第20話 霧ヶ峰詩織、本気です!

 帰宅しようと校門を出ようとした時に生徒会長に止められた。

赤い目をした彼女に咎められても周りの生徒の目もあるので場所を変えて話をすることにした。


 場所を変えると言っても普段寄り道もしないので

携帯で検索してなるべく学生の行かなそうな喫茶店に決めた。

目的の喫茶店は本格コーヒーが売りのお店らしく店内は良い香りが漂い、低めに流れているクラシックのBGMも気分を落ち着かせる。


二人は奥の目立たない席に向かい合って座った。

サッとメニューに目を通し

「僕はブレンドコーヒーを…?」

「私も同じでお願いします」

「……。」

「……今日、生徒会室に行かなかったのは…自分の自制心の足りなさを自覚したからです」

「…?」

「彼女がいるのにも拘らず貴女に…その…キスを

してしまったのは自制心が欠如だと思ったので…」

「私のファーストキスをそんな風に考えるんだ…」

「いやそうじゃないっていうか…なんて言ったらいいのかな…やっぱり浮気は良くないっていうか…」

「でも、私はうれしかった!君とファーストキス出来て本当にうれしかったの…ホントよ」

「は、はあ…でも…」

「ヒカリ君、私はねっ、彼女と別れてとか、私と付き合ってとか言ってないの…ただねっ、お昼休みに一緒お弁当を食べて普通に話しをするだけで…それだけでもいいの、お願い解って…」

「僕はただ彼女に後ろめたい気持ちになりたくないんです」

「それは…ごめんなさい」

「いや、僕の意志が弱かったからです」

「いえ、私が悪かったの…ううう…」

「そんな泣かないで下さいよ」

「ブレンドコーヒー2つお持ちしました」

「わ〜っ、いい香り〜♪私、コーヒー好きなのよ」

「えっ!?」


 結局、話し合いの末昼休みは今まで通りに一緒にお弁当を食べることになった。

ヒカリとしては今後は自分さえしっかりしていれば大丈夫と考えていた。

一方詩織としては唯一の接点である昼休みの逢瀬が(詩織はそう思っている)継続することに安堵した

(まずは続けることが大事よね…)

「明日からもよろしくね」

「いや、先輩明日から中間テストだから午前だけですよ」

「そ〜だったテストのことすっかり忘れてた。お互いにテスト頑張ろうね」

そう言って二人は別れた。


先輩と居るとどうも調子が狂うんだよなあとその程度で深く考えていないヒカリであった。

とにかくテストを無事に終えなんの憂いもなくデート出来るようにの頑張ろうと改めて思い家に帰ってもう一度、テスト勉強の見直しをした。


詩織はヒカリと喫茶店で別れたあと公園のベンチで1人なって安堵していた。

待ち伏せしてまで会いに行くなど積極的な行動を初めてしてしまい内心とても緊張していた。

(ヒカリに変に思われなかったかしら…)

あの日…、偶発的なファーストキスから彼への気持ちが止まらない…止められなくなってしまった。

会えなくなってしまうなんて恐怖でしかない。

とにかく私に出来る事を頑張らなきゃね。

私の初恋…まだまだ諦めないんだからねっ。

ギュッと両手を握りしめる詩織であった。

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