先生!多分、隣の子が犯人です。
アベ ヒサノジョウ
2年3組の中嶋さんが行方不明になりました①
私の隣の席に座る細野 凛くんは殺人者だ。もちろん、根拠がある。
「凛くん。おはよう」
「……おはよ」
「朝から、眠そうだね」
「ん」
凛くんは眠たそうな声で、机に伏せたまま適当に相槌をうつ。天板に寄せた頬が、細い顎の上で歪んで見えている。
「凛くん。昨日は何時に寝たの?」
「…2時くらい」
「遅いね。…そんな時間まで、何してたの?」
「んー……ちょっとね」
『殺人者ポイント①寝るのが遅い』
昨日の夜も、人を殺して、埋めたり、証拠を隠して遅くまで起きていたに違いない。だから朝からこんなにも眠そうにしているのだ。それに、今の発言も実に怪しい。
———きっと、人には言えない事情があるのだ。
授業中もそうだ。
「凛くん。読んでいる教科書が違うよ」
私はボソリと、凛くんに声をかける。日本史の担当は鬼塚 藤四郎と、いかにも名前に負けず劣らずで『熱のある指導』と称される暴力行為スレスレの指導で有名な教師だ。そして鬼塚先生も他の教師同様に、凛くんを目の敵にしている。もちろん、凛くんの態度が問題なのだが。
「凛くん…日本史。違う違う、日本史」
私が小声で囁き続ける。凛くんは眠そうな目を擦りながら、何度も机から教科書を出したり、しまったりして、日本史の教科書を探している。ちなみに、その日本史の教科書は、彼が机の横にかけているリュックの中に入っているのが見える。
「ほら、リュックの中。その包丁が挟まっている教科書だよ」
「ああ、日本史…」
凛くんはリュックから抜き出すと、教科書に挟まった包丁を適当に机の中に押し込んで教科書を机の上に置く。
「鬼塚がこっちに来たら起こして…」
そう言って、凛くんはまた机に突っ伏すのだ。
「もぉ…私まで怒られるんですけど」
しかし、私の声はもう聞こえていないようだった。これもまた、怪しいポイントだ。
あの鬼塚先生の授業で教科書も開かずに寝られるなんて、あり得ない話だ。
『殺人者ポイント②度胸があること』
まだまだある。怪しいぞ、凛くん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます