第7話 最後...
瑠香「最後のかた。いつでも大丈夫で...」
残った一人の候補者。瑠香はその顔にどこか見覚えがあった。エントリーシートを見るとその名前に見覚えがあった。...山田瑠医
瑠医「二人っきりになりましたね。かあさん」
それは、瑠香の息子だった。
瑠香「まさか...こんな変わった名前。あなた以外いない...」
瑠医「とうさんがつけてくれたんだ。愛しているかあさんの名前と医者になってほしいって期待を込めてね」
それは瑠香が若い頃、LAにいたときに産んだ息子の瑠医だった。瑠香はキャリアと家族の為に夫と離婚して、単身日本へ帰ってがむしゃらに働いて一流企業のCEOになった。
瑠医「とうさんから聞いたよ。かあさんの話...って言ってもとうさんはもういないけど」
瑠香「え...」
瑠医「別に俺もとうさんもかあさんを恨んでいたわけじゃあないよ。寧ろ、かあさんが養育費を送ってくれたことに感謝しているんだ。かあさんが頑張って一人で頑張ってくれたから俺がここにいるんだ」
瑠香はLAの大学を卒業後、外資系の大手金融会社に内定が決まっていた...しかし例のリーマンショック。あれのせいで瑠香の内定は取り消し、急遽、身内や友人のツテでなんとか日本の企業に就職する。
瑠医「じつはね...俺、医者になるんだ」
瑠香「え...それじゃあどうして」
瑠医「実はね。かあさんと話したかったんだ。普通じゃ会ってくれないでしょ。俺いろいろ調べたんだ」
この会社の十五次面接は例年、CEOと候補者の一対一の話し合いを行っていた。
瑠香「まさか。アタシと会うために...」
瑠医「そうだよ」
瑠医がスッと缶の上にあるみかんを右手で持った。そして、左手で缶を持った。
瑠医「こんなエナジードリンクばっかり飲んではいけません。体に悪いです。代わりにミカンを。医者いや息子からのお願いです」
瑠香「はい...」
瑠香は涙ぐみながら、ミカンを受け取った。
「アルミ缶の上にあるみかん、これで私を納得させてください」 『むらさき』 @0369774
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