第三章(異世界転生編) 2024/12 プロローグ追加チェックしてね
◆第三章① 禁呪
ダンケルとグレースは『棺の間』に戻って来た。ダンケルはサイクロプスから奪い取った『魔法の鍵』の圧縮を解除し、元の大きさに戻す。石造りの棺の鍵穴と、魔法の鍵が共鳴するかのように、放射状の光を発した。ダンケルは巨大な魔法の鍵を棺に差し込む。
棺全体がぼやっとした光を帯び、棺の蓋の隙間から青白い光の筋が漏れた。遂に棺の蓋が開けられる。ダンケルは歯を見せてニヤリと笑う。
ズズズズズズ…………
ダンケルは重たい石造りの棺の蓋をずらしていく。そこには鞘に入った剣……らしきものがある。灰を被り、ボロボロとした質感の剣の形をしたものだ。
ここに何百年封印されていたのだろう? 悠久の年月を感じる様相だ。
ダンケルは灰を掃って鞘から抜こうとするが、硬くて抜けない。「ズズッ」と数センチだけずれる。魔法で封印が施されているわけではない。封印は石造りの棺の方にされていた。二重でする必要もなかったはず。単純な話だ。錆び付いているのだ。ダンケルはあからさまに不機嫌な顔になった。
一瞬、剣が怪しげな黒い焔のようなオーラを発したが、すぐに消えた。錆び付いた状態では、いくら『伝説の魔剣』と言えど、魔力を発揮し切れないようだ。
「チッ……ここまで来て、ガッカリさせやがって……」
「……でも、その錆を落とせたら剣も魔力を取り戻すと思います。私には、この剣が魔力を放っているのがハッキリ見えていました」
グレースがフォローするように言った。
「そうだな……折角手に入れたんだから、ドワーフに修復させよう。……もう、ここには用はない。出るぞ」
「……はい」
グレースはホッとして、糸が切れたように倒れていく。ダンケルが先に進もうとしたところで、後ろから「ドサッ」という音が響いた。グレースは、目・鼻・口から血を流して倒れている。
「何ィッ⁉ グレース‼ ……クソッ……遂に限界が来たか……」
ダンケルはグレースを抱きかかえ、歯軋りをした。
一方、『棺の間』に通じる横穴の外、『柱と階段の間』では、トーマスが持ってきた6本の杖が、直径5メートル程の領域に六芒星を描くように刺されていて、その中心にザハールがいる。元々圧縮されて運ばれていたものが元の大きさに戻っていて、杖は全て150センチ程の長さがある。ザハールの身長より長い。
ザハールは、全ての魔物の死骸と、サイクロプスに殺された3人の盗賊団員の遺体を変形圧縮して、空中に浮かべていた。周囲には、大小様々な〈球体と化した肉塊〉が6つ浮かび、円を描くように回っている。最も大きいサイクロプスの肉塊は人の頭蓋骨ほどの大きさだが、これでもかなり小さくした方だ。
ザハールは、先に回収して『蛇の杖』に飲み込ませた〈5人の遺体の肉塊〉を吐き戻させる。蛇の杖は「ウェッ」と、5人の肉塊を吐き戻した。そして次に、大きなサイクロプスの肉塊と中くらいのトロールの赤と緑の肉塊を、蛇の杖に飲み込ませた。
「ひぇっひぇっひぇっ……さてさてさて……では始めるとするか……」
ザハールの周囲に、殺された8人の
「灰色の暗闇……虚無の拍動……暗黒の地響き……
バリバリバリッ‼ と、6本の杖の先から赤紫色の電光が迸り、六芒星を描くように連なる。「ボゥッ」と、杖の突き刺さった地面に、赤紫色に光る六芒星と不思議な紋様が描かれた魔法陣が浮かび上がった。
「
ザハールは、蛇の杖を両手で高く掲げる。
「アニマ・カプトゥラ‼」
そう叫んで、蛇の杖を一気に振り下ろし、「ドッ」と、地面に突き立てた。
バリバリバリバリバリバリッ‼
6本の杖から放たれた赤紫の電光が、三次元的な網となって『柱と階段の間』の空間全体に迸る。殺された8人の盗賊団員それぞれが死んだ地点の上空に紫色の光の球体が現れ、一瞬、彼ら8人の姿となって浮かび上がり、勢いよく自身の〈遺体の肉塊〉の球体に吸い込まれていく。「バチバチッ‼」と、それぞれの球体に網目のように小さな電光が迸る。
ザハールは禁じられた呪法=禁呪『アニマ・カプトゥラ』で、死んだ8人の『魂』を捕縛したのだ。これは蘇生魔法とはまるで性質が違う。捕縛された魂は、ザハールの意のままに扱われる事を意味していた。
「ひぇっひぇっひぇっひぇっひぇっ……これで『造骸』が捗る……‼」
そのタイミングで『棺の間』のある横穴から、ダンケルがグレースを横抱きで抱きかかえて出て来た。
「……おやおや……、グレース様はお倒れになられてしまいましたか……」
「一旦、テントまで戻って治療するぞ。その間に、お前はこの遺跡に残った魔物を一掃しておけ。その後に魔法技師を入れて、この遺跡をアジトに改築する」
「ははぁっ! ダンケル様の仰せのままに……‼」
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