【連載版】異世界転生ものが大っ嫌いな俺が、異世界転生をしてしまった件~今すぐ元の世界へ帰りたい俺ですが、美形すぎる顔のせいでド変態女どもが群がり俺を元の世界へ帰さないよう邪魔をしてきます~

大豆あずき。

第1話

 俺は異世界転生ものが嫌いだ。


 web小説で主人公がどんな風に人生を語られているか知ってるか?


 高々、数行だぞ数行。


 余りに人生の描写が少ない、中身の無さ過ぎる人生だ。


 もっと描写するところがあるだろ描写するところが。


 高校生だとしても16~18年は生きているんだ。結構生きている。沢山描写するところがあるはずだ。


 たったの数行で人生を片付けられているだなんて主人公の扱い酷過ぎるだろ。


 そして何より、大半の主人公が現実の世界で上手く人生を歩めていない、現実逃避をしている奴ばかりが異世界に転生している。


 おかしいだろ?


 普通、現実の世界で頑張って向き合っているやつが異世界に転生するべきだ。


 だって、頑張って一生懸命に生きたのだから。ファンタジーの世界に転生して無双する権利はあっても良いと俺は思う。


 なのに、どうしてだ?


 どうして、異世界に転生する主人公どもはこうも一生懸命に生きていない奴ばかりなんだ。


 逆に「異世界でなら人生をやり直せる! 頑張れるかもしれない!」……とほざいていやがる……。


 ふざけるなっ!


 何が異世界でならって何だ! 異世界でならって!


 現実世界でも頑張れよ! 


 やり直さなくてもいいくらい毎日懸命に生きてみせろよ!


 もっと抗えよ!


 現実世界に見切りつけて諦めてんじゃねぇぞ!


 だから俺は異世界転生ものが大っ嫌いだっ!!


 はぁ…何か久々に怒りをぶつけたから疲れて来た。怒るって結構体力を使うんだな。


 で、話は変わるが


 アンチ異世界転生ものを唱えている俺の自己紹介をしよう。


 俺の名前は 水止みずとめ さい 15歳の高校一年生だ。


 女みたいな名前だが俺は一応男だ。


 一応と言うのも、自分では余り良く分からないが、俺は女みたいな顔をしているらしい。俗に言う…女男というやつだ。


 それが理由で、俺は同級生の男と女どもに頭から牛乳をかけられたり、全身を殴られたり、いじめられてきたんだけども……中学に上がってからはピタリといじめが無くなった。


 それどころか、人気者となり女からモテ始めた。


 とても気持ち悪い……そう思った。


 今まで散々、俺のことを肉体的にも精神的にも傷つけて来た奴らが急に手の平返しをしてきたのだ。


 明らかに裏があると俺が不信に思うのは当然だ。


 だが、どうやら本当に俺は人気者としてのレッテルを貼られていると知った。


 だけど…本当の人気者だとしても、俺は自分の表面的な部分にしか魅力を感じない、信用できない奴らとは一切関わりたくなかった。


 だから俺は一人で孤立することを選んだ。


 一人は寂しくない。


 俺には両親と姉がいる……本当の孤独ではない。


 学校でぼっちになることなんて平気だ。


 でも、いつまでも一人でいることは、社会不適合者になりマズいと思った俺は、高校ではしっかり交流をしてみようと思った。


 しかし……その矢先、高校を入学した初日にまさかこんな目に遭うとは思いもしなかった。


 俺は高校の入学式を終えて電車で帰ろうと駅のホームで待っていたら、知らない女に告白…いや、脅迫をされた。


 どういうことなのかというと、自分の告白を受け入れないのなら、駅のホームから飛び降りるなどと、頭のイカれたおかしいなことを言って来たのだ。


 勿論俺は、この女が本当に死ぬ覚悟が無いと思い、告白を断った。


 瞬間、この女は本当に飛び降りた。


 しかも、電車が来たタイミングで。


 俺は無意識のままこの女を助けようと手を伸ばすと女は俺の手を掴んだ。


 俺は何とか助けることができたと確信した。


 そう安堵した瞬間―――


「ふふ……」


「っ!?」


 この女は薄気味悪い笑みを浮かべて、俺の手を引っ張り自分の方へ引き寄せたのだ。


 そうすると…どうなると思う?


 当然、その答えは


「おぎゃあ……おぎゃあ」


 ―――異世界に転生することになる。

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