ウロボロスの憂鬱
見鳥望/greed green
*
ーーくそ、鬱陶しい。
気が散って仕方がない。私は一分一秒も無駄にしたくないのに。
ーーあぁ、もう! ほらまた!
今日もまた逃してしまった。ついこの間までこんな事はなかったのに。私の貴重な時間は確実に何者かによって侵されてしまっている。
数日後。
今日もまたあの鬱陶しい気配を感じる。私はいきなりその場から駆け出し攪乱する。
「いい加減にしてよ」
大方の予想通り、尾けていたのは男だった。若く素朴な見た目も含め、本物は総じてこんなものだよなと納得する。
「バレてないとでも思ったの?」
「いえ、分かってましたよ」
男に焦る様子も悪びれる様子もない。
ムカつく奴だ。こいつのせいで私の貴重な時間を……。
「あなたも盲目ですね」
「はい?」
「人の事は言えないですけど、あなたも報われないですね」
「何言ってんのあんた?」
「まぁ別に、僕は好きでやってるだけなんでいいですけどね」
こいつはずっと何を言ってるんだ。そんな事を考えていた時、
「本当にいい迷惑なんだけど、これどういう状況?」
心臓が高鳴り全身が硬直した。
そこには私が一方的に焦がれ憧れ、恋や愛なんて言葉では表現しきれない、直視すれば羨望と嫉妬でこの身が狂い果ててしまいそうな、あの憧れの高澤様がそこにいらっしゃった。 同性だなんて関係ない。あまりに麗しい姿が今、この距離に降臨されている。
「あぁ、そういう事なのね」
高澤様はもう既に全てをご理解されているようだった。
「全員が被害者であり加害者だって事ですよ。勘弁して欲しいですね」
言いながら男は私の高澤様を睨みつける。今までと比べ物にならない怒りで血が沸騰しそうになるが、そこで私もようやく気付き始める。でもそれはあまりにも許されない構図だった。
「三つ巴って事になるのかな」
認めたくない言葉だが、世間一般で言えば私は高澤様をストーカーさせて頂いていた。
同じようにこの男も私をストーカーしていた。
そしてこれは許しがたいし何が良いか全く分からないが、どうやら高澤様はこの男をストーカーしていたという事らしい。
「これって、どうしたらいいですかね」
この男の言う通り、私達は誰一人報われないらしい。
ウロボロスの憂鬱 見鳥望/greed green @greedgreen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます