第5話 残りは六人

 瑠香「ありがとうございます。結果は後日連絡します」


 さっき、男女6人の発表が終わった。面接は重苦しい雰囲気が漂っていた。


 瑠香(まさか、あんな方法でこの危機を打破するとは、それにしてもよくあんな短時間であれを考えて実行するとは...間違いなくこの会社を引っ張る人材たちだ)


 先ほどの6人の発表で残りの6人は委縮した。しかし、一組の男女が同時に手を上げてお互いにアイコンタクトをして前に出てきた。


瑠香「どうぞ。プレッシャーが高まっている中、よく手を上げてくれました」

(この子たち、よく出てきたな。あんな発表のあとじゃ、あたしですら前に出てこれないよ)


たいらなぎ「6番の平和です」


ともあい「9番の愛です」


平和と愛「実は私たちの間に子供が生まれるんです」


瑠香「...なるほど」

(うっそ!なにそのカミングアウト。ていうかいつ?就活中にできちゃったとかなの?)


平和「実は僕たち幼馴染でお互いに切磋琢磨して同じ大学に入って...同じ会社に入って社会のために貢献しようって夢がありました」


愛「でもさっきの人たちの発表を見て...小手先だけで敵う相手じゃないってわかりました」


平和「頑張ることだけが取り柄な僕たちですが、この会社の為に一生懸命頑張ります」


瑠香(落とせねえええ!なんだこいつら。こいつら落としたら子供の人生どうなるの...ポリコレだ。昨今世間を賑わせる面接で落とされたって言ってSNSで騒ぎ始めるやつだ...言ってることは昭和で爽やかな気がするが、これ腹に刃物突きつけているのと変わらないぞ!)


瑠香「フッこのプレッシャーの中、出てくるのも辛かったでしょう。その気持ちと誠意、入社後も見せてくれますか?」


平和と愛「え...それじゃあ」


瑠香「あちらのドアから退室してください。結果は...まあいいでしょう」


平和と愛は一緒にお辞儀をして、部屋を出て行った。廊下からは二人が泣く声が僅かに聞こえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る