第38話 リリアの為に
「……うん!?」
朝起きたら……リリアが僕にしがみ付いて寝ていた。
今はまだ少し寒いし、この宿屋のは暖炉が無いから結構寒い。
だからだろう。
しかし……本当に凄い美人だよな。
こんな美少女には多分、前の世界じゃまず見られない。
綺麗な金髪に透き通るような白い肌。
スレンダーな体なのに出る所はしっかり出ている。
まぁ、日本人は黒髪黒目が基本だから金髪の美少女に会わないのは当たり前といえば当たり前かな。
さてどうしようか?
そんな美少女が今俺にしがみ付いて寝ている。
しっかり後ろからホールドされていて頬がくっついていて息があたる。
「ハァ~う~ん」
息が拭きかかりながら、なんともなめかましい声が聞こえる。
こんな美少女が顔半分失った……女の子なら絶対にショックだよな。
男の僕ですら、自分の体の傷を見る度に怒りや悲しみに襲われるんだからな。
それをやったのが、よりによって自分が憧れた女の子、初恋かも知れない女の子。塔子なんだから……百年の恋も一気に覚めるよ。
さてどうしようか?
僕は城から追い出された身。
魔族や魔物と戦う義務は無い。
だから、基本生活費さえ稼げれば……他の時間は自由だ。
その自由時間をどう使うか……
リリアの顔を焼いた貴族。
聞いていたが、正直虫唾が走る。
放っておこうかと思ったが、リリアの顔を焼いた人間が割と近い場所に居る。
果たしてリリアの不幸は此処で終わるのだろうか?
もし、街で出くわした時なにかされないだろうか?
そう考えたら、かなり不安だ。
相手は二人。
リリアの義母と義姉、決して強い相手ではない。
だが、貴族というからには地位はある。
ヤルなら先手必勝、こちらから仕掛けた方が良い。
まずは……どんな人物なのか調べる必要があるな。
「う~ん……嫌ぁ……助けて……助けてーー」
悪夢にうなされているのか……
確かに凄い火傷の跡だ。
まるで……江戸川○歩や横溝○史の映画に出てくる様な焼かれた傷。
醜い以上に、きっと痛みとか熱かったに違いない。
僕の太腿はオイルライターのオイルを振りかけて燃やされた。
『やめて』『助けて』と叫んだけど止めて貰えなかった。
だが、僕のはあくまで只の火傷の繰り返しで焼けた物だ。
リリアのは酸に焼かれた傷。
見た目は同じようでも、恐らくその痛みは違うと思う。
起きている時には見る訳にいかないから、この機会によく見る事にした。
この傷はポーションや魔法では治らないと聞いたけど……理由はあるのかな?
前の世界の知識では硫酸や塩酸で焼かれたら治らないのは皮膚だけじゃなく、その下の肉迄溶かしてしまっているから、相当な外科技術じゃないと治らないとテレビで見たような気がする。
この世界の魔法やポーションは切れかかった腕や足でも治せる。
そこから考えたら……肉も治る筈だ。
だが、実際は治せない。
理由は何だろう?
何かが引っかかる……
うん!? 治らないとしても治療をしてみれば良いじゃないか?
よく考えたらうちには塔子がいる。
そう、回復魔法は無料で幾らでも使えるんだから、やれば良いじゃないか?
寧ろやるべきだ。
折角だ、この機会にリリアの治療と……リリアの義母と義姉の処分。
しっかり考えて行動を起こすべきだな。
横でうなされながら寝ているリリアを見て、僕はそう思った。
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