第49話 駄菓子屋のジャロリ アオイ視点

 シズがバイトに言ったから近所をふらふら歩いて散策する。しばらく散歩していたら、のじゃのじゃ言う声が聞こえた。


「ん? この声ってヒビキさん?」


 声のする方へ歩いて行くと、一軒の駄菓子屋を見つけた。


「こんな所に駄菓子屋ってあったっけ?」


 古びた駄菓子屋。看板には「紺田商店こんだしょうてん」という店名が書かれていた。そこからヒビキさんの声が聞こえる。


 恐る恐る扉を開けると中には古びたゲーム筐体が沢山並んでいて、その内の1つ。2本のスティックが飛び出してるゲーム機でヒビキさんが遊んでいた。


「もおおお!? なんじゃコイツ!! 全然倒せんのじゃ!!」


「ヒビキさん。何やってんのこんな所で?」


「おぉ〜アオイじゃないかの。なんかの。この店気になって覗いたら店主の兄ちゃんが「ゲームやっていいって言ってくれたのじゃ〜」


「え、タダ?」


「タダじゃぞ♡」


 そう言うとゲームを再開したヒビキさん。また店内にのじゃのじゃ言う声がうるさく響き渡った。


「よぉ。嬢ちゃんも遊んでくか?」


 声の方を見ると、30代くらいのお兄さんがこちらを見ていた。


「いいの?」


「ああいいぜ。あの子の友達なんだろ?」


「うん」


「なんかよぉ。女の子がのじゃのじゃ言ってるの聞いてたら懐かしくてよ」


「懐かしい?」


「昔そういう知り合いがいたんだよ。その人はもっとお姉さんだったけどな」


「ふぅん……」


 確かにのじゃのじゃ言う女の人って珍しいかも。俺の知り合いもヒビキさんくらいだし。そんなのがいたら懐かしいって思うのかもなぁ。


「ま、そんな所だ。俺は奥にいるからよ。帰る前に声だけかけてくれ」


 そう言うと、お兄さんは奥へ入っていった。


「の〜アオイ! これ面白いぞ。一緒に遊ぶのじゃ〜!」


「仕方ないなぁ……」



 ……。



 それからヒビキさんと1時間ほどロボットゲームをして、店でアイスを買うことになった。


 黄色いコートにスカートを揺らしながらヒビキさんがアイスのケースを漁る。


「ど・れ・に・し・よ・う・か・の。これじゃ!」


 ヒビキさんが取り出したのはメロンの形をした容器のアイス。懐かしいも思いながら、オレは結局定番のチョコアイスにする。


 お兄さんにお金を払って、店内にある椅子に座りながらアイスを食べる。ストーブが置いてある店内は想像以上に暖かかい。アイスを食べるのには最高の環境だなぁ。


「美味いのじゃ! なんだか懐かしい味じゃのぉ〜」


 はしゃぎながらアイスを食べるヒビキさん。その目がキラキラ光る。


「はしゃぐねぇ〜ウママッ!?」


「アオイの目も光っとるのじゃ」


「う、うるさいな! 美味しいから仕方ないじゃん!」


「でも良い店を見つけたの。流石に次もタダ……といかんじゃろうが」


「まぁ? それは確かにそうかな」


 見渡すとゲーム機が結構置いてある。


 これは確かに遊べそうな所かも。


「じゃ、そろそろ帰るのじゃ。ママが待っとるしの」


 ヒビキさんがスタスタと歩いていく。


「あ、ちょっ! 待ってよ〜!」


 俺は急いで後を追った。



 ……。



 もういなかった。



 なんか振り回された気分!

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