デートでサイゼリアに行こうとしたら、ありえないとふられた僕は結婚相談所で八尺様を名乗る和風美人を紹介され、溺愛されました。田舎で妖怪たちとのんびりスローライフを送ることにしました。
白鷺雨月
第1話サイゼリアなんてありえない
僕の名は
彼女の名は
どもりながら言葉を発する僕をその大きな瞳でみつめ、暇だから行ってあげてもいいわよと彼女は言ってくれた。
僕のようないわゆるオタクが社内でも有名な美人とデートにでかけることができるなんて、夢のようだった。
繁華街の最寄り駅で待ち合わせし、僕たちは食事にでかけた。
僕が美彩季さんと行くと決めた店はサイゼリアであった。僕が一番好きなレストランだ。大学生のとき、オタク友だちとコミケの帰りによく立ちよったものだ。安くて、美味しくて、しかも本格的なイタリアンが食べられる。
「ありえないんだけど」
急に立ち止まり、美彩季さんは怒りだした。
綺麗なだけにその怒っている顔はかなり怖い。
「えっ……」
僕はわかりやすいほど、絶句していた。
ここは僕が一番好きなレストランなんだけど。
「私ね、これでもあんたなんかのためにメイクして、ちゃんと服も選んできたのよ。女はね、デートの用意にお金をちゃんとかけてるのよ。それをサイゼリアですって。本当にありえないわ」
美彩季さんは吐き捨てるようにそう言った。
「いい里中君。あんたの服は何。そんなよれよれのデニムなんかはいてきて。時計はどこのメーカーなの。見たこともないわ。それに髪の毛も伸びすぎ、かなり不潔よ。歩いているときに歩幅もあわせられないし、会話も続けられない。たまたま暇だから来てあげたけど、あんたありえないわ。私、帰る」
ぷいっと背中を向けて美彩季さんは帰っていってしまった。
まくし立てるように文句を言われた僕はただただ呆然とした。
翌日、僕は女子社員たちが休憩室で話しているのを聞いてしまった。
「美彩季さん、キモナカとでかけたって本当ですか?」
この声は鈴木里江だ。一応僕の同期である。
僕の名前は里中であって決してキモナカではない。
「うん、まあね。あれは私の黒歴史だわ。あいつがどうしてもって言うから、いってあげたらどこに誘ったと思う」
ため息混じりに美彩季さんは言った。
「えーどこですか?」
「なんとサイゼリアよ。本当にないわ」
「美彩季さんをサイゼリアに。わーないわ。ないわそれは」
「でしょう。それにあいつ清潔感もないし、気もきかないし。あんなのと一秒でも一緒にいたかと思ったら、もう吐きそう」
そこでわざとらしく美彩季さんはおえっと吐くような真似をした。
その様子を鈴木里江は笑いながら、見ていた。
その日、憧れの女性に完全に嫌われた僕はフラフラと街中を歩いていた。
そこでとある看板を見つけた。
一ノ瀬結婚相談所と看板に書かれていた。
雑居ビルの三階にその結婚相談所は入っているようだ。
こんなところに結婚相談所なんかあったっけ?
僕はその看板を見つめていると目の細い男性が僕に声をかけてきた。
その男性はどことなく、狐のような顔をしていた
「ようこそ、一ノ瀬結婚相談所へ。私は所長の一ノ
その一ノ瀬狐二郎の言葉には不思議な魅力があった。
僕は初対面のその一ノ瀬という男の後について、雑居ビルに入った。
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