過保護な神

藍田レプン

過保護な神

 性別や年齢、出身地を出さないという条件で、Kさんから伺った話。

「私の家では神様を祀っているんですけど、何でも願いを叶えてくれるんです」

 ただし、何でもと言っても仕事や賭け事、金銭に関わるような願いは駄目なのだという。

「家族の命というか、健康に関することだけなんですけど、本当に何でも叶えてくれるんです。ただ」

 『叶いすぎてしまう』のだと、Kさんは言った。

「私の母が私を身ごもった時に、『健康な赤ちゃんが生まれてきますように』と願ったらしいんです。結果私はとても安産で、先天的な疾患も無く元気に生まれてくることができました。双子の片割れとして」

「良かったじゃないですか」

「私が生まれる前、母が産婦人科で検診を受けていた時は母胎に『一人しかいなかった』そうです」

「え?」

「それが、神様にお願いをした次の検診でおなかを見ると、一人だったはずの胎児が二人に増えていた」

 叶いすぎるというのは、そういうことなんですとKさんは困ったように呟いた。

「神様の道理は人間の私にはわかりません。でも足りないよりは多いほうがいいだろう、とそういう理屈なのかもしれません」

 その後双子のきょうだいと健康に育ったKさんだったが、ある時交通事故に遭い、右腕を切断するという大怪我を負ってしまったらしい。

「その時とり乱した父は、神様に願ってしまったんです。『子供の腕を繋げてくれ』と」

 その願いは叶い、Kさんの右腕は無事手術が成功し、大怪我にも関わらず麻痺も違和感も痛みも無く繋がった。

「でも、ねえ」

 Kさんは焦げ茶色のインバネスコートから、そろりと右腕を出す。

 その右腕は、『二本』あった。

「後から生えてきました。次に事故に遭っても大丈夫なように、予備としてつけてくれたのかもしれませんが」

 困ったものです、とKさんは顔をしかめた。

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過保護な神 藍田レプン @aida_repun

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