わたしがうつ病になるまで

０ 人って、こうやって壊れていくんだ

「死にたい」

　誰もが、一度は口にした経験があるかもしれない。

　じゃあ、洋服のベルトで首を吊る輪っかを作ったことはある？

　一番楽で実行できそうな死ぬ方法を調べたことは？

　駅のホームに入ってくる電車をずっと見つめていたことは？

　早稲田大学卒。父は医者。兄は弁護士。ちなみに母は専業主婦。

　家族は全員わたしを愛しているし、大切に育てられた自覚がある。

　お小遣いは「ちょうだい」と言えばいくらでも貰えた。

　家から最寄り駅まで、車で送迎して貰えた。

　就職後は、一人暮らしをしてみたいという理由で、親の金で新卒には似合わない家を借りていた。実家も一人暮らしの家も都内にある。

　なんて恵まれた環境。

　なんて恵まれた人生。

　ゆくゆくは、自分で稼いだお金で暮らす、普通のＯＬになるんだと信じて疑わなかった。

　──これは、収入も安定している家族に愛され、幸せに育ってきたわたしが、自殺未遂をするまで壊れていく過程である。