【創作フェス】ここからがスタート!

この美のこ

よ~い、スタート!

1

「よ~い、スタート!はじまるよ~」

そんな言葉から始まったプロフィールムービーが大きなスクリーンに映し出された。

そこには新郎のつばさ(25歳)と新婦のみお(39歳)の二人の成長・出会い・歩みなどの思い出の写真とメッセージが流れ、ゲストの笑いや涙を誘っていた。

やっとこぎつけた翼と澪の結婚式。

そこに辿り着くまでには長い年月がかかった。


********


 二人が出会ったのは、県立南高等学校。

青木翼が高校二年生になったばかりの十七歳の春だった。

授業中に体調が悪くなった翼は先生に断って保健室に向かった。

保健室には養護教諭の立花澪が常時いるはずだったが、その時はなぜか不在だった。

やむを得ず、頭痛で立っているのも辛かった翼は、備え付けのベッドに横になった。


「頭、痛~」そう翼が呟いた時に澪が保健室に戻って来た。


「せんせ~」と、か細い声が聞こえ、それに気づいた澪は声のするベッドにカーテンを開けて近づいていった。


「あらっ!君は青木君?どうしたの?」

学年トップの青木翼の事は誰もが知っていた。

よく見ると翼の顔が赤い。


「熱があるみたいね。症状は?」


「頭がガンガンする」


澪は速やかに翼の様子をチェックする。

翼は澪が近づいただけで、いい香りがしてドキッとした。


しかも「ちょっとごめん」と言いながら制服のカッターシャツのボタンをはずし、右脇の下に体温計を挟んだ。


(うわぁ、ヤバいよ)


翼はますます熱が上がるのを感じた。


温かい陽ざしが降り注ぐ保健室。

鼻をくすぐるような甘い香りと明るい陽ざしの中の立花澪先生。

それまで脇目もふらず勉強一筋だった翼。

春の陽気ってこんなに素敵だったんだとまどろむ意識の中で翼は思った。


この日以来、翼は澪が気になり始め、保健室通いが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る