第6話 もしかしたら

歓迎の宴の前。


僕はライア王女に呼び出されていた。


「さて貴方ですが、適性が無い事がはっきりしました…残念ながら貴方には魔王軍と戦う力がありません、2週間のち、この城を出て行って貰う事になります」


「それは解りますが、先程生活の保障をして下さると聞きましたが」


何だかこの王女目つきが悪いな。


「ハァ? 貴方は戦力外ですし、他の異世界人から嫌われているじゃないですか? 随分と向こうでは酷い事をされたようですね!」


「僕は悪い事なんてしていない」


濡れ衣だ。


「本当の所はどうでもいいわ。いい?召喚された方を優遇するのは魔王軍と戦って下さるからです。戦う事も出来ない貴方を優遇する意味はありません……例え貴方がいうのが本当でも、彼等の言う事が嘘でも、彼等には戦って貰う必要がありますから、彼等の肩を持つしかありません。とはいえ、異世界人をこのまま追い出すと風評がたちますから2週間。最低限の知識を与え、そのあと最初の実習が終わるまでは居させてあげますよ。最後の恩情です」


「他のクラスの奴は……どうなんだ!」


「半年間みっちり学んで貰ってから旅立って貰います」


こいつ等もあっち側か……


まぁ良いや。


この世界を少し見て、気に食わなければ自殺すれば良い。


死ぬ前になにか仕返ししてやりたい。


「姫様のご配慮に感謝するんだな、役立たず」


そういえば、僕のステータスはどうなんだ。


「解りました……あの、自分の立場はよく理解しました。2週間後に追い出されるのも理解しました。それで、博識なお姫様と騎士様に教えて欲しい事があるのですが」


「ふん、立場が解っているなら良い。なんだ!」


「僕のジョブやスキルは随分と変わったものの様ですが、どのような物か解りますか?」


「そんな物は解らん! だが、お前の仲間にどんな物か聞いてみたが『クズに相応しいジョブやスキル』だと笑っていたぞ」


「そうですね、聞いた事もないものでしたから価値がある物かと思いましたが……ぷふっ、説明を聞いたら笑っちゃうような内容でしたよ……随分と惨めなジョブやスキルですね」


という事は……このスキルの効果は誰も知らないのか。


僕のスキルは


スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)空気人間 お葬式ごっこ ばい菌 亀人間 下級人間 腐る目


内容は僕が受けた虐めの内容に起因する気がする。


スキルは自分の力だ。


だったら、これは僕にじゃなくて相手を倒す物なのかも知れない。


他は意味が解らないが『ばい菌』はなんとなくわかる。


『聖夜菌がついた、聖夜菌がつくと死ぬぞ』


『気持ち悪い! 聖夜菌がついた病気になって手が腐るーーえんがちょだ』


こういう虐めにあった事がある。


これの事か?


「そうだったのですか……教えて頂き有難うございました。あっ……」


僕はふらついたふりをして王女の方に転んだ。


転んだ俺を騎士の様な男が起こしてきた。


「おいおい大丈夫か? まぁショックだろうからこれは咎めない。さっさといけ」


スキル:ばい菌


体が触れたから、頭の中でスキルを声にしないで唱えた。


なんとなく感覚でスキルが発動した気がした。


「わかりました、失礼します」


このスキルが思ったような物なら、きっとあの騎士は大変な事になる。


まだ、わからないが……


彼奴ら側の人間なら、どうなっても構わないからな。



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