【優秀賞受賞】じつは義妹じゃなくて彼女でした。

ハンくん

プロローグ

 夏休みも終盤になったとある晩のこと、俺──真嶋まじま涼太りょうたは部屋で漫画を読んでいた。


「っと、涼太動かないでよ! 脚痺れるのは分かるけど、僕も脚痛いんだから!」


「じゃぁ降りんかい!」


 漫画を読んでいるのは俺一人ではない。俺の一個下、高校一年生のあきらと一緒にだ。

 先ほど、俺が漫画を読もうとベットの上であぐらを組んで座ったところ、晶が「ここは僕の席」と言わんばかりのドヤ顔で俺の顎下に入り込んできて座り、密着してきたので一緒に漫画を読むことにした。

 そのことに俺がちょっと文句を言うと晶は、「そりゃ好きな人とは近くにいたいし、一緒に娯楽を味わいたいじゃん?」とのこと。

 そんなこと言われたら流石に俺も何も言えない。


「ふぅ。面白かった〜!」


「よし、じゃあ降りてくれ」


「やだ。もうちょっとこうしていたい」


「それは山々なんだが俺の脚が痺れてもう限界なんだって──」


「ちょっ涼太! うわっ!」


 俺が急に立ちあがろうとしたせいで、晶と二人でバランスを崩しベットに倒れた。


「あっ、悪いっ!」


「もう! 立つなら立つって言ってよ!」


「すまん、脚が痛すぎて……」


「ごめんって思ってるならさ……今晩一緒に寝てくれるよね……?」


「なんでそうなる!?」


「いいじゃん。僕たち……なんだし!」


 そう、俺たちはカップルなのだ。

 それを聞いた人は次にこう思うはず。何で高校生なのに一緒に住んでいるのか?

 それは、俺と晶がカップルであると同時に、でもあるからだ。


「いや、でもなぁ……」


「涼太は心配性だなぁ。『きょうだい』で寝てるってことにすれば母さんたちにも怪しく思われないよ」


「いやいや、この歳にもなって『きょうだい』で寝るのか……?」


「じゃあ、『カノジョ』として……寝る?」


「その方がダメだ!」


「むぅ〜。涼太のけちー!」


 すると晶はベットで脚をジタバタしながら頬をプクーッと膨らませる。

 こういうところ、可愛いんだよなぁ。


「分かったよ。親父と美由貴みゆきさんがいない時に……一緒に寝るか」


 というのと同時に、階段の下から声が響いた。


「晶〜! 涼太く〜ん! ご飯の準備出来たわよ〜!」


 晶のお母さん──美由貴さんが俺たちを呼んだ。


「ほら晶、ご飯出来たってよ」


「ちぇっ〜、じゃあ今日は許してあげる。でも、言質は取ったからね! !」


 になった晶は、悪戯っぽい笑顔で俺を見た。



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