以前書いた短編集
鈴木美本
A world achievedシリーズ
『グラントエリック建国史』『それぞれのカラー』3人称
※改稿版11章の前。閑話。
エリックたちはサンドスピリットで、黒幕と戦闘を繰り広げ、シュトーリヒに戻ってきていた。エリックの母親ホリーは、ドニーが持っていたハーブジュエルにより、魔力のバランスを崩していた体が快復し、病院内で2週間リハビリした後、フェストたちと合流することになっていた。エリックたちは今、次の戦いに備え、在庫の確認や施設の整備に着手しているところで、明日からレナントルイスの在庫確認と施設の整備をすることになっている。レナントルイスには、ファインドライトの両親やキャメルチア夫妻が残り、城などを管理してくれている。そこに、ヘリオフィラとラティフォリア、リフラと彼女の家族、ファインドライトとザハラも加わる予定だ。
「エリック、これでいいかしら?」
「うん、ありがとう、コキーユ」
今日もシュトーリヒの本部で夕食を作っているエリックとコキーユの元に、ツイーディアが顔を出した。
「エリック・ギルバート」。黒髪の青年で、魔法剣士。異世界の材料で作られた剣、グラントブライトの持ち主でもある。料理が趣味で、みんなに料理を振る舞ってくれている。
「コキーユ・フローレンス」。こちらから見て左上を結んだ茶色のポニーテールとピンクのリボンが特徴の女性だ。マグニセント王国では珍しい聖獣召喚術師でもある。まだ修行が足りず、
また、エリックとコキーユは恋人同士。戦闘中は最前線に立つ2人だが、戦いから戻れば家事をする優しいお兄さんとお姉さんになり、とてもお似合いの2人だ。
そして、もう1人の少女「ツイーディア・シーティア」。彼女は、この王国の極東に位置するグリーンガーデンから逃げてきた少女で、今はシュトーリヒ領主の屋敷でお世話になっている。しかし、戦争になり、その屋敷に帰ることは、もうほとんどなくなった。現在は彼女の両親がその屋敷に住んでいる。
ツイーディアは頭の両側にドーナッツをつけたような水色の長い髪を揺らす。キッチンの窓から差し込む光で、彼女の頭にある星のような花の飾りがキラキラと輝く。
「あ、ツイーディアちゃん」
「コキーユさん」
「ごめん、ツイーディアちゃん! お願いがあるんだけど、夕食が時間通りにできるから、みんなを呼んできてほしいの!」
「ごめん、ツイーディア。俺からもお願いするよ」
「はい! 行ってきます!」
「ありがとう!」
「ありがとう、ツイーディアちゃん!」
「どういたしまして!」
忙しそうな2人に快く引き受けたツイーディアは、ふとカウンターに置かれた料理とメモを見る。「鳥肉、ジャガイモ、タマネギ、人参のクリームシチュー。焼きたてパン。プチトマト、紫タマネギ、レタスのサラダ。ブルーベリーカスタードパイ。黒ぶどう」。黒ぶどうは、この前レーツェレストの人たちにいただいた物だ。ツイーディアは色とりどりの料理を見て、仲間たちのカラフルな髪色と重なる。エリックたちとの約束を思い出したツイーディアは、急いでみんなの元へ向かう。
🌈 🌈 🌈
領主たちの職場の隣、シュトーリヒの自警団本部にある小さな実験室では、ザハラが父親のターミルから聞き出した科学と錬金術で作られた回復薬を用意していた。ファインドライトは彼女の補佐兼護衛であり、彼女の手伝いをするために、この部屋にいる。
「ザハラ・サンドグリット」。オレンジの髪に茶色の肌の大人な女性だが、召喚施設のスペアキーを勝手に複製するというお茶目な一面も持つ。科学の第一人者「ターミル」の一人娘であり、本人も将来を期待されている科学者の一人だ。
サンドグリッド戦前、ザハラたちはターミルたちの説得に失敗し、彼女の一族と戦闘することになってしまった。しかし、しばらく戦った後、ターミルと彼女の母親「ワアド」は手加減し、わざと娘に負けた。元々、娘たちが弱かったら無茶をしないように捕まえる気だったが、彼女たちが強いことを悟り、国民の未来を託した。現在はレナントルイスで、ドニーが作った檻に入っている。ザハラは悲しいと思うときもあるが、両親にときどき会いに行くことをシュトーリヒ領主のフェストに許可してもらっている。
「ファインドライト・ラーバスプリング」。赤いロングヘアの青年で、みんなのことを見てくれている優しいお兄さんだ。ツイーディア誘拐未遂事件後、エリックたちとともに溶岩の研究施設での怪しい研究を阻止し、彼らの正式な仲間となった。レナントルイス戦後、彼は家族やラーバスプリングの住民に危害が加えられるのを恐れ、レナントルイスに避難するように促した。その後、ラーバスプリングの住民は、レナントルイス防衛戦でラティフォリアと一緒に活躍。今でもレナントルイスにそのまま住み、城や自警団を管理している。
「ザハラ! ファインドライト!」
「ツイーディアちゃん!」
「ツイーディア?」
「時間通りに夕食ができるから、いつもの時間に食堂まで来てほしいの」
「わかった。ありがとう、ツイーディア」
「わかったわ、ありがとう。もう少しでキリがつくの。今からヘリオフィラのところに薬草を取りに行った後、ここを片付けてから行くわ」
「ザハラ、俺がここを片付けておくから、ヘリオフィラのところに早く行くといい」
「ありがとう、ファインドライト。じゃあ、行ってくるわ」
「私も一緒に行っていい?」
「ええ、もちろん!」
ザハラは笑顔で答える。
ヘリオフィラの元に薬草を取りに行くザハラに、ツイーディアはついて行くことにした。
🌈 🌈 🌈
ツイーディアとザハラは、実験室の近くにある薬草の保管庫にやってくると、ヘリオフィラとリフラが在庫管理をしていた。
「ヘリオフィラ・アステラレス」。紫のボブヘアの青年で、気難しそうに見えるが、優しくて面倒見がいい性格だ。彼には可愛いところもあり、大好きなチョコマシュマロを作り、個包装にして持ち歩いたり、アレクシスを見た後も「翼が格好いい」と思い、ネックレスの丸い飾りを竜の翼型に変えたりしていた。
「リフラ・ルファム」。緑髪のハーフアップに黄色のリボンが特徴的な少女で、髪からはホワイトフローラルの匂いがふわりと香る。彼女はお嬢様のようにお淑やかに見えるが、人を助けることが大好きで、元気いっぱい。太陽のような笑顔が素敵な人だ。
ツイーディアがシュトーリヒで襲われたときに、ヘリオフィラとリフラはエリックたちとともに彼女を助けた。その後、ヘリオフィラとリフラは兄弟の話で盛り上がり、お互いに薬草の知識があることもわかった。次第に仲良くなり、恋愛へ発展し、いつの間にか「お似合いの2人」と、みんなから思われるようになっていた。
話を戻すが、この保管庫には、名前の書かれた細長いカップがずらりと並び、摘み取られた薬草が立てて入れられていた。カップの中には水が入っているものもあり、管理者が毎日水を替えているが、今日はリフラが水を替えると朝の会議で話していたことをツイーディアは思い出した。そのとき、部屋の中央で薬草の状態を確認していたリフラが、入り口にいるザハラとツイーディアに気づく。
「ザハラ? ツイーディアも? 2人で、どうしたの?」
「リフラ。ヘリオフィラはいるかしら?」
「ええ、いるわ! ヘリオフィラ! ザハラが何か用があるらしいの! こっちに来てもらえるかしら?」
「わかった! すぐ行く!」
ヘリオフィラはファイルから視線を外し、リフラたちに近づいていく。
「ありがとう、リフラ」
「どういたしまして!」
ヘリオフィラはリフラに微笑んだ後、ザハラに顔を向ける。
「ザハラ、ところで何の用なんだ?」
「ごめんなさい。回復薬を作るのに、白いピンポンマムが5本ほしいの」
「ああ、少し待っていてくれ」
近くにある花の中から白くて丸い菊を5本取り出し、ヘリオフィラはそれをザハラに差し出す。
「これを5本で合っているか?」
「ええ、ありがとう!」
「どういたしまして」
ヘリオフィラは花を渡し、ふっと微笑んだ後、ファイルに書かれた在庫数を書き換える。
ヘリオフィラとザハラは、8歳のときに1度会ったことがある。そのとき、ヘリオフィラは舞踏会場のバルコニーで夜風に当たっていたが、ザハラに急に声をかけられた。そのあと、ザハラが自分のことを明るく話し始め、世の中を笑顔でいっぱいにしたいと夢を語るのを静かに聞いていた。
錬金術の第一人者の息子「ヘリオフィラ」と、科学の第一人者の一人娘「ザハラ」。
異世界のアイテムによって狂ってしまった国王たち、正気を失いかけていた両親に苦しんでいたヘリオフィラは、
他の誰とも違うザハラはヘリオフィラにとっては憧れであり、初恋の相手だった。しかし、一族から愛情を受けて育った彼女にとって、彼は気の合う友人であり、再会した後も以前の気持ちと変わらず、大切な友人として今も付き合いを続けている。
「リフラも、ありがとう!」
「どういたしまして! また何かあったら、言ってね? 協力するわ!」
太陽のように笑うリフラを見て、ザハラは目を細め、あたたかな微笑を浮かべる。
「ありがとう。ヘリオフィラも、またね?」
「ああ、またな」
ヘリオフィラの返事を聞き、ザハラは笑顔で手を上げ、部屋を去っていく。それをツイーディアがボーッと見送っていると、リフラが彼女に向き直る。
「ところで……。ツイーディアは、どうかしたの? 何かあったの?」
「うん! あのね」
「お兄様! お姉様!」
急にラティフォリアが現れ、ヘリオフィラとリフラに声をかけた。
「「ラティフォリア!」」
意図せず、2人の声が重なった。
「アイテムの在庫整理が終わりました!」
部屋の前で元気よく報告したラティフォリアが、ヘリオフィラとリフラの元に駆け寄ってきた。
「ラティフォリア・アステラレス」。ヘリオフィラの妹で、紫のボブヘアの少女だ。兄のヘリオフィラと仲のいいリフラのことを「お姉様」と
少し前に、ヘリオフィラとラティフォリアはレナントルイス戦で両親を亡くした。アイテムに操られていたとはいえ、人を
その後、ラティフォリアは泣き疲れ、しばらく寝ていたが、起きた途端、ヘリオフィラとリフラのいる部屋に駆け込み、「お兄様、私も戦わせてください!」と言い、自ら戦うことを望んだ。妹を危険な目に
リフラを見ていたラティフォリアは、ようやく隣に立っているツイーディアに気づく。
「ツイーディアさん? どうかなさいましたか?」
「ううん、別に大した用事じゃないの。エリックさんたちに頼まれて、夕食ができるから、時間通りに食堂まで来てほしいって、伝えに来たの」
「エリックさんたちに? わかりました、ありがとうございます!」
「ありがとう、ツイーディア!」
「ありがとう」
3人に笑いかけられ、ツイーディアは嬉しそうに笑う。
「どういたしまして!」
みんなで微笑んでいると、急に部屋のドアがノックされる。みんなが振り向くと、そこにはみんなを微笑ましそうに見ているマーティンが立っていた。
「「マーティン!」」
リフラとツイーディアの声が重なる。名前を呼ばれたマーティンは部屋の中に入り、みんなに近づいていく。
「みんなで楽しんでるところをごめん。ヘリオフィラ、在庫の確認って、終わったかな?」
「ああ、ちょうど終わったところだから、これを持って行ってくれ」
「ありがとう」
マーティンは近づいてきたヘリオフィラから在庫数の書かれたファイルを受け取った。
「マーティン・シュトーリヒ」。金髪の優しげな青年で、エリックの幼馴染。また、シュトーリヒ領主「フェスト」の息子でもある。そして、リフラの従兄でもある。ツイーディアは、彼の「従妹」ということになっているが、血のつながりは全くない。以前、彼女を助けようとしたリフラが、「マーティンの従妹」を名乗ることを許可した。ツイーディアは戦争が終わったら、友だちに再会し、本当のことを話そうと思っている。彼女にとって、マーティンとリフラは「今でも自分を護ってくれる、とても大切な2人」だ。
「ところで、マーティンのほうは順調?」
「うん、ドニーと一緒だったから、すぐに終わったよ。今は新しい武器と防具が作れないか、話し合っていたんだ」
「すごいわ!」
「そういえば、リフラ。オードさんたちと『レナントルイスに住む』って、言っていたけど」
「本当よ? シュトーリヒで、じっとしているより、レナントルイスで自分たちができることをしたいの」
「そっか……、リフラたちが決めたことだから、
「わかったわ! マーティンも気をつけてね!」
「ありがとう」
マーティンはリフラにやわらかく笑った後、ふと真面目な顔をしたヘリオフィラを見て、くすくすと笑う。
「どうかしたのか? マーティン?」
「うん、何でもないよ?」
しかし、マーティンは不思議そうにしているヘリオフィラと頬を赤くしているリフラを見て、まだ笑っていた。今まで黙っていたラティフォリアも、つられて笑う。
「お兄様は本当に真面目で、意外と鈍いですから」
わかっていないのは、首を傾げたヘリオフィラとツイーディアだけだった。
そんな空気の中、ツイーディアはマーティンをじっと見て、口を開く。
「マーティンは、これからどこに行くの?」
「今から作業部屋に戻るんだ。もう少しドニーと話もしたいからね?」
「私も、一緒に行っていい?」
ツイーディアは、わずかに瞳を輝かせ、マーティンに一歩近づく。
「伝えないといけないことがあるから」
「それって、夕食のことかな?」
「うん」
マーティンは一瞬だけ何かを言いたそうにしていたが、笑顔のツイーディアを見て、結局、口をつぐんだ。
「わかった。一緒に行こうか?」
「うん!」
マーティンはツイーディアの明るい笑顔を見た後、ヘリオフィラたちに向き直る。
「じゃあ、また後で」
「ああ、またな」
「2人とも、また夕食で会いましょう?」
「お2人とも、また夕食で、お話させてください」
ヘリオフィラたちは微笑んで、マーティンとツイーディアを送り出した。
「うん、わかったよ」
「うん! じゃあ、またね!」
3人に手を振りつつ、ツイーディアはマーティンと一緒に部屋を出ていった。
🌈 🌈 🌈
ツイーディアが次に向かったのは、ドニーのいる作業部屋だった。その部屋の前では、アドルフとアレクシスが待機し、部屋の見張り兼ドニーの護衛をしていた。
「アドルフ」。コキーユが召喚した
「アレクシス」。金色の瞳のくりっとした目を持つ可愛らしい白の竜で、本来の姿は100メートルだが、最小で150センチの大きさになれる。異世界エルヴィスドニーから召喚されてしまった存在で、マグニセント王国の科学者たちから狙われていた。
2匹とも、とても仲が良く、一緒に見張りをしているところをよく目撃されている。
「ドニー!」
「うん? ツイーディア? どうかしたのか?」
「あの……。エリックさんたちに頼まれて、『夕食ができるから、時間通りに食堂まで来て』って、伝えにきたの」
「ああ、ありがとう」
ドニーは珍しく顔をほころばせた。彼はエリックの料理が本当に好きだ。
「ドニー」。白いロングヘアに黒いシュシュ、パステルグリーンの長い軍服を着ているのが特徴だ。異世界エルヴィスドニーからマグニセント王国に召喚されてしまった竜族の科学者。見た目は普通の人間だが、寿命が
シュトーリヒ・白の竜アレクシス防衛戦で、油断してしまったツイーディアは、敵の放つ火魔法を
「ドニー、今度は何を作るの?」
「今度は『新しい剣を作ってほしい』と頼まれたんだ。この前の戦いで、何本か消耗したらしい」
「私たちがいない間に、皆さんが必死にシュトーリヒを護ってくださったから……」
「ああ。これからどんな敵が来るか、わからないからな。今のうちに強化しておこうと思う」
「ドニー、ありがとう!」
「……うん? ツイーディアが、お礼を言うことではないと思うが?」
「でも、私もみんなに助けていただいて、みんなもドニーに助けてもらっているから、私もドニーにお礼が言いたいの!」
「そうなのか……、どういたしまして?」
「うん! ありがとう!」
ツイーディアとドニーの微笑ましいやりとりをマーティンは複雑な表情で見つめていた。
マーティンはツイーディアに出会ったばかりの頃、本当の妹のように接していた。彼女もまた、彼のことを伯父のハーミントに似ている存在として見ていた。それは、いつも2人を支えていた人が、みんな優しくて、お互いの優しさが霞んでしまったのも影響していた。
しかし、マーティンはツイーディアと一緒にいて助けている内に、彼女の優しさや少女のような純粋さに
ツイーディアは不思議な力を持つドニーに惹かれていき、彼に危ないところを助けてもらったことで、完全に恋に落ちた。それ以来、ツイーディアはドニーに片想いし、マーティンはずっと彼女に片想いを続けている。そして、彼女に好かれている
マーティンは2人をじっと見ている間に、これからの予定について考え、重い口を開く。
「ドニー。これからの予定はどうする?」
「ああ、明日はレナントルイスでの在庫整理。明後日は武器作りが終わり次第、城造りに着手する予定になっている」
「そっか、ありがとう、ドニー。俺も明日はレナントルイスで武器の在庫管理。明後日は武器作りの補佐、それからは残党狩りに参加するよ。だから、今日中に新しい剣のデザインを考えないといけないんだ」
「わかった、考えておく」
「ありがとう、ドニー」
「ああ。どういたしまして」
微笑むマーティンに、ドニーは強く頷く。
「ごめんなさい、ドニー、マーティン。私はお邪魔になるから、先に行くね?」
「うん、また後で」
「ああ、また後で」
「うん! じゃあね!」
ツイーディアは手を振って、2人のいる部屋を出た。
🌈 🌈 🌈
ツイーディアは、みんなに声をかけ終わり、キッチンへ戻ってくると、エリックとコキーユが何かを話していた。
「今、パンを焼いているから、その間に料理を運ぼうか?」
「うん! じゃあ、私がシチューを運ぶわ」
「いいよ、シチューは重いから、俺が運ぶよ」
「え? でも」
「大丈夫だから、コキーユはサラダを持ってきて」
「あ……うん、ありがとう!」
コキーユが運ぶ前に、エリックがサッとシチューの鍋を持ち上げ、食堂へ持っていく。お礼を言ったコキーユは、トレイにサラダをのせていく。
「コキーユさん、何か手伝うことはありますか?」
「ツイーディアちゃん、みんなを呼んできてくれて、ありがとう! うーん、じゃあ、デザートのパイを運んでもらえるかしら?」
「はい! わかりました!」
ツイーディアは早速手を洗い、タオルで綺麗に拭いた後、トレイにブルーベリーカスタードパイをのせていく。パイを見ていると、大好きなドニーを思い出し、いつの間にか彼女は自然と微笑んでいた。
3人で料理を運び、夕食の時間になると、みんなが食堂に顔を出した。
最初に手を洗ったマーティンとドニー、その後ろからアレクシスとアドルフがやってくる。アレクシスとアドルフ用の料理も用意されており、2人は2匹を連れて食事を与える。
次はヘリオフィラとリフラ、ラティフォリアが姿を現す。
「エリック、コキーユ、いつもありがとう。ツイーディアも、ありがとう」
「3人とも、ありがとう」
「皆さん、ありがとうございます!」
「ヘリオフィラたちも、お疲れ」
「みんな、お疲れ様! いっぱいあるから、遠慮せず食べてね!」
5人が話していると、入り口からファインドライトとザハラがやってきた。
「ヘリオフィラ、さっきはありがとう」
「ああ、どういたしまして」
「ありがとう、ヘリオフィラ。材料が足りなくて困っていたんだ」
「ファインドライト……。ああ、どういたしまして」
ヘリオフィラがなぜかお礼を言うファインドライトに困惑しつつも言葉を返すのを聞き、リフラとラティフォリアは思わず微笑んだ。
一方、その近くでは、ドニーがテーブルに並ぶ料理をじっと見つめていた。
「パイ……」
ドニーは大好きなパイ料理を見て、口元をほころばせた。ツイーディアはその姿を少し遠くから見て、くすくすと笑う。ふと、視界に映るものが気になり、みんながいる食堂を見回す。
黒、茶色、金、白、紫、緑、赤、オレンジ、そして自分の水色。
みんなの色々な髪色を見てツイーディアは、またくすくすと笑う。
「どうかした? ツイーディア?」
「うん、『いろんな髪の色があるのって、面白いな』と思って、少し楽しくなったの!」
「そういえば、そうだね?」
マーティンもツイーディアに微笑み、2人でくすくすと笑い合う。
「みんな! パンが焼けたから、あたたかい内に、どうぞ!」
「たくさんあるから、いっぱい食べてね!」
エリックたちが持ってきたパンは、綺麗なきつね色に焼かれ、ぶわっ!と湯気が上がり、とてもおいしそうだった。ツイーディアたちは、これから楽しい時間が訪れる──そんな予感がしていた。
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