第32話 魔力レインエリクサーゴット回復ポーション水

昨晩の大雨のおかげで水槽にかなりの雨水が溜まったので売る準備をする事に。


「これ、星奏に大きめの鍋を買ってきてもらうべきだったね」

「1回1回の火にかける量が溜まっている雨水の量と比べると…買ってきて貰うべきだったな」


今は雨水に火をかけて熱でゾンビウイルス以外を殺菌する作業をしている。


「おーいたくさんの試験管と試験管の蓋ふたを買ってきたぞ。かなり安くて助かった」

「ちょっと星奏、もう1回リサイクルショップに行って大きめの鍋買ってきてくれない?量が多くて多くて」

「その分は明日やればいいだろ。今日の売り上げで続けるかを考えればいいだけだろ」

「星奏、お前ってもしかして経営上手?」

「いや、普通に考えれば分かるだろ」


そうすれば無駄金を無くす事ができるじゃないか。


「じゃあ星奏はこのバケツに溜まっている水を試験管に入れてくれ。ちゃんと蓋も付けろよ」

「それぐらい分かっとるわ」


これが分担作業か。誰かと仕事を分担する事が俺にあるなんて。


「早く電気を使えるようにならないかな」

「雫、仕事はね手作業でやるからいいんだよ。俺は手作業でやる仕事に喜びを感じ始めた」

「お前…本当に竜か?」


仕事、最高。仕事、最高。仕事、最高!


「汗水垂らして稼いだお金で食べるご飯…きっと美味しいんだろうな」

「今までもそいうのをやってきてたよね?」


…はっ!俺は一体何を?仕事に喜びを感じていたような。


「これで一旦終わりっと」


俺と雫は温めて冷まし終わった雨水をバケツの中に入れる。


「星奏、その量だとあとどれくらいの試験管に入りそうだ?」

「あと30本程度だな」

「じゃあ私達もやるよ」

「もちろんだ」

俺と雫はバケツを囲む様に座り星奏の近くにあった試験管を手に取り試験管の中にバケツの中の水を入れる。



「これで完成か」

「そうだな」


俺達は試験管の中になんか色々した雨水を入れ終わり床に座り込む。


「めんどくさかったな。早く電気を使えるようになって機械にやらせたい作業だった」

「さっきのやる気に満ちた竜はどこに行ったんだ?」


さっきの俺は仕事に喜びを感じていただけだからな。



「営業許可証貰ってきたよー」


雫がまたジャンケンで誰が星奏の親父さんの所に行くかを決めようと言ってきたので星奏と2人で負かしてやり取り行かせた。

今ちょうど戻ってきたようだ。


「よくやったな」

「これは大変だったよ。売るものは人体に悪影響を与えない物かとかしつこく聞かれたけど星奏を犠牲にして安全を確認出来たって言ったら星奏のお父さんがすごく驚いた顔をしてたよ」


人体実験なんて前はしてはいけなかったからな。

今は法律に全然詳しくない人が法律を作ってるから法律の抜け道なんて山ほどあるから大丈夫だけど。


「ところで竜、どうやって私達を隠す?前やった路上ライブのせいで私達の事をよく思っていないやつもたくさんいる中でどうやってそれを売るつもりなんだ?」

「雫が営業許可証を取りに行って待ってる最中に俺がどこかに行ったのを覚えているか?」

「いや、知らない。多分その時はトイレに行ってた」


ちょっとかっこつけようとするといつもこれだよ。

神様は俺にかっこつけてはいけない呪いにでもかけているのだろうか?


「多分その時にリサイクルショップに行ってこれを買ってきた」


そう言って俺はリビングのテーブルの上に置いてあるキツネとタヌキとネコのお面を指さす。


「これをつけて全員の声を変えれば大丈夫だろ」

「お前、外に出てる時に何も言われなかったのか?」


俺が外に出た時?…


「何も言われなかったし何もされなかった。もしかして皆、もう俺達の事を忘れてんのか?」

「多分」

「竜、人ってねどうでもいい事はすぐに忘れるの。あの時は投げ銭をしたから怒り狂ってたけど。その投げ銭って私達は1円も取ってないでしょ?取り返せたからどうでも良くなったんじゃない?」


なんかショック。いや、いい事なんだけどね。

炎上したのにもう忘れられてる感がすごい。


「声は変えなくてもいいけどお面は着けおこう。万が一あの時の事を思い出して騒がれたら商売にならないからな」


星奏、ナイスフォロー。

俺の有り金全部はたいたのが無駄になるとこだったぜ。


「そういえば商品名決めてなかったね」

「商品名は魔力ポーションだな」

「いやポーションを使うならマジックポーションだろ」


どうでもいいわそんな事。


「ここはもっと強そうな感じでエリクサーとか」

「全回復はしないから却下」

「やっぱり日本人だから漢字を使え漢字を。魔力回復水で十分だ」

「ゴットポーション」

「そんな大層なものじゃないだろ」


俺以外全員厨二病かよ。


「ここは主人公に表面上はなった俺が決めるぜ。雨から作ったって事でレインポーションとかはどうだ?」

「どこが主人公だバカか?ここは結婚式で助けられるというヒロインがされそうな展開があった私が決めてやる」

「いや、能力的に1番日頃から皆に貢献してる私が」


商品名の議論は1時間以上はかかった。



「魔力レインエリクサーゴット回復ポーション水はいかがすっか」

「魔力レインエリクサーゴット回復ポーション水はどうですか?」

「魔力レインエリクサーゴット回復ポーション水は魔力を回復できますよ。お試しでどうですか?」


俺達は路上でシートを敷き俺はキツネの星奏はタヌキの雫はネコのお面をつけてこの魔力レインエリクサーゴット回復ポーション水を売っている。


(なんか道行く人々が可哀想な眼差しで俺らを見るんだけど)

(こんな名前の水を売ってるからだろ)


なんでこんな名前になったのだろう。


「そこの人どうですか?今なら試験管半分をお試しで飲めますよ。魔法使用許可証も貰ってきたのでこのビニール袋に水魔法でも出して魔力を減らしてから飲んでみてくださいよ」


魔力を減らさないといけないことを思い出したので雫に急いで取りに行かせた。

だってあいつまたジャンケンで俺達に負けたしな。


「あっ竜さん達じゃないっすか。そんなお面をつけてどうしたんすか?」


有輝はこの町に来ていたようだ。


「有輝、助けてくれこの魔力レインエリクサーゴット回復ポーション水の性能を知って欲しいのに全然皆、飲んでくれないんだ」

「なんすかそのダサいネーミングは?多分ネーミングが悪すぎるだけっすよ。魔力水とかでいいんじゃないっすか?ていうこれってどういうものなんすか?」


有輝、ありがとう。お前のおかげで商品名が決まった。


「魔力が回復するやつだ」

「それめっちゃいいっすね。僕も欲しいっす。僕にお試しさせてくだいっす。竜さん達には返しきれない恩がありますからねちょっとぐらい竜さん達の商売を手伝わせてくださいっす」


有輝…お前ってやつは…なんて良い奴なんだ。

あの2人もちょっとは有輝を習って欲しいところだ。

有輝の足が急に筋肉質になるが一瞬で元通りに戻り魔力水を飲む。

多分能力を使って魔力を消費させたのだろう。

でも本当に有輝みたいな魔力が元からかなりある奴にもいるのだろうか。


「じゃあいいだきますっす」


有輝が魔力水を飲む。


「本当に魔力が回復したっす。魔力の上限は超えれないそうっすね」


有輝…俺達ですら知らなかった事まで教えてくれるなんてなんて良い奴なんだ。


「僕は3本欲しいっす。竜さん3本買わせてくださいっす」

「もちろんだ。合計で1500円になります」

「はいっす。それでは竜さん達バイバイっす。また会いましょう」


有輝は俺達に1500円を渡し手を振りながら去る。

その姿はまるで主人公のようだった。


「有輝…良い奴だな」

「そうだな」

「表面上の主人公とは違う中身からの主人公だね」


…有輝に主人公の座を取られてしまっていたのか

……そろそろ現実見るか。

主人公なんて存在しない。

存在する訳ないんだ。グスッ

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