乙女ゲームで遊びたかった自称女神サマのお話
影夏
卒業パーティー 1
華やかな卒業パーティーの会場に、婚約者にエスコートされて入場する。
本来であれば、一人で会場入りし、待ち構えていたこの人から、その隣に寄り添う《ヒロイン》を虐めたかどで断罪をされるはずでしたのに。
わたくしが前世と思われる記憶を得たのは、この人が《ヒロイン》への恋に落ちた、その瞬間。
政略に端を発した縁とはいえ、それまでは同じ想いを交すことができていると信じておりましたので、この人にこんな一面があったものかと……正直にいえばショックでしたわ。
けれど、この人はシナリオ上の《悪役令嬢の婚約者》とは違い、わたくしを裏切ることはありませんでしたから。
その眼差しに愛おしさをのせて彼女を見つめることはあっても、適切な距離を忘れることはなく、形に残るものを贈るようなこともなく――
ただ、その瞳にわたくしを映さなくなっただけ。
だから、わたくしも。
嫉妬する思いはあれど、それに狂うことはなく、失った想いへの悲嘆にくれはしても、その感情に溺れて矜持を忘れた行動を取ることもなく。
その結果が、こうしてこの人にエスコートしていただけている、今。
ゲームの強制力がいつまで続くのかはわかりませんけれど、もしかしたら、一生わたくしを愛することがないのかもしれないこの人と、結婚することが、今日、決まる――。
――いっそ、この人が恋に溺れて国を裏切る愚か者であってくれたのなら。
その報復として、わたくしは悪逆の限りを尽くし、愛するあなたから断罪という終わりを賜ることができたのかしら、なんて。
そんなことを考えるわたくしは悪い女かしらね?
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