◆第一章⑦ レイリアの魂

 推定時刻 11:58 AM


 上空から、ブラダと倒れたレイリアを見つめる者がいた。


「あれ……? 何だろう? ブラダ……とボク? ……どうしてボクは空から自分とブラダを見下ろしてるんだろう……⁇ あれ? なんか体が何か透けてるし、光ってる? ……もしかして、ボク……死んじゃった?」


 青白く透き通ったレイリアの魂は、倒れた自身の肉体の真上に浮かび、見下ろしていた。レイリアの魂はまだかろうじて肉体と繋がっていた。


 ここでブラダが魂を呼び戻す蘇生魔法『へレイヴン』を使用できていれば、レイリアの抜け出した魂は、元の肉体に戻ったかも知れない。


 しかしそれほどの高等な蘇生魔法をブラダには使う事ができなかった。


 抜け出した魂を呼び戻さない限り、真の蘇生とは言えないのだ。


 とはいえ、完全に肉体が回復していれば、近くにいる魂はすぐに戻って来れるはずだった。まるで肉体の方がそれを拒否するかのように、レイリアの魂は元に戻る事ができずにいた。


 ゴトッ……ゴトゴトゴト……


 突然振動が起き、遺跡に張り巡らされた木の枝や蔦に引っかかっていた岩石が落ちてきた。ブラダは驚き、周囲を見渡す。


「レ、レイリア……アミナ・エスクード‼」


 ブラダはレイリアに覆い被さり、防御シールド魔法を使用した。〈ハニカム構造で全体が湾曲した、青紫色に光り輝く魔法の盾〉が張り出され、ブラダ自身とレイリアを護る。


 さらに、アルルがブラダに重なるようにブラダの背中に立ち、「ンー! ンー!」と唸った。アルルのフワフワボディーは衝撃を吸収し、物体を弾き飛ばす事ができる。


 いくつか、落ちてきた細かい小石や岩石をアルルが弾き飛ばしてくれる。


 ゴトゴトゴト……と、岩石が落ち続けている。


 カッ! と、突如、遺跡全体に彫られていた『溝』から蒼白い光が発せられた。水が溝に浸透していくように、徐々に範囲を広げる。ゴゴゴゴゴゴゴ……と遺跡全体が唸りをあげ、蒼白い光が溝という溝から発生して、周囲を照らす。


「な……何……? 何なの……?」


 ブラダは立ち上がり、ほんの数歩、レイリアから離れた。


 アルルは飛び跳ねて、レイリアに覆い被さる。


 ブラダは遺跡の内壁全体を見渡し、天井を見上げた。得も言われぬ不安感を感じ、ブラダは掌を天井に向ける。


 バリバリバリ……‼ と、静電気が発生して、周囲の電位が上昇していく。


 


 三日月遺跡の外では、急激に雨雲が集まり、空が曇り始めていた。


 ゴロゴロゴロ……と雷が鳴り響く。


 


 刹那。


 


 ドォーンッ‼ 


 


 天井の穴を突き抜けて、雷がレイリアとアルルに直撃した。


 ブラダは衝撃で吹き飛ばされた。


 


 中空に浮くレイリアの魂は、黄金色の光に包まれ輝き始めた。


「あれ? ……ボク……ボクは……?」


 レイリアの魂から、放射状の光が放たれた。彼女は何かに気付き、目を見開いた。


「……あ、そうだった……ボク……じゃない……元々私。……私は……」

 

 

 

               第一章 終

 

 

 

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