第29話 旅立ち 復讐篇(完)
お城に戻ってからが大変だった。
貴重な異世界人の2/3を死なせた事により王や王女は機嫌が悪くなり、騎士に怒鳴り散らしていた。
大樹や他の同級生はそのまま引き篭もり状態。
そして僕は……
塔子と綾子を引き取る事にした。
「本当に良いの?」
「あの……本当にありがとう」
「いや、貰ってはやるけど、裏切らないように奴隷紋を刻むからな! あと物扱いで僕に逆らう事を許さない! それで良いならどうぞ」
「それでいいわ」
「あの……わかった」
塔子は兎も角、綾子は僕が引き取らないと生きていけないから断れないよな。
塔子は修道院生活の方が多分幸せな筈だけど……まぁ良い。
塔子と綾子を引き取ったのには理由がある。
まず、金と装備が三人分貰えるからだ。
それと、あの洞窟での実習でこの世界を1人で生きるのは結構きつい事がわかった。
さらに、さりげなく仲良くなった騎士から聞いた情報で『奴隷』が高額な事もわかった。
色々考えてこの二人の使い道が思いついたのもある。
「わかれば良いよ」
そう言い、僕は二人に背を向けた。
◆◆◆
「これが三人分の装備と金……あと身分証明だ」
粗末な杖2本に普通の剣1本と紙の手紙。
それと革袋。
それを騎士が僕たちに渡してきた。
しかし、王も王女も挨拶無し。
まぁ、必要ない人間にはとことん塩対応な訳だ。
「そうですか……お世話になりました」
「「……」」
二人は腹が立っているのか、挨拶もしない。
僕はヒラヒラと手を振り城を後にした。
まぁ騎士にあたっても仕方が無い。
◆◆◆
城を出たあと近くの広場まで二人の手を引いてきた。
「それで、なんで私を引き取ってくれたの?」
「うん、急にどうしたのかな?」
「使い道があったからだよ。約束だから自由に使わせて貰うからな」
「良いよ……」
「仕方ないね、そういう約束だから」
二人ともあっちの方を考えたみたいだな。
綾子はあっけらかんとしているが、塔子は少し体を震わせた。
「それじゃ、綾子は僕が肩車するからな、それが終わったら塔子はおんぶだ」
「なに、変な事するのね……」
「なんだか変態みたい」
「違う! いう事を聞く約束だろう?」
「「は~い」」
二人は渋々僕に従い、綾子はおずおずと僕の頭に跨った。
そして、塔子は後ろから抱き着くようにおぶさった。
「こう言うのが好きなの?」
「まぁ、こう言うのが好きな人もいるのかな? フェチ?」
「違う……これが僕らの戦闘スタイルだ!」
僕はレベルが上がったからかなり力がある。
「「戦闘スタイル?」」
「そうだよ! 綾子は僕がいう方向 前後左右に向け指定した方向に指定した魔法を放つ」
「そう言う事?」
「ああっ、それで塔子は僕が指示した通りの防御魔法や回復魔法を展開して」
「そうすれば良いのね」
攻撃魔法が使える綾子を肩車して、回復魔法の使い手塔子を背負いながら戦う。
この状態で戦えば、結構いける気がした。
周りから見たら、おかしいかも知れないが、恐らくこの状態は訓練次第でかなり強くなれる。
この世界は恐ろしい魔物が沢山いるし、それ以上に怖い魔族が居る。
1人で生きて行くのも結構辛い。
だから……この二人を使う事にした。
別に同情したわけじゃない。
『生きて行くのに必要だった』から貰ってやっただけだ。
綾子を肩車して塔子を背負いながら街を目指し旅立った。
復讐篇 完
※次回から冒険者篇がスタートします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます