第22話

 初日の営業が終了。クタクタになったメンバーを残すのは忍びないが、早くオーディションの件を共有するために閉店後の店内には5人に残ってもらった。


「ぐぁああああ……つっかれたぁ……」


 響は床に寝転び、足を大の字に広げる。短めのスカートの中身まで大公開のとんでもない姿だ。


「見えてるぞ」


「見せパンだから良いんだって」 


 だらしない響の隣に世莉架が座り、無言で足を閉じさせた。


「ナイスだ、世莉架」


 世莉架は無言でサムズアップをしてくる。


 響が顕著だが他の人も疲れている。さっさと話を終わらせないと皆も限界そうだ。


「実はな、営業中にテレビ局の偉い人が来たんだ。アイドルグループのオーディション番組を企画してるらしい。そこに呼ばれたんだ」


 響が上体を起こして「マジで!?」と大声を出す。他のメンバーもいきなりの話に面食らいつつも、疲れを二の次に出来るくらいには良い話題だったようだ。


「ま、番組のコンセプト的には地下アイドルVS元人気アイドルっていう構図でやりたいみたいでな。そこだけ心配してるんだ」


「我々のような地下アイドル組は当て馬じゃないか? ということですね」


 茉美は相変わらず俺の意図を汲むのが早い。


「そういうこと。人気が下火になってきたアイドルを復活させるため、いい感じに引き立て役にさせられて、ポイ、っていうのもあり得る話だな。悪編されて印象が悪くなるリスクだってある」


「悪編?」


 卯月が首を傾げる。


「意図的に印象を下げるような演出をするってこと。目立たせたい人がいたらこっちを悪者にしちゃえばいいわけで」


「まぁ、そう言う意味だとヒールにされそうだよねぇ。私達は。エトワールのコンセプトは『反逆する使用人』。キラキラ、カラフル、みたいな光の当たり方はしないよねぇ」


 響が床に胡坐をかいて座り、うんうんと頷きながら話す。


「逆に言えば扱いやすくていいんじゃね? 少々の悪編じゃ影響ないってことだろ?」


 虎子は特に不安を感じていないようだ。


「まぁ……前向きに考えるならそうだな。もう一個懸念点があってさ……アヤが出るかもしれないらしいんだわ」


 全員が目を見開く。最初に反応したのは響。


「なら出ようよ! 新旧の教え子で戦って倒すチャンスってことでしょ!?」


「黒子さんの敵討ちをしないとだよね」


「……仇討ち」


「倍返しです!」


「やっちまおうぜ!」


 薄っすらとだが事情を知っている5人が俄然いきり立つ。


「お前らなぁ……まだ決まったわけじゃ――」


「ゴールは3つかな? オーディションで勝ち残る、勝ち残れなくても爪痕を残す。そして、アヤをぶっ倒す!」


 響が立ち上がり、拳を突き上げると全員がそこに集う。


「だから――うわっ!」


 響を中心とした集団が俺の方へやってきて囲むように立った。


「そういうわけで、これからもご指導よろしくね。御主人様」


 卯月が可愛く顔を傾げながらそんなお願いをしてきたのだった。

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