俺が王になるまでの物語

@R-A109

プロローグ

「またね!ライオンさん」


まだ幼かった俺はそう言ってライオンに手を振った。

ライオンもその別れに答えるかのようにこちらをじっとみている。


「ほら、レオ行くぞ」


俺は親に手を引っ張られながらも最後までライオンに手を振っていた。


「ぼく、おとなになったらパパみたいなどうぶつハカセになる」


「そうか。だったら今からたくさん動物の勉強しないとな」


「うん!べんきょうする!」


「よーし、そしたら今度パパの研究室に連れて行ってやろう!いっぱい動物のことを知れるぞー」


「やった!はじめてはいれる」


「たくさんの本があるからそれで勉強をしなさい」


「わかった!いっぱいべんきょうするね」 



         10年後



「おーい!獅王!一緒にこの後ファミレスでも行こうぜ!」


「ごめん。今日は無理だ。用事がある。また今度な」


「また今度って・・お前の今度はいつくるんだ?」


「本当にごめん。今日までに動物の図鑑を完成させないといけないんだ」


「また図鑑かよ。わかった。また誘うよ」


「今日までに終わらせるから明日ならいけると思う」


「じゃあ、また明日誘うからな!絶対こいよ!」


「絶対行くよ」


鷲尾獅王わしおれお

これが俺の名前だ。歳は高校1年生の16歳。父の仕事の関係もあり動物が大好きだ。獅王って名前もかなり気に入ってる。

今日は自分で作った動物図鑑を完成させないといけない日だ。じゃないと明日締め切りの

『高校生動物コンクール』の出場応募ができなくなってしまう。

俺は急いで自分の研究室に向かった。


「遅かったな」


「悪りぃ。帰りのHRが長引いてさ」


俺より先に研究室についてる人物がいた。

角田光馬つのだこうま

俺と同じ高校で動物が好きな人物だ。なかなか同年代で動物が好きって人はいなかったが光馬はかなりの動物好きですぐに俺たちは意気投合した。だからこうして時間があったり色々なコンクールが近い時なんかは二人で研究室に来ることが決まりとなっていた。


「どう?図鑑は明日までにできそうか?」


「あぁ。なんとかな。それよりお前は良かったのか?今回のコンクール応募しなくて」


「いやー今回はいいかなと思ってさ。まだ先はあるし」


「まぁお前がいいならいいけどさ」


「ん?なにこれ」


うろうろしながら話をしていた光馬がなにかをみつけた。


「なぁ獅王。これなに」


俺は光馬が右手に持ってるものを見た。それは父が生前に残していた一冊の本だ。


「それあれだ。俺の父さんが書いていた本」


「へぇー。お前の父ちゃん本も書いてたのか。すげぇな」


「最初で最後のだけどな」


「お前の父ちゃんって何年前に亡くなったんだっけ?」


「3年前だよ。俺が中1の時」


「そうか・・・悪いな。変なこと聞いて」


「気にしなくていいよ。それよりもこれを早く終わらせないと」


「そうだな。終わったら声掛けて」


「オッケー。」


俺は猛スピードで図鑑を完成させるため作業に取り掛かった。





「ふー。やっと終わった」


あれから2時間かかったがどうにか図鑑が完成した。


「光馬。終わったぞ」


「やっと終わったかー。じゃあ帰るか」


「そうだな。帰ろう」


「図鑑はどうするの?」


「明日の朝送るから家に持って帰るよ」


「大変だな。そんなでかい図鑑」


「まぁな。とりあえず疲れたから早く帰ろう」


そう言うと俺と光馬は研究室を後にした。俺と光馬の帰り道は途中まで一緒だ。研究室から家までは歩いて20分くらい。大通りで帰る道もあるが俺たちはいつも裏道を使って帰っている。その方が若干速い。


「なぁ。明日の3時限目ってさ数学だよな?」


「明日は木曜日だから英語だよ」


「あれ?そうだっけ?」


「こう言う会話何回してるんだよ」


「ごめんごめん」


いつも通りの帰り道だ。光馬とくだらない会話しながらただただいつも通り帰っていた。

でも次の瞬間・・・


「うっっ・・・」


背中、いやお腹というべきか。急に鈍い痛みが走った。なにが起こったか理解できずお腹に手をやる。恐る恐るその手を見てみるとその手は赤黒い血で染まっていた。


「え・・・どういう・・」


徐々に視界がぼやけていく。頭の中がぐるぐると回り、まるで水の中にいるみたいに周りの音が聞こえづらくなっていく。光馬が何か言ってる気もしてるがよくわからない。理解ができない。

立ってることができなくなり膝から崩れ落ちそのまま地面に倒れ込んだ。


「(あぁ俺ここで死ぬのか。いや、なんかの夢かもな。ここで死ぬなんてありえ・な・・・・)」


そこで俺の意識はプツリと切れた・・・・・・・


まさかこの後俺が一つの国を救うために奔走するとはその時の俺は考えも想像もしなかった・・・

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