブロックの予選が終了し、これから決勝戦が始まる。
『先輩。勝ちましたよ! 絶対優勝しますから約束お願いしますね!」
『うん。俺も柴橋が優勝するところ生で見たい。頑張って!』
だけど……現実はそう甘くはなかった。
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