【カクヨムコン9短編】再・スタート
麻木香豆
前編
「またミスをしやがって!」
「すいませんっ!」
広いオフィスに部長の出村の声が響き渡る。
その男の前に部下の新入社員の女性、高住が項垂れている。
「この間も発注ミス、取引先の名前間違える、配送先を企業の競合会社の名前を出す。どんだけミスをすればいいんだ。まだ大学生、バイト気分抜けてないんじゃ無いのか?」
「すいません」
「何度も謝られてもダメだ。反省しろ、いやこれも何度も言ってる。反省してもいない……」
すると高住は泣き出した。
喫煙ルーム。
「はぁ」
ため息と共に煙が出る。同僚の藤懸も入ってきてこう言った。
「そんなに怒らなくていいじゃ無いか。ただでさえ新人がほとんどやめてってるのに怒ったらダメだよ、頭ごなしに」
「そんなことはない。あれくらい」
「先日も家のことで悩んでたって時も私情持ち込むなと叱ったりもしたが」
「鬼だなぁ」
すると藤懸は煙を吐き出して笑った。
「やっぱ出村、好きなんだろう……あの新入社員」
「な訳ないだろ! な訳!! 俺は妻子持ちだっ」
出村は顔を真っ赤にする。
「……ちょっと、いつも以上にからかっただけだ」
「ほらやっぱり。タイプそうな子ですから」
「ん、まぁな」
だが次の週から高住はこなかった。
一身上の都合により、だった。出村は根性なしめ、と思ってはいたが悲しかった。
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