第14話 二人には死んで貰おう
本当に訳がわかんねーよ。
僕たちは逃げるようにあの場から立ち去り、自分の部屋に戻ってきた。
木の貧相なベッドが二つに椅子が一つしかない部屋。
この国の王族も結局は碌なもんじゃない。
「なんでさっき僕を庇ってくれたの……」
「まぁ、あんたには迷惑を掛けているし、それに異世界に来てしがらみも無いからね……それだけよ!」
「しがらみ?」
「そうよ! あんたも私が南条財閥の娘だったのは知っているでしょう? 大樹も大河も親類までまとめて交流があるのよ。 だから前の世界では不本意でも同調するしか無かったわ」
その事は僕でも知っている。
だが、力関係で言うなら塔子が一番上の筈だ。
塔子が命令すれば、彼奴らは何も出来なかった筈だ。
「いや……だが、それでも塔子は南条財閥の娘だから、塔子が命令すれば、あいつ等はやめただろう」
「そうね……だけど、前の世界じゃあいつ等とは腐れ縁。恐らく仕事絡みで生涯一緒。立場は此方が上だけど揉めたくなかったのよ。特に大樹とは、親繋がりで婚姻の可能性まであったわ。 一生つき合う人間と僅かな学生時代を過ごす人間。私は間違っていても、一生つき合う人間をとった……悪い事だけど……損得勘定でそちらを選んだの」
だが、あんな危ない奴ら大人になって会社経営出来るのか?
「大樹はまだしも、大河は暴力的で危ないだろう? 彼奴に会社経営なんて出来ないだろう? 下手したら犯罪者じゃないか」
「そうね……だけど、そろそろ親が帝王教育とか始めるんじゃないかしら? そういう時期だったのよ! まぁ、ここから時間をかけてまともにするから成人する頃には真面目になるわ。ならなければ、そこからフェードアウトしていくけど……そこそこの企業の跡取りを捨てないと思うわよ」
「だけど……僕は……」
「まぁ、被害者のあなたは災難だったけどね……まぁ、そろそろ目に余るから、親が動いて貴方への虐めも治まる筈だったのよ」
どう言う事だ。
「どう言う意味?」
「一応は釘は刺したのよ! 大河のお父様にあった時『将来醜聞になる事しているから、やめさせた方が良いですよ』って。 あんたはそれで納得は出来ないと思うけどね」
「何となくわかったけど! それならなんでさっきは庇ってくれたんだ!」
「しがらみが無くなったから……かな。一応、私は聖女だけど勇者パーティから外れたし、もう大樹や大河、聖人との付き合いも終わり。 だから、もう『南条』に縛られないから、初めて自分の意思で動けたのかもね」
目が真面に見えなくなり、異世界にいてもこれか。
『強いな』
「だったら、お礼位言わなきゃな。ありがとう」
「いいわ、まだまだ私、迷惑かけるから」
「そうだな」
塔子に関して少しだけ罪悪感が沸いた気がした。
俺は此奴にかなり酷い事をされた。
背中にカッターで文字を刻まれた事実は変わらないし、まだ薄っすらと残っている。
だが、その復讐として僕は此奴の視力を奪った。
事情があって反省しているならもう塔子への復讐は終わりでよいかも知れない。
だが、大河や綾子は違う。
大河は勿論だが、綾子も今も変わらない。
暴力を振るい反省もする気も無い。
『虐められた位でそこまでする事は無い』
そういう人間もいるかも知れないが『僕は、それに耐えきれず自殺した』
つまり『僕は殺された』
自分を殺すような奴に手加減なんてする必要は無いだろう。
今回は、二人には死んで貰おう。
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