裏ボス屠った神官です。孤児たちとのんびりスローライフをたのしもうと思います

くま猫

第1話『裏ボス倒した』

 死は平等だ。


 善人にも悪人にも等しく訪れる。

 死は絶対であり『二度目』はない。

 だから誰しもが日々を必死に生きるのだと思う。

 


 ところで話は変わるが、俺は転生者だ。



 転生先は『ウィズ・アードリ』というゲームとよく似た世界だった。

 ちょっとだけ生前に遊んでいたウィズについて語ろう。


 ウィズは自由度の高いオープンワールドRPGだ。

 生前は仕事帰りに夢中になって何周も遊んだものだ。


 1周目は善良な勇者として、2周目は悪人プレイ、3周目は自由きままに。

 周回するたびに新たな気づきがあるスルメのようなゲームだった。


 やりこみ要素は豊富にあるがシステム自体ははとても一般的なものだ。

 職業、種族、素性を選び、キャラクリ後にゲームが始まる。

 そんなよくあるオープンワールドRPG。


 容姿のキャラクリについてはやれることが多すぎて逆に困ったほどだ。

 とはいえ妥協もしたくなかったので、

 ヨーツベのテンプレ顔に微修正を加えた物を自分のアバターとして使っていた。


「あのとき真面目にキャラクリしててよかった!」


 今の俺は金髪青目のなかなかのイケメンだ。

 真面目にキャラクリして良かったなと思っている。


 まずは自己紹介。言葉で説明するよりもこっちの方が早そうだ。

 「オープン・ステータスウィンドウ」。



 名前:アリョーシャ

 種族:人族

 職業:神官

 LV:35

 筋力:50

 体力:70

 知恵:3 

 信仰:35

 速さ:10

 幸運:2

 特殊:鑑定、棍術、堅牢



 耐久力と殴りに特化した殴り神官。


「とりゃ」


 ドドンがドン。

 太鼓の要領でメイスを叩きつけているのが邪神ジャヴァウォック、

 の頭。


 ウィズの世界で裏ボスだった奴だ。

 本来は恐ろしく強い敵なのだ。


 そりゃそうだ。

 だってクリア後のやりこみ要素だ。

 ラスボスより遥かに強くて当然。

 そんな相手を俺はどう倒したのか……。


「壁抜けバグ」


 ズリズリと頬を壁に擦りつけながら高速で反復屈伸しながら

 壁を行き来すると扉をあけずに壁をすり抜けられるというバグ技がある。


 この方法で裏ボス部屋に入ると何故か攻撃してもまったく

 反応しない巨大カカシ状態になるのだ。


 二次創作フェンアートやSNSのネタとして愛されすぎて、

 開発元の粋なはからいで修正されなかったバグでもある。


「ふぅ。討伐完了っと」


 ==========

 特技:壁破壊

 解説:あらゆる壁を破壊できる

 ==========


 この世界は無数に迷宮が存在する世界だ。

 迷宮は文字通り迷路みたいなもんだ。

 そんな中で壁を破壊できるというのはとんでもないアドバンテージだ。


「俺、転生したのにギフトもらえなかったからなぁ……」


 稀によくあることではあるが、

 俺は気づいたらこの世界に転生したタイプの人間だ。


 いわゆる『転生ギフト』という物を授かっていない。

 神様部屋とかいうのも経由せずに直で放り込まれた。

 少々不親切ではないか?


 そう思いもしたが、まあ俺は生前もパッとしない人間だったので、

 この程度の雑な扱いも甘んじて受けるべきだろうと考え直した。

 それに、ギフトなんてなくたって『壁破壊』があれば問題なし!


「さて。真の冒険のはじまりだ!」

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