『レーツェレストの錬金術師』『ダイエット』3人称

「登場人物」

 ※四天王たちは味方キャラクターです。


 四天王 フォーリヒ 寡黙で最強の四天王。

 姫騎士 セイール  姫。白のショートカット。

 契約聖獣 アリオット ミットのフェレット。

 四天王 オリヴィア 茶色のツインテール。

 聖騎士 セイン   黄色の少女を連れている。

  少女 フラヴィア 黄色の植物の聖獣。少女の姿。

 四天王 フレッド  繊細で、少しわがまま。

 白騎士 ワイト   世話焼き。姫たちの従兄。

 契約聖獣 ソフィア  白いプードル。

 四天王 コリーウ  妹姫。白の2つお下げ。

 暗黒騎士 ビリア   コリーウに忠誠を誓う。

 契約聖獣 ピア    黄色のひよこ。




 セイールは明るい部屋で、鏡に映る姿を見て、溜息をついた。


 ──騎士として体を鍛えるのは当然なのに、私の鍛え方が足りないのかもしれない。


 最強の四天王「フォーリヒ」の騎士として研鑽を積んできたセイールだったが、最近は筋肉よりも脂肪の方が多くついている気がした。どれだけ鍛えても、筋肉がついた様子はなく、以前と全く変わらない。

 セイールは白いタンクトップから出ている二の腕をじっと見つめた後、鏡でも裏側を確認し始める。


 ──おかしいところもない。でも、以前と変わったところもない……。


 腕を動かすと、ふわっとした白い髪が揺れる。それより、腕につく脂肪が気になったセイールは、二の腕をつまみ、真剣な顔で頷く。


 ──ダイエットしないと……!


 彼女は決心した。彼女の足元では、そんなことなど全く気にせず、契約聖獣のフェレット「アリオット」が、彼女の周りをうろちょろと回っていた。



 🌿 🌿 🌿



「コリーウ、呼び出してごめん。ちょっと、相談に乗ってほしくて……」

「謝らなくても大丈夫だよ? 姉さんには、いつもお世話になってるから!」

 カフェに呼び出されたコリーウは、白くてふわふわの髪を揺らし、天使のような笑顔で応えた。

 セイールの前にはコーヒー、コリーウの前には紅茶がある。


 カフェの外、入り口付近には暗黒騎士「ビリア・ペンフォード」がいた。肩にはコリーウの相棒で、黄色いヒヨコの契約聖獣「ピア」を乗せている。

 今日は暗黒騎士の姿とは違い、私服姿。つやのある黒髪が黒いリボンで結ばれている。白いワイシャツに、光沢のある黒いリボン。膝まである黒のスカート、足には黒のストラップパンプスを履き、誰が見ても普通の女性だった。

 しかし、彼女から暗黒オーラがもれ出し、少しだけ近寄りがたい雰囲気をかもしている。肩に乗るピアだけは慣れているのか、彼女の顔に頭を寄せ、すやすやと寝ていた。

 「外に待たせるのは悪いから、一緒に中に入らない?」とセイールに誘われたが、ビリアは断った。「私のことはいいから、家で休んで?」とコリーウも言ったが、「外で待っている方が、気が楽ですから」と彼女は頑なに拒んでいた。

「コリーウに何かあったら」と思うと、気が気でないビリアだが、話を聞いてほしくなさそうなセイールを見た彼女なりの「最大の譲歩」だった。


「私は、鍛錬が足りないかもしれない──」

「姉さん、どうしかしたの? 何かあったの?」

「実は、どれだけ鍛えても、筋肉より脂肪がついている気がして──。『鍛え方が足りないのか』と不安で……」

「脂肪──? 全然、太ってないよ?」

「いや、でも。『ダイエットしないと!』と思って、ダイエットを試してみたけど、うまくいかなくて」

「太ってないのに……。ダイエットしたら、倒れちゃうよ?」

「でも、どうすればいいのか分からなくて──」

「姉さん──。甘いもの、好きなのに……」

 コリーウは、セイールとカフェに通う四天王「フォーリヒ・ティアリヒト」と「フレッド・エルドレッド」のことを思い出した。



 🌿 🌿 🌿



 先にフォーリヒとセイールがカフェにやってきて、紅茶とコーヒーを注文する。2人が待っているとフレッドが顔を出す。その後、フォーリヒがショートケーキ、フレッドがストロベリーパフェとアイスミルクティーを注文する。最後に迷ったセイールがレアチーズケーキを注文する。これが、大体の流れだった。

 セイールは2人に付き合い、よく一緒にお茶をしている。この前は、コリーウも一緒に楽しい時間を過ごした。


 そして、これは余談だが、その日。

 ビリアはコリーウをカフェまで送り届けた後、フォーリヒのことを信頼し、2人の姫を任せ、城へ定期連絡に行った。

 それから、数分後、世話焼きなフレッドの騎士「ワイト・ホートリー」と会ってしまった。彼はフレッドと城下町で別れ、城へ定期連絡に来ていたのだ。

 ビリアは顔を顰めたが、フレッドの契約聖獣の白いトイプードル「ソフィア」をつれていたため、可愛いもの好きな彼女の暗黒オーラは鳴りを潜めていた。


 ──ということもあった。



 🌿 🌿 🌿



 そして、現在。

 みんなで幸せそうにお茶をしている時を思い出したコリーウは、「そのままの体型でいい」ことをセイールに伝える。

「私は、姉さんと一緒にカフェに行って、一緒にお茶したい! フォーリヒさんも、フレッドくんも、そう思ってるよ! きっと!」

「でも」

「お願い、姉さん。私と一緒にお茶してほしいの!」

 姉として妹に真剣に泣きそうな瞳をされたら断れない。セイールは、そういう性格だった。

「分かった。ダイエットは、やめることにするから」

「本当?」

「本当」

「良かった……!」

 コリーウは大輪の花が咲くような満面の笑顔を見せた。明るく笑う妹を見て、セイールはホッとする。

「今度はビリアとワイトも誘っていきたい!」

「ああ、そうだな」

 コリーウに微笑みながら、セイールは頷く。

「オリヴィアも誘いたいな」

 四天王「オリヴィア・オリスト」。2人の学生時代からの先輩であり、友人でもある。

「フラヴィアちゃんも誘おうよ」

「ああ、黄色い少女の。あの、オリヴィアに懐いていた? 一緒に誘おうか?」

 笑って計画を立てる2人は、とても楽しそうにしている。

 そんな様子を店の前で見ていたビリアは、ふっと微笑んだ。



 🌿 🌿 🌿



 数日後。

 カフェには騒がしい四天王と騎士たちがいた。オリヴィアを補佐している騎士「セイン・ナイトレイ」も、カフェにいる姿が、お客に目撃されていた。


「何にする? フラヴィア」

「わたしはねー! 甘いものがいいな!」

「彼にストロベリーパフェとアイスミルクティーを。私にはコーヒーを1つお願いします」

「お前も何か頼まないのか? ワイト」

「私はコーヒーだけで大丈夫です」

「そんなわけがないだろう? すまないが、こいつにストロベリーパフェを1つ頼む」

「ストロベリーパフェ? わたしも! それが食べたいっ!」

「すみません、この子にもストロベリーパフェを1つ下さい。私にはコーヒーとミルフィーユをお願いします」

「私にコーヒーとモンブランを1つお願いできますか?」

「私は紅茶とショートケーキを1つお願いします! ビリアはどうする?」

「私も同じものをお願いします」

「私とおそろいだね?」

「──はい! そうですね」

「嬉しそうですね?」

「白騎士、黙ってください」

「私はレアチーズケーキを1つお願いします」

「俺はショートケーキを1つ頼む」


 あの後、ビリアが「セイール様はしなやかな筋肉が付いているだけなので、無理なダイエットはしない方がいいですよ。筋肉隆々のセイール様は見たくありません」とセイールを説得した。

 その時、「セイール様は、今のままが1番かわいいです」と、ビリアは思ったとか何とか──。






 答えあわせ

 オリヴィア「何にする? フラヴィア」

 フラヴィア「わたしはねー! 甘いものがいいな!」

 ワイト「彼にストロベリーパフェとアイスミルクティーを。私にはコーヒーを1つお願いします」

 フレッド「お前も何か頼まないのか? ワイト」

 ワイト「私はコーヒーだけで大丈夫です」

 フレッド「そんなわけがないだろう? すまないが、こいつにストロベリーパフェを1つ頼む」

 フラヴィア「ストロベリーパフェ? わたしも! それが食べたいっ!」

 オリヴィア「すみません、この子にもストロベリーパフェを1つ下さい。私にはコーヒーとミルフィーユをお願いします」

 セイン「私にコーヒーとモンブランを1つお願いできますか?」

 コリーウ「私は紅茶とショートケーキを1つお願いします! ビリアはどうする?」

 ビリア「私も同じものをお願いします」

 コリーウ「私とおそろいだね?」

 ビリア「──はい! そうですね」

 ワイト「嬉しそうですね?」

 ビリア「白騎士、黙ってください」

 セイール「私はレアチーズケーキを1つお願いします」

 フォーリヒ「俺はショートケーキを1つ頼む」

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