第69話 魔王リリネル


「おきなさい」


う~ん、今度はなんだ……起きたばかりだけど、あの経験のせいか眠気が襲ってきてウトウトしていた。


「え~い! わらわが起きろと言っておるのだ!おきんか!」


一体、今度はなんだ。


亜夢じゃなく、美女とでもいう様な大人の女性が仁王立ちで立っていた。


見た瞬間から人間ではないのは解る。


物凄い威圧感がある。


「あっ、貴方は誰でしょうか?」


「わらわの名はリリネル、魔王である!」


言われてみれば間違いなく魔王だ。


頭に羊のような角がある。


綺麗な銀髪の長い髪に浅黒い肌。


背が高く、確かに美しく気高く見えるが、その美貌の影に怖さが感じられる。


「魔王……」


「いかにも、わらわは魔王じゃ! 尤も亜夢に食われてしまい、今は亜夢の中に取り込まれてしまったがな」


亜夢って何者なんだろう?


魔王すら融合捕食してしまうなんて……


「その魔王様が一体なんのようですか……」


「その……」


なんだ、顔を赤くしてモジモジして……


さっき迄の恐ろしい気が無くなった気がする。


「え~と何でしょうか?」


「……やらせろ」


「え~と何をですか?」


まさか、殺させろという事か……


「ぼ、僕を殺す気ですか!」


「違う! ちがう……あぁ~もう! 犯らせろって、そっちの意味だって……もう」


そう言うとリリネルは服を脱ぎ捨てると僕を押し倒してきた。


「ちょっと……」


「良いから、良いからわらわに任せておけば良い。ルイズの目を通してわらわも見ていたのだ……あの凄い体験をわらわにも頼む」


「え~と疲れていて……」


「そんな事言わないでよ! わらわも、かなりのご無沙汰なのだ。あんなの見させられたら、もう辛抱が溜まらない……そんな事言わずに、なぁ二人で楽しもう。なぁ~」


「そんな事言われても……」


「もし、わらわを楽しませる事が出来たら『平和な生活』を約束してやるぞ! どうだ!」


今の魔王って……


「え~と」


「わらわは、これでも魔王、正確には前の世代の魔王。魔王軍には顔がきく。もし、魔王軍に出会ったらわらわが出てやろうぞ! そうすれば魔王軍なら必ず引いてくれる……例え今の魔王であっても、話をつけてやる。どうだ?」


確かに先の魔王だったら、魔族は引いてくれるかも知れない。


なら、何故亜夢は拷問状態だったんだろうか?


亜夢の中にリリネルが居ると知っていて拷問などする物だろうか?


確か、他に沢山の魔族が亜夢の中にいる筈だ。


ルイズだって魔族の貴族だったんだよな。


「あの……聞いてもよいですか?」


「なんだ……まぁ良い申せ!」


「リリネルが亜夢の中に」


「皆迄言わんで良い……自分を食ったような奴の為に戦ってやろうと誰が思う?」


「確かに……」


「亜夢に食われて長い月日が経ったせいか、今は恨みも余り無い。どちらかと言えば『退屈』なのだ……それにあちらもかなりご無沙汰でな。どうじゃ、しっかり相手してくれれば、わらわの庇護下に置いてやろう」


インキュバスのせいか、体が火照ってきている。


そういった事情以上に、目の前にいる存在は、とんでもない美女だ。


僕はそのままリリネルを受け入れた。


「わかりました」


「おーっおっ、凄い!」


しかし、僕はこんな事ばかりしていて良いのかな。



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