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もちづき 裕
病院編
第1話 頭蓋底骨折
私は病院に勤めていたことがあるのですが、病院編では実際にあったことを散りばめていきたいと考えています。今月末までに10万字目指して頑張っていきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!
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「ここら辺の中学校ってあまり良くないって話だし、高校受験になった時に苦労するのも大変だから、子供たちは中学受験させたいと思うんだけど」
「僕は自分が中学は公立に通っていたから、子供達も公立に通うので良いと思うんだけどなぁ」
「でもね、いざ、レベルの高い高校に行こうと思っても、中学から入学した生徒たちで埋まっちゃっていて、なかなか入学出来ないっていうの。良い大学に入れたいと思うのなら、やっぱり中学から受験してレベルが高い学校に行った方が良いって言うの」
「それって私立校の話だよね?だったらそれなりのレベルの公立高校に入ったら良いんじゃないの?」
「だから、頭の良い子はレベルの高い公立高校を受験するから、中途半端な学力の子は偏差値の低い高校に行くことになっちゃうっていうの。そうしたら、大学受験が大変になるのは目に見えるようなものでしょう?」
「だからこそ、公立の中学に入って勉強頑張って、レベルの高い公立高校に入れるようにすれば良いと思うんだけど?実際に僕はそうやって公立の高校に通ったし、一浪はしたけど国立大学にも入学したんだし」
「それは昔の話なの。今はね、中学受験が当たり前の世の中なの!特にこの学区の中学校のレベルが低いのは有名な話でね」
「じゃあさ、物件買う時になんでそこの部分を調べなかったの?」
「はい?」
「子供たちが安心して暮らせるように、ストレスを抱えたりしないようにしたいからってマンションを購入したんだよね?」
「そうだけど?」
「何でマンションを買う時に、学区内にある学校の口コミ情報とか確認しないわけ?」
「はあ?」
「子供のため、子供のためって言うから、君の希望でマンションを購入したわけだよね?それで子供のためっていう理由でマンションを購入したのに、学区内の学校のレベルが低い?だったらレベルが高い学校がある学区のマンションを購入した方が良かったんじゃないの?」
「そうすると!世田谷の学区とかになっちゃうじゃない!」
「何を目指しているの?まさか子供たちを御三家(開成中・麻布中・武蔵中)に入れたいってわけじゃないよね?」
「そんな訳ないでしょう!」
「君がこの物件が良いって言い出して、君のご両親が頭金の方も手伝ってくれるって言い出して、僕の意見なんか何も聞いてくれないような状態で購入を決めたんだよね?それで蓋を開けてみたら、周囲に外国人が多すぎる、学校生徒の約一割強が外国籍の子供さんだ。だから授業がまともに進まないって、だから公立校は駄目だ、私立校に行かせなきゃって無茶苦茶じゃない?」
「だったら最初っから言ってくれれば良かったでしょう!都内のマンションは嫌だって!きちんと最初に嫌だって言ってくれたら私だってきちんと考えたわよ!」
「言ったよ、僕は言った、埼玉の方が物価も安いし、物件の値段もガクンと安くなるからそっちが良いって言ったよね?」
「それじゃあ!全部私が悪いのね!私が悪いんでしょう!」
「すぐそうやってキレる、今はそういう話をしている訳じゃないでしょう?本当に話にならないんだよな、元々は子供の中学受験の話だったのに」
「そうよ、中学受験、子供たちの未来を考えたら、中学受験は絶対にさせます!絶対に!」
「ああ、そう、だったらそうすれば良いんじゃないの?好きにすれば?」
あああ・・お父さんの『好きにすれば』が出ちゃったよ。お願いだから、もう少し頑張って欲しかった。
お父さんは知らないかもしれないけれど、中学受験って小学四年生から塾に通い出すんだよ?六年生になったらほぼ毎日、塾に通って、夏休み中も塾に通うことになるんだよ?
僕が入っているサッカーチームの先輩たちも、塾が理由で、みんなやめて行くんだけど、みんながみんな言っているんだよ。
「親に無理やり行かされているんだけど、塾って地獄だぞ」
夏休みは朝9時から夕方6時まで塾にいるんだって。それってほぼ学校に行っているのと同じだよね?それって本物の地獄じゃん。
僕は真山智充、小学四年生。最近はお母さんを中心に世界が回っているんだなっていうことを実感しています。だってね、他の友達に聞いてみても、塾に行けとか、中学受験とか、そんなことを言い出すのって、大概がお母さんなんだってさ。世の中にはお父さんの方針でとかあるかもしれないけれど、僕はそういうの、聞いたことがないなぁ。
そんな訳で18時から21時まで、週に三回も塾に通うことになった僕は、お母さんがスーパーで買っておいてくれたおにぎりを食べてから、自転車で塾まで向かうことになったんだ。
それで、夜の21時半近くに自転車で帰って来て、お風呂に入って、夜ご飯を食べるのが夜の22時近く。
「あんまり食欲ないかも」
最初は今まで通りの夕ご飯がラップされた状態で用意されていたんだけど、僕の食欲ないの一言から、帰って来てから用意されている食事がおにぎりか菓子パンか、カップラーメンになったんだよね。
食事の時間がずれちゃっているからお父さんも僕の食事の状況を理解していなかったとは思うんだけど、
「智充、あんまりカップラーメンばっかり食べていると栄養が偏るぞ?」
と、言い出した時にはキレそうになった。
「智充はそのカップラーメン好きなのよね〜」
と、お母さんが言い出した時には絶望を覚えたよ。
カップラーメンはたまに食べるから美味しいんであって、塾の度に食べていたら流石に飽きて来る。それに、今まで22時前には寝ていたのに、塾の宿題をしてから寝ろとか言われるから、寝るのが23時半とか、下手すると24時とか。
そりゃ、朝も起きられなくなるんだけど、
「早く起きなさい!朝よ!」
お母さんはそんなこと忖度してくれやしない。
「今日は朝ごはんいらない」
とにかく眠くて食欲が湧かない、ご飯食べる時間があったら眠っていたい。
「最近の子供って本当に朝ごはんを食べないのよね〜」
お母さんって本当に酷いと思う、そもそもお母さんが僕を塾に通わさなければ、僕は最近の子供と言われるような、朝ごはんを食べない子供にはならなかったと思うよ?
そんなこんなで僕の塾通いがスタートしたんだけど、もう少しで夏休みっていう時に僕は車に撥ねられて救急車で運ばれることになってしまったんだ。
友達の家に遊びにいく途中で、走って来た車に当たって僕は宙を飛んだ。その時、僕は自転車に乗っていて、相手の車もそれほどスピードは出ていなかったんだけど、とにかく僕は宙を飛んだわけ。
この事故が友達の家に向かう途中とかじゃなくて塾に向かう途中だったら、流石のお母さんも僕が塾はもう辞めるって言ったら話を聞いてくれただろうにとか、せっかくポテトチップス二袋も家から持ち出して来たのに、ぐしゃぐしゃに潰れちゃうなとか、安達先生、明日には小テストやるって言っていたけど、本気でやめて欲しいとか。
飛んでいる間はまるでスローモーションのように感じて、アスファルトの上まで落下するまでに3分くらい時間がかかったように僕は感じたわけ。
カップラーメンはお湯を入れてきっちり3分待つよりも、2分半の方が美味しいなとか、たまに安くてマズイ(大人の味とも言うらしい)カップラーメンを買って来るのはやめて欲しいとか、そんなことを考えている間に、僕は救急車で病院に運ばれて行くことになったってわけ。
「智充くん、智充くん、目を覚ましたのかい?」
どうやら僕は気を失っていたようで、気がついたら狭いカーテンに囲まれたベッドの上で寝ていたんだよね。どうやら、白衣のおじさん(多分お医者さん)が僕を覗き込んでいたようで、にこりと笑って言い出したわけ。
「智充くん、智充くんはね、頭蓋底骨折と言って、頭の骨に問題がある状態なので、しばらくの間は絶対安静となります」
えーっと、おじさんの肩の上に女の人の生首が乗っているんだけど、これはサプライズ的なアレなのかな?
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子供の塾通いが始まって、夜はおにぎりしか食べていない〜なんて話は多いみたいです。コンビニでもスーパーでも塾の子向けセットとかあったら良いのかも。
お医者さんと幽霊の親和性はめちゃくちゃ高いのですが、お話は続いていくことになります。最後までお付き合い頂ければ幸いです!
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