【恋の短文シリーズ】NTR魔法大女、怒りのアレ

クマとシオマネキ

魔法大女 対 犬怪人シバワン① 世紀の対決が始まらない

 カッカッカッカッ


 ブーツのヒールの音を鳴らしながら詰め寄る。

 音を鳴らしているのはフリフリ、なおかつスク水素材のような、それでいて光沢のある生地にムチッ!ギチッ!と包まれた衣装を着た、30手前の大人の女。


 そして相対するのは…頭が柴犬、人のように2つ足で立っている犬の怪人。

 つぶらな瞳で女を見ていた。


 大都会、東京…繁華街の外れ。

 暗がりでは何が起きているか分からない。

 例えば怪人と魔法アレが…


「フフフ、アンタ達さ、もういい加減諦めなよ。いや、諦めては駄目だね、私のために…頑張れ!」


 支離滅裂な発言…彼女の名前は沖田 蝶子。

 変身するヒロイン、魔法のアレ、誰が呼んだかその名は…


魔法大女マホウダイジョ…カンチョーハイ】


 大人の女、そんな大人が子供が着るような魔法少女の格好をしている為、やたら際どいカンチョーハイ。

 その名に本人の意志は無く、周りが付けた…その奇行故の渾名。


 太っている訳では無いが、些かサイズが合ってない為、ギチギチいわせながら犬怪人に手を伸ばす。


「クゥーン」


 怪人は鳴いた、気弱な柴犬が悪の組織によって怪人になった。

 しかし、このイカれた格好の女に既に追い詰められていた。

 

 少し前、ぴっちりしたグローブで石を握った。

 そして、アルコール5%のお酒の缶を握り潰した。

 石が砂になり、缶がパチンコ玉のようになった…それを見た犬の怪人、シバワンは一瞬で敗北を覚悟した。


 これからスタートする地獄を、シバワンも、そして最も地獄に堕ちるカンチョーハイも気付いていなかった。


 手を伸ばしている途中で、手が止まった…女の目線が激しく泳いだ後、潤んだ。


「せ、セイヤ!?セイヤ…なんで!?セイヤ!?その…おんなわぁ!?」


 セイヤセイヤと祭りのお囃子の如く繰り返す、魔法大女★カンチョーハイにシバワンは混乱した。


「クゥーン」


 カンチョーハイの目線の先、そこにはスーツを着た20歳前後の男、そして同じ年頃のスーツの女。


「今は付き合えないけど…仕事が忙しいから誰かと付き合えないけどって…付き合えないけどって…セイヤ!?セイヤ!?ハァハァ…アレ…アレ入れないと…」


 ガサゴソ…ガサゴソ…プシュー


 カンチョーハイが近くにあるバックに何個か入っている、アルコール13%の缶酎ハイを取り出しプルタブを開けた。


 口元に缶の飲み口を近付ける…その手は震えていた。

 

「んはぉ!ンゴク!セイッンゴク!セィォァンォ…ごくごくごく…セイヤォ…」


 口端から漏れるアルコール13%…並の人間であれば急性アルコール中毒待ったなし、倒れんばかりの勢いで3本を一気に煽った。

 その間も目は真っ直ぐ、スーツ姿のカップルを見る…その目からは涙が溢れ出ていた。カンチョーハイは泣いていた。


 そして、シバワンも哭いた。


「クゥーン」


 アルコールは彼女を強くする訳では無い、弱い心を逃がす為に飲む。

 しかし、眼の前の現実がそれを許さなかった。


 最早、カンチョーハイは飲めていなかった、缶酎ハイを。

 コスチュームにタバダバと垂れ、元々スクール水着のような素材であったコスチュームがピッタリ張り付いた、哀れな変態…もとい魔法大女…


「ウソだ!セイヤは言った!君しか見えないって言った!私だけのハズだよ?わた…わた…わたた…」


 視界の先、男と女がキスをした…笑いながら、照れながら…


 その時はな?というセイヤの声が聞こえてきそうな見苦しい発言と状況。

 そして魔法大女の本領が発揮された。

 

 あまりの事に足が震えて過ぎて、汗とアルコールによりビッタリとしたサイハイブーツのヒールが折れた。

 そして…


   グーグルルー…ギュルルルルル〜


 蝶子…こと、ストロング★カンチョーハイ。

 彼女の腹はアルコールで下す。

 そこからくるカンチョーという単語…


 無論、彼女も3%の500ミリを1〜2本程度なら問題無い。

 しかし戦闘開始から、酔拳でも使う勢いで飲み続けていた。

 3%の500ミリ4本、13%の500ミリ5本、小判鮫に飲ませるが如く垂れ流していたが、それでもその量は4リットル近い…

 

 彼女のコスチュームの腹回りの衣装の横っ腹の部分に編み上げされている箇所があるが、紐が伸び切っていた。

 前から見るとぴっちりし過ぎでヘソの位置が丸分かり、太っている訳ではない。明らかに飲み過ぎだ。


 お腹を抱えながらありとあらゆる便意を堪える。


「騙したな!犬!」


 意味不明な言いがかりにシバワンは応えた。


「ワンッ!」

「うぉっ!?うわぁ!?」


 いきなり吼えられてビビり、前のめりから少し後ずさった。

 しかし、それが良くなかった。

 ヒールの取れたブーツは支えを失い、後ろでんぐり返しのようにコロンと転がった。


 その後ろにあったのは大きめのバケツ。

 路地裏…そこにはゴミ捨て場があった。


 そこにケツをカポッとはまる…大人の女らしからぬ、簡易トイレの出来上がりだった。


「クゥ~ン」


「あ!あ!でちゃう!駄目!出ちゃ…あ?!」


 異様に上がった彼女の視力、ライフルのスコープの如く狙うその先、件のスーツの大人のカップルはホテル街に入っていった。


「セイヤ!待ってよセイヤ!嘘って言ってぇ!セイヤァアッ!!アアアアアアアア!?魔力がぁ!エネルギーでちゃううううううう!!!」


 彼女は、魔力やエネルギーとは何も関係無いただの排泄物を出した。


「クゥン?」


 その時、シバワンの鼻に異変が起きた。

 魔法大女…果たしてどうなってしまうのか!?

  

 


 



 


 

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