第032話
「お、おい、暁斗。知り合いか?」
「ああ……最近知り合った、ご近所さんの子だ」
「ちょっと海奏……この人ひょっとして例の素人」
「あああ暁斗さん! 偶然ですね! こんなところで会うなんて」
「ほんとうだね、海奏ちゃん。学校の帰り?」
いまこのツインテの子、素人なんとかって言いそうだったよね?
「そ、そうなんです。新しいドーナツ屋さんがオープンしたので、友達と一緒に」
「こんにちはー! はじめまして! ウチ、
そのツインテールの女子が、そう言って挨拶をしてきた。
俺も陸も少々圧倒される。
知奈美ちゃんと名乗った子は、海奏ちゃんと同じ紺色のブレザー制服を着ている。
同じ学校の友だちだろう。
愛らしい丸顔にサラサラの黒髪ツインテ、目がくりっと大きくて睫毛がクリンと反り返っている。
そして……黒目がでかい。
カラコンを入れてるんだな。
小ぶりな鼻筋に、ちょっと厚めの唇。
小柄だけど凹凸のある体型で、短いスカートの下にムチッと伸びる足は健康的だ。
手には白いマニキュアをしている。
学校で怒られないのかな……知奈美ちゃんは海奏ちゃんとはまたタイプが随分違う、いまどきのギャル系女子だ。
「えーっと……こっちが暁斗さんですよね? 海奏からそれはもう、いろいろ聞いてます」
「こんにちは。素人童貞の暁斗だよ」
「うわー、自分から言ってるし!」
自虐的に言ってみたが、超ハズい。
そんな俺の前で、知奈美ちゃんが体を揺らして笑っている。
その姿がまた……アイドル並みに可愛らしい。
「おい暁斗、なんでこんな美少女高校生たちと知り合いなんだよ」
「海奏ちゃんとは……まあ話せば長くなるけど」
「そうだ! 二人とも時間ある? これから一緒にごはんでもどう? ごちそうするからさ」
陸が美少女高校生二人にそう声をかけて誘った。
陸は合コンをアレンジするぐらいのヤツなので、こんな美少女を前にしたらそりゃあ素通りはできないだろう。
「うん、二人の分はこのお兄さんが払ってくれるみたいだから。海奏ちゃんと……知奈美ちゃんだっけ? 一緒にどうかな?」
「おい暁斗、そこはオレと暁斗の二人で割り勘だろ?」
「海奏ちゃん、またの機会にした方がいいかもしれないよ」
「わかった! わかったから! 二人の分はオレが出すから! 皆でごはん行こうよ」
すると海奏ちゃんと知奈美ちゃんは「どうしよっか?」と相談を始めた。
「でも……暁斗さん、いいんですか? 今日はお二人で会われる予定だったんじゃ」
「それはいいよ。陸とはまたいつでも会えるし。それより海奏ちゃんと知奈美ちゃんはどうかな?」
「はい、じゃあ暁斗さんたちがいいのであれば……ご一緒したいです」
「決まりだね! よし、じゃあいこうか。二人は何が食べたい?」
陸が急に明るい声で仕切りだした。
でもさすがに制服の高校生の女の子を連れて居酒屋というわけにも行かない。
ファミレスにしようかという案も出たが、知奈美ちゃんが「しゃぶしゃぶ食べ放題のお店が近くにあるんですけど、どうですか?」と提案してきた。
なるほど、高校生と一緒に行くのであればちょうどいいかもしれない。
しゃぶしゃぶっていうのも久しぶりだし、俺も結構腹が減っている。
結局知奈美ちゃんの提案が採用され、俺たちはしゃぶしゃぶ食べ放題の店に向かって歩いていった。
「ウチ、暁斗さんに会ってみたかったんです! 暁斗さん、もうウチらのクラスで超有名人なんですよ」
「知奈美、もーやめてよ」
海奏ちゃんが焦っていた。
「そうなの? そんなんで有名になりたくないんだけどなぁ」
俺は苦笑する。
「暁斗、どういうことだ? なんで暁斗が高校生のクラスで話題になってんの?」
「まあ店に着いたら説明するわ」
美少女高校生二人の案内で、俺たちはしゃぶしゃぶ食べ放題の店に着いた。
平日なので比較的空いていて、待ち時間もなくテーブルに案内された。
俺と陸はとりあえずビールで、女子高生二人はドリンクバーの飲み物で乾杯した。
「さあ暁斗、説明してくれ。なんでこんな美少女2人組と、知り合いになれたんだよ?」
「知奈美ちゃんは、今日が初対面だけどな。まあざっくりと説明するとだな……」
これ、何回目の説明になるんだ?
俺は海奏ちゃんとの電車の中での出来事と、スーパーナツダイでの迎合の話をした。
「うわー、そんなことあるんだな。暁斗も電車の中で……勇気あるな。俺だったら見て見ぬふりをしたかもしれない」
「そうか? 俺はもう反射的に痴漢の手を掴んでいたぞ」
「そうなんです。だから私、本当に嬉しかったんですよ。助けてもらったの、初めてだったんで」
「昔っから、海奏は痴漢によくあってたよね」
「ところで暁斗。さっきの『素人童貞』って……何の話だ?」
「あーもう……その話もしないといけないのか……」
俺はちょっとうんざりしたが……痴漢に間違えられた時に、やじ馬の一人からそう罵声を浴びせられたこと。
それと電車の中で海奏ちゃんからそれを訊かれて、周りの客に笑われてしまったことを話した。
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