第9話 塔子SIDE クズ聖女


「ううっ、目が痛いーーっ、目がーーっ」


「塔子、大丈夫なの?」


さっき、食堂で少し目が痒くなったと思ったら、廊下を歩いている最中に、急に激しく目が痛くなりましたわ。


「ううっ、目が、目が焼けるように痛いのです…ううっ、助けを、綾子助けを呼んできて下さい」


私は近くにいた平城綾子に助けを求めました。


「塔子ちゃん、今、助けを呼んでくるから待ってて」


そう言うと、綾子は私を端に寄せ走って行きました。


「ハァハァ、お願い……そうだ、ヒール」


早速、教えて貰ったヒールを自分にかけたのですが……


「ううっ、余り効きませんわ……ハァハァ」


少し痛みがやわらいだ気がしますが、それだけ。


目の奥からズキズキとした痛みがしてきます。


「「「「「「「「「「塔子様大丈夫ですか?」」」」」」」」」」


馬鹿じゃないの。


この状態の私が平気な訳ないじゃない。


しかし……目が痛いわ。


痛い痛い痛い痛いーーっ。


ううっ……気が遠くなる……


◆◆◆


ここは何処?


まるで靄が掛かったみたいに周りが見えにくい。


水の中で目を開けた以上に薄っすらとしか見えない。


柔らかい……ここはベッド?


「此処は何処?」


「塔子、気がつかれましたか?」


塔子?


今迄は塔子様と王女や王以外は呼んでいたのに……何故か違和感があるわ。


「ええっ、大丈夫よ、痛みはないわ……? 目が、目が、上手く見えない」


まるで水の中にいるみたいに周りが薄っすらとしか見えない。


「やはりね、塔子の目ね、何かの病気なのか黒目部分が真っ白になっているわ……回復魔法をかけても、魔法薬をかけても治らなかった。それでどう? 見えるの? まともに見えるのかな?」


「……見えないわ」


「やっぱりね。うふふふっ傷物聖女。もう価値は無いわね」


傷物?


「ええっ、そうよ! どんなに良いジョブを持っていても目がまともに見えなくちゃ意味ないわ……魔王討伐の旅は上級ヒーラーから優秀な者に行ってもらう事になったわ」


「そんな訳無いわ。私は聖女」


「確かにそうね、だけど目がまともに見えない。戦えない聖女に価値は無い。そう、王や王女は考えたようですよ?」


確かに、この目じゃまともに戦うどころか……生活すら上手く出来ないかも知れない。


今話している。この女の顔すら見えない。


「それで、私はこのあと、どうなるのかしらね?」


「教会で見習い回復師(ヒーラー)から始め修道女になるか、聖夜と一緒に出て行くか……ご自由にどうぞと王女様からです……」


「生活の保障はする筈ですが」


「それは魔王軍と戦える力があればですよ。 視力を失った貴方にはその価値はありません。それは解っている筈ですよ……実際に、聖夜を追放に近い扱いをしましたが、仲間の貴方達は反対しませんでしたよね? 自分達が認めた様なものじゃないですか? 違いますか?」


くっ、聖夜にした事が自分に帰ってきた。


そういう事ね。


「そうね……解ったわ。自分の身の振り方は自分で考えるわ。それで貴方名前は?」


「名前? 宮廷から出て行って出会わない人に名乗る必要は無いですよね? トイレやお風呂すら一人でいけないような貴方に名前を名乗るなんて意味はないからですね……クズ聖女さん」


私が役立たず……


目が見えない……私は……どうすれば良いの?



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