第34話 変わる日常
『リリアは貴族の娘だった』その割にはしっかりと介護が出来た。
リリアのおかげで介護から解放された僕は凄く生活がしやすくなった。
今迄は先に体を拭いてあげたり、お世話をしてからじゃ無ければ外に出られなかったのだが、今はそんなの気にしないで生活が出来る。
「リリアは貴族の子だったんだよね? それなのに随分と介護やら家事が出来るんだな」
「貴族と言っても私の母は妾で、元はメイドの1人でした。私は器量が良かったから政略結婚の道具として貴族の娘として育てられただけですわ。 父が亡くなってからはそれも終わり。貴族の屋敷で散々母と一緒に蔑まれ、使用人以下の扱いをされ、こき使われていました。その結果、母は心労で倒れて寝たきりになってしまいました。 その状態で、顔を焼かれて母共々屋敷の外に追い出されたのです」
「そうだったんだ……それでお母さんは?」
「酒場で下働きしながら介護したのですが、碌にクスリも買えなかったので半年も持たずに亡くなってしまいしたわ」
「なんだか、ごめん」
サラって言っているけど、多分僕以上に壮絶な過去があった筈だ。
これだけの美少女が顔を焼かれた。
元が綺麗だったんだ、きっと相当ショックだったんじゃないか?
そして働きながら介護していた母親が死んだんだ……辛くないわけない。
「今となっては過去の話ですから気にしなくて良いのですわ」
あと、一つ聞きたい事がある。
この際、だから聞いてしまおう。
「それでどうして奴隷に……」
「母親の介護で、その色々とお金が掛かりまして、気がついたら借金だらけでした。 母が居た時は頑張りがいがあったのですが母が亡くなってからは、その全てのヤル気が無くなりまして、奴隷落ちですわ……尤も、借金した相手も奴隷商も私を見て悩んでいましたわね」
あの金額で買えたんだ、確かに悩むだろうな。
「なんだか、嫌な事ばかり聞いて悪かったな」
「気にしないでよいですよ。 今はもう昔の事ですから……あの、聖夜様はわたしの顔を気になさらないのですか?」
今現在、リリアは顔の半分を長い髪で隠すような髪型をしている。
「僕は、顔で人を判断しないよ」
「ですが……」
僕を虐め、自殺に追い込んだ女の子は『外見だけなら綺麗だ』
塔子も綾子も美少女と言えるレベルだ。
だが、人を虐める時に歪んだ意地悪そうな顔になった瞬間の顔を何回も見た。
僕にとってはあの意地悪そうな顔。
あの顔程醜い顔は無い。
それに僕は……
「僕は顔に傷は無いけどね。見てみる?」
そう言うと僕はシャツを脱いだ。
「その傷……凄い傷ばかりですね……」
「リリアに比べれば大した傷じゃないけど、それなりに体に傷はある。 リリアと同じ心無い人間に傷つけられた傷だよ。顔の傷が気にならないと言えば嘘になるけど、他の人みたいに醜いとは思わないよ」
「そう……なんですか?」
「綺麗なのに勿体ない。それ位しか思わないよ」
「聖夜様は変わっていますね」
「まぁね…それじゃ僕は下で朝食をとってから採取の仕事をしてくるから、二人が起きたあとは頼んだよ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
介護をリリアがしてくれるから、朝早くから仕事に行けるようになった。
冒険者の仕事は早いもの勝ち。
早く行けば行くほど良い仕事がある。
だから、これは凄く助かる。
狙いは『採取』
空気人間のスキルを使えば、危ない場所でも周りを気にせず、買い取り値の高い薬草の採取が可能だ。
わざわざ危ない討伐をしなくてもお金なら手に入る。
ただ、採取だけじゃレベルが上がらないから、討伐が必要な時だけ二人の力を借りれば良いんだ。
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