◆プロローグ / 序文
~プロローグ 全滅~
それは宝石のように美しい蒼碧色に輝く瞳だった。
徐々に光を失い、虚ろになっていく。
土煙が舞い、視界が遮られる。耳鳴りがして何も聴こえない。
静寂の中、スローモーションのようにゆっくりと、様々な物体が空中を舞っている。
いや、正確には吹き飛ばされている。
岩石や木片、破壊された剣や鎧、馬や人の一部とわかる肉片、手足や頭部……。
蒼碧色の美しい瞳は、残酷な惨劇を映し出していた。
立ち尽くすのは、雪のように純白に輝く髪色で、透き通るように薄く白い肌の、少し耳が尖った美少女・レイリア。
美しい雪白色の髪の内側は蒼みがかっていて、顔を包み込む程度の長さだ。
レイリアの目は虚ろで視界もぼやけている。かろうじて立ってはいるが、意識は薄れゆく。何が起きたのか、彼女には、はっきりと分からなかった。
ただ、実際に感じているより経過した時間は短い。まるで時が止まる直前のように周囲のものがゆっくりと動いて見える。
耳鳴りは続いている。口から泡立った血が溢れ出す。
レイリアの弟分の少年・テオが、数メートル先で倒れている。
テオは薄れゆく意識の中でレイリアの腹部に空いた大きな風穴を目の当たりにした。
彼女の腹部は、大きく抉られている。肋骨が露出し、千切れた肉片が垂れ下がっている。装具ごと吹き飛び、肋骨どころか背骨が見えている状態で、今にも心臓が落ちそうな状況に見えた。傷口は焼かれ、出血は少なく見える。
ほんの数秒前、空に複数の星のような光が見えた。刹那、爆風に吹き飛ばされたのだ。
テオは倒れたままレイリアを見つめ続ける。次第に視界がぼやけ、プツンと意識を失う。
一瞬の閃光だったが、レイリアは瞬時に脅威を察し、多重の魔法防壁を展開し、自身の『
レイリアの腹部に風穴が空き、膝を突き、倒れるまでの時間はコンマ数秒に過ぎない。
ドクン……ドクン……ドクン……
剥き出しの心臓が脈打つ。
失われた臓器は、回復魔法でも回復が不可能だ。
レイリアは心の中で呟いた。
「あぁ、『俺』はこの世界でも死ぬのか……」
彼女の精神は、少女ではなかった。
「なるほど……これが死の間際にゆっくりと時間が流れるってやつか……」
そんな事も数十分の1秒の中で思いつつ、命が尽きかけ、意識が薄れゆく中、
* * *
~序 ジーレンベルトと魔神器~
ここは魂が集う世界【ジーレンベルト】――。
地球圏の全生物の魂がここに集まる。
人間も動物も、命を失えば全て、この世界=ジーレンベルトに魂が還るのだ。
空には6つの月があり、世界の中心には【世界樹】がある。
魂は雷に乗って世界樹に還元されると云う。
遥か遠い昔、神々と魔王が戦い争ったという伝説がジーレンベルトで語り継がれている。
かつて、魔王が〈星〉のエネルギーを丸ごと喰らう巨大な『怪物』を召喚した。
そのあまりにも巨大で長い『蛇』のような怪物は、【ウロボロス】と呼ばれた。
ウロボロスは、頭から尾まで円環状に〈星〉を一周して世界を覆い尽くした。
ウロボロスが〈星〉のエネルギーを吸い尽くそうとした時、世界の中心で人々の魂が集まり、神々を産み出した。
神々は、ウロボロスを滅し、魔王を倒した。
しかし、人類はその争いに巻き込まれ、幾つもの文明が滅びた。
神々と魔王の戦いは、〈地殻津波〉を巻き起こすほどの激しさで、地上の〈一部〉は樹皮が剥がれるようにめくれ上がった。
めくれ上がった大地は魔力を帯びて浮き上がり、【天上界】と呼ばれた。
そして、その下に在る日の当たらない大地=【魔界】に分断された。
戦いの残骸は、魔力を帯びて浮遊する岩=【浮遊岩】と成って各地に残った。
さらに戦いの後、空に浮かぶ最も巨大な月=【巨月のオヴム】が産み出された。
そして、ウロボロスの残骸は大地に残り、一部は大地そのものと成った。そして、地底の奥深くに魔物の根源が生み出された――と言い伝えられている。
倒された『魔王の魂』は〈16〉に分割された。そして、〈魔道具〉や〈魔霊石〉に封印され、【
しかし人類にとって『魔王の魂』は畏怖の対象である。
いつしか人々に『呪いのアイテム』として認識され、忌み嫌われ、
ところが、ある時期から
今では魔王の魂が強力な『魔法のアイテム』として追い求められるようになったのだ。
この物語は、魔王の魂が封印された
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