【カクヨムコン9短編】恋人が私に確認を求めてくる
肥前ロンズ
第1話 大学生になりました。
「あ、あのね! ちょっと、センシティブな相談があるの!」
「察した」
私がそう言うと、中学時代から付き合いのあるハルコちゃんは、まるでお酒を飲むかのようにコーヒーを飲んだ。
大学生になったハルコちゃんは、校則をカッチリ守っていた高校生の時とは打って変わって、髪を茶色に染めて、キラキラした化粧をしていた。とっても大人っぽい。
「何? タイヨウ君との情事? あたし物書きとして興味はあるけど、友だちとしては聞きたくないよ?」
「ぐ、具体的なことは伏せますんで! なにとぞ!」
テーブルの上に手をついて、頭を下げる。土下座ならぬテーブル下座。
はあ、とハルコちゃんはため息をついた。
「カクヨムで注意されないレベルならいいよ」
「わ、わかった……?」
ちょっと例えがよくわからなかったけれど、私は覚悟を決めて深呼吸する。
「あ、あのね……。
タイヨウくんの、か、確認がすごくて……」
言葉に出すと記憶がアレコレ思い出されて、恥ずかしくて思わずどもってしまった。
「あ、お会計ペイペイでいい? 送金しとくから」
「今のでダメなの!?」
やめて、ハルコちゃん! スマホを取り出して操作しないで!
必死に引き留めようとする私に、「冗談だって」とハルコちゃんは真顔で笑い声を立てた。
「で、確認って、何? 言葉責め?」
「ことば……ぜめでは……ない……と、思う……」
多分。
されている方はそんな気分だけれども。
大学生になって、タイヨウ君は一人暮らしを始めるようになった。
大学も学科も違うし、バイトとかサークルの付き合いもあるから、会えるのは週に一度ぐらい。それでも意地でも会う日を決めて、その時にこう……ごにょごにょするわけなんだけど。
『抱きしめてもいいですか』『キスしてもいいですか』と、ハードルが低いものから、『ここに触っていいですか』『ここにキスしていいですか』と……だんだん……手と声が下に……。
「ストップ」ハルコちゃんが手を挙げた。
「それ以上はタイヨウ君に申し訳ないから聞かない」
「あ、う、うん! 私も、話すのもう限界!」
身体が熱くなって、フリースセーターのネックが肌をチクチクさす。
なんで私ホットコーヒーなんて頼んだんだろう。アイスティー飲みたい。
「いいじゃん、同意がとれて。そういうのは、ちゃんと確認とった方がいいよ」
「そ、そうなんだけど!」
「なに? 言葉にするとムードがなくなる?」
「逆なの! いっぱいいっぱいになっちゃうの!」
声が大きい、とハルコちゃんに注意されて、慌てて私は両手で口を塞ぐ。
恥ずかしさを吹き飛ばすような勢いがないと話せられないのに、難しい。
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