第16話 綾子SIDE 失った光
目がかゆい…
異世界にも花粉症があったのかな。
しかも、最悪な事に前の世界みたいに、スキッとする目薬が無いから、水で洗い流す位しか出来無いみたい。
塔子が眼病なのか、違う理由なのか解らないが、ほぼ目が見えなくなった。
だから、私は二の舞を踏まないように、目を洗っていたんだけど……
「目が痛いよーー!」
表面じゃない……目の奥が急にジンジンとだした……
「ううっ、なにこれ? 目の奥が急に痛くなったわ……」
まるで、キリで目の奥を刺されているような、焼かれている様な凄い痛みだわ。
これは、そう塔子と一緒だわ。
もしかしたら、まさか塔子のが伝染したのかな。
『伝染病』
「誰か、回復師を……ううっ痛い、痛いよーー誰か呼んでーー」
私は余りの痛さに蹲まるしかなかったわ。
◆◆◆
『これは一体何なのでしょうか?』
『回復師の貴方がわからない物を私がわかる訳ないわ! だけど、これどう見ても塔子と同じだわね』
『ええっ、ですが、綾子様の方が重症みたいです』
『それはどういう事でしょうか?』
『いえ、塔子様の時は、何故かすぐに進行が止まりましたが、綾子様の方は進行が止まる気配が無いんです』
『ふぅ、使い物にならない者に様なんてつける必要は無いわ! それじゃ綾子も使えない。そう言う事?』
『はい、それに大河様の方も、一向に治まる気配がございません』
『ハァ~まだ訓練期間中なのに、聖女、大魔道師、剣聖がスクラップ状態……なんなのよ、今回の勇者召喚は』
『勇者である大樹様は女神の加護があるから病に掛らないでしょうが、賢者の聖人様は今から予防しなくてはなりません』
『そうね、お願いするわ。それで二人は?』
『もう駄目ですね』
『そう……』
この二人ももう終わりね。
この二人といい、塔子といい、もう演習にも参加できそうもないわ。
聖夜と一緒に……放り出すしかないわ。
ベッドで寝ている綾子を見ながら私は部屋を後にした。
◆◆◆
此処は何処?
暗い……暗いわ。
「目を覚まされましたか?」
「此処は何処ですか?」
暗くて何も見えないわ……私、目が痛くなって……うっ痛いわ。
「何処も何も、ここは治療室です」
暗い……そして目が痛いわ。
「あの……私の目……見えないのだけど」
「見える訳ないですよ! 貴方を見つけた時、貴方は自分の手で目を穿り出していたんですから」
目を穿る?
そうだ、私目が痛いから蹲りながら目を押さえて……余りに奥の方が痛いから。
そうだ、搔きむしるようにして……私は……私は……自分の目を穿って抉ったんだ。
「それじゃ……私は……」
「痛みは治療でとりました。ですが眼球が無いのですから、どうやってもこれ以上の治療は出来ないですよ? 貴方の目は今後光を見る事は無いと思います」
なんで、こんな事になるのよ……
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